高校の生活

鉄橋

 登校して間もなく友人に話しかけられた。僕は霞立つ眠気を感じながら歓談に励み、後の授業で惰眠を貪ることになる。鬱陶しいとは思わない。健やかな学生生活には必要なことだ。
 鬱で短期記憶の衰弱した脳髄には現代文の課題は入らず、提出期限の明日に仕事を繰り越した。
 四時限目から昼休みにかけて少ない全ての友人にリスカがバレた。三者三様の反応。僕は笑いながら鬱のことを話した。深くは追求されなかったが、知らないことを教えるというのは気分のいいもので、つい要らないことまで口走った気がする。
 ラインには「じゃあどうしようもないね!」「そうですね!!」とだけ寂しい文字が動くことなく鎮座ましましていた。深く考えないように閉じて昼食にもどる。親が疲れていたので今日は購買に並んだのだ。
 修学旅行の班決めでは一悶着あったようだが、僕だけが悪い訳でもないと思う。そも悪い訳ではないのだと。感情論の押し付けや自己正当化に忙しい人の極論に揉まれた僕の感情論もまた虚しく床に墜落し結局はじゃんけんになった。誰の願いも叶わない結果になった。恐らく考えうる限りもっとも悲惨かつ深刻な結果になったが、公正なじゃんけんに僕は異議を申し立てるつもりはなかった。誰もそうはしなかった。我々の足元には西部劇のダンブルウィードが転がり、砂埃が舞い、沈黙と悲嘆と笑い声だけが響いていた。
「僕はこのクラスの人全員に50個は悪口を言える」
「出席番号16番」
「誰だ、、××?知らない奴の悪口をきいてもなあ」
…………
「鬱だと文字が読めないんだよね、短期記憶がやられてさ」
「へえ、面白いね」
「不謹慎なやつめ、精神病が面白いというのはわからないでもないが」
…………
「××と××冷戦してるからね、あの班じゃ話すやつがいないだろうね」
「そうなんだ」
「本当にくだらない理由だよ」
「僕はそろそろ麻雀行ってくるかな」
 それから麻雀を打ちに三組へと向かった。何種かのトランプを混ぜ牌の代わりにし、一頻り笑い合いながら打った。倍満に放銃し、不聴罰符を払い、満貫に放銃させた。知らないゲームの音楽とともに時間は流れ、神経は摩耗した。オーラスの終盤、見回りの教師が来るとかなんとかで流局になった。急いで机を元に戻して窓を閉めバレないように上の階へと上がった。それからは蜘蛛の子を散らしたようにそれぞれ足早に帰った。
 バス停での短い間友人の一人と先のスリリングな体験について話に華を咲かせた。久しぶりに遅く帰るためにバスは普段より本数の増えあまり待つことなく帰れた。
「気をつけて」
「じゃあ!」
僕は今日あったことを寄木細工のような思考で文章化しながら家へと歩を進め、秋の虫の音にも気付かずにいた。

高校の生活

高校の生活

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-09-10

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