カギ針が落ちそうだよ

遠い国で

指がもう少し長かったらなあ

爪がもう少し長かったらなあ

そうしたらもっと器用にニットの帽子を縫えるのに

遠いどこかで誰かが器用に帽子を編んでる。

鳥のさえずりと草木が歌う音あなたはハンモックに揺られながらレモンの入った紅茶を飲みながら

ウォールナットのテーブルに毛糸を敷き詰めて

時々鼻歌を歌いながら庭に小さく咲いたピンクの花に目をやる。

小鳥が肩にとまってあなたの耳元で春の風を思い出させ
あなたは一緒になって鼻歌を歌う。

遠くからじっと見つめる母猫はあなたが3時に食べるクッキーが狙い。

家のチャイムが鳴ると、子供達が家に入ってきた。小さな子供達は庭で母猫にちょっかいと子猫と戯れると、お祖母様の作ったふわふわで心地のいいスカイグレーとロイヤルブルーのニットに大喜び。

母猫はニットと遊びたそうだっけど、あなたがキッチンに入ると大きく目を見開いて後をついて行ったね。

小鳥は気づいたらいなくなって、今度また娘と息子にプレゼントする予定のニットの帽子は縫いかけのまま。

カギ針が下に落っこちそうだよ。
氷も溶けてきて薄くなったレモンティーもそろそろ替えたら?

あなたは焼いたクッキーを熱々の鉄板に乗っけて分厚い鍋つかみで持ってくると、子供と猫の親子に振舞った。

時々その食べかすを食べに小鳥もやってきた。

あなたの周りはいつも賑やかで素敵だね。


いいなあ。

カギ針が落ちそうだよ

カギ針が落ちそうだよ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-09-13

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