すき間

春乃

 彼女はどんなところにも溶け込むことができる女だった。
 
 彼女はあらゆる集団に溶け込むことができた。
彼女は完全に、一部の隙もなく、そのグループに混ざった。
突然やってきて一員に加わった彼女のことを、誰も不思議に思わなかった。
彼女は集団の欠けを埋める天才だった。
彼女は初めからそうであったかのようにふるまい、調和した。
彼女と彼女以外の部分が見極められなくなるほどに。

 彼女は自身の能力をよく知っていたし、それをよく使いこなすことができた。

 彼女はある日、自分一人がちょうどおさまりそうなすき間を見つけた。
とても魅力的なすき間だった。
彼女はそこへそっと身をすべりこませた。一部の隙もなくぴったりとおさまるように。
素敵なすき間だった。
すき間は過不足なく、ちょうどよく彼女を包み込んだ。
彼女はほうっと息をつき、そのままゆっくりと目を閉じた。

 そうして彼女は、そのすき間と完全に同化して、それから二度と帰ってこなかった。

すき間

すき間

  • 小説
  • 掌編
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-09-10

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