山茶花咲くかレールは冷たく鉄音と 列車の音は追い風ならず


山茶花先見ず 気がつけばさくらとなり

山茶花唄えど さてどの花

君の名は とは奥ゆかしく宝石めいて

しかれど訊ねる人おらず

ふらふら深夜の踏切り歩けば
砂利の音のみ頭に響き

気づく前に三列横のレールを
貨車が荷物抱えて音鳴らす

そのうち寒さ身にしみいり
煙草取り出し火をつける

煙り見ながら吐く息と

何かがごっちゃになりながら

室内居て写真見れど

ただ写る花草には匂いなく 興味なく

食指が伸びるは撮る人の主観にて

私には綺麗な写真は向いてなく

綺麗な画にも向いてない

価値があっても意味はなく

食指が伸びるはそれ具現化した人の秘そかな室内
悲しからず嬉しからず

翌日起きれば烏の声

さてまた燕や鶯や

水音聞くために池に入り
蛙を逃がしてしまう

積み重ねた罪や傷に

接吻することなく

切腹することなく

ただ爪は周期的に切っている

君の名は 訊ねられても 花は明かさず

花は花とて咲き散り蕾む

情緒あふれ それ以前に

名呼ばれなければ獣も哀しがる

名呼ばれて存在出来て

訊ねられて 初めて答えられる

君の名は山茶花で

私命消ゆるまで覚えていようと思います

だから山茶花 無事に生とげ

安心して子孫なる種残されよ


なので山茶花 お願いだ

私の名前を訊ねておくれ


名呼ばれなければ

私とて獣の哀しみと

相まみれ過ぎるほど

山茶花咲くかレールは冷たく鉄音と 列車の音は追い風ならず

山茶花咲くかレールは冷たく鉄音と 列車の音は追い風ならず

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-09-06

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