タイトル募集

森下巻々

※成人向け・強い性的表現があります。

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(近未来(?)のおはなし)
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 オレは、会見会場に入る前の控え室で、彼女を初めて目にしたのだった。
「木野口さん、聞いてます?」
「うん。聞いてるよう」
「コンパニオンの女の子にばかり気をとられないでくださいよ」
「そうじゃないって……」
 オレのマネージャー役をしてくれている真面目男子・美川が、疑い深そうな目で見詰めてくる。確かに、そのときオレは、或るコンパニオンのことが気になってしようがなくなっていた。
 競技用自動運転自動車競走、いわゆる「キョーソー」は、六、七年前から始まったプロ・スポーツである。街中を走る自動車は、いまや自動運転のものばかりになった時代であるが、カー・レースは無くならなかった。この「キョーソー」などは、むしろ個々のドライバーの新たな能力が反映されるような自動車を使用、ルールもそうなっている。ドライバーは運転席で、ダンス・ミュージックを操るDJが使うような機器を操作し、自動車の動きを制禦する。
 この日は「キョーソー」のグランプリ決勝戦に向けて、マスコミ各社に声をかけての会見が行われたのだった。オレを含め、数人のドライバー全員が臨席した。
 この会見は前例の無い豪華なものになり、大会の主催社と契約した美貌のコンパニオンたちも来ていた。
 大会はいくつかあるが、このグランプリは最も栄誉あるものである。まだ始まって数回だが、名実ともに最高のものに育てようと、関係者もスポンサーも考えているし、また、レースのファンたちもそう捉えている。今回は、特に主催社も力が入っているようだ。
 そう、この会見は、この競技に多くの人たちに興味をもってもらおうとする者にとって、とても大事なものだ。だから、真面目な美川が苛立つのも分からなくはなかった。
 しかし、そのコンパニオンの女性は、会見前のオレが気になってしかたがないくらい、魅力的だったのも確かなのである。
 美川は、
「木野口さん、あんなキレイな人、もうタイトルもってるに違いありませんよ。それより、会見で話したいこと、きちんと忘れないようにしてください」
「分かってるよ。会見場に入ったら、気分も変わるだろうよ」
   *
 会見は無事に終了した。オレも変なこと、余計なことを言わずにうまくコメントできたと思う。
 会見の後、懇親会のようなものがあったが、オレは直ぐに外に出てしまった。企業のおエライサンとなんて、何話せばいいんだ?
 オレは、バーに行って、カウンター席で一人、酒を呑んでいた。
 しばらくすると(しばらくだったと思う)、女性が二人、仲良さそうに横の席にやってきた。
 オレは、ひと目で分かった。会見にいたコンパニオンだ。彼女たちも、こちらに直ぐに気づいたようで、直ぐ隣に坐った女性が、
「こんばんは」
 そして気になる女性の方も会釈してきたが、それ以上は話してこない。場が緊張したような空気で満たされてしまったので、オレから話しかけた。
「木野口です。分かりますか。キミたち、会見でコンパニオン代表として来ていたでしょう?」
「は、はい」
「今まで、あまり見かけた覚えがないのだけれど……」
「ええ、わたしたちはまだ、「キョーソー」のコンパニオンとしては間もないので。ねッ?」
「そうなんです」
 オレの気になっている方の女性の声が、とても可愛らしかった。
 それから、普段の生活についての質問をオレは受けたりした。長い時間、二人と呑んだ。
 女性の名前は、愛梨だった。もう一人の女性は、恵。
 愛梨がトイレに立ったとき、恵が、
「わたしたち、両方ともタイトル募集中なんです。良かったら連絡ください」
 オレのケータイが鳴り、或る会話グループへの入会が許されたという文章が表示された。恵と愛梨、それから数人の女性で組まれたグループのようだった。
「いや、オレは今期、誇れるようなタイトルはとってないんだ。今度のグランプリ決勝に出場できるのは棚から牡丹餅みたいな気分でさあ」
「だから、グランプリのタイトルとるよう頑張ってください。そしたら……」
 これは、そしたら抱かせてあげる、という意味だ。大会を盛り上げるコンパニオンたちの中にはドライバーと深い仲になる者もいた。ドライバーが何かしらタイトルをもっていた場合、「パートナー」となった女性もまた、そのタイトルを誇る慣習が、業界の裏側でいつの間にかできている。コンパニオンは、ドライバーの所属するチームとは関係ない。大会主催社と契約している女性たちだから、チーム内のルールには縛られない。
 表立っては語られないが、何故か、タイトルをもった女性が芸能の世界で成功していくという現象も起きていた。
 オレもコンパニオンから誘われるようになったか、そう誇らしくも思ったが、オレが抱きたいと強く思うのは愛梨の方だ。彼女も本当に「タイトル募集中」なのか確かめたい。
 数日後、オレはケータイの会話アプリから辿って、愛梨にだけメッセージを送った。恵の行動を不思議には思いながらも、そうせずにはいられなかった。恵は何故、オレと連絡をとるのに、このアプリを選んだのかということが不思議だった。こうやって、愛梨の方にオレがアプローチする可能性もあるのだから。
   *
 グランプリの当日になった。
 会場にはコンパニオンたちも立っていて、当然、愛梨と恵の姿があった。二人も同じコスチューム。レオタードのような肌に密着した衣裳であるが、下半身はスカートになっている。遠目にしか愛梨のその姿は見れなかったが、オレは胸が快かった。
 数日前、愛梨からケータイのアプリに返事を貰っていた。わたしは「タイトル募集中」です、と。あなたにタイトルを取ってほしい、そして抱き合いたいという内容だった。
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 レースの結果は、なんと、オレの優勝だった。
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 マス・メディアでの賑わいも落ち着いた頃、オレは、愛梨と二人だけで呑んだ。個室のある飲食店だった。
 やっと彼女を抱ける、そんな時間が近づいていたのに、いつの間にか、オレは眠ってしまっていたようだ。
 目が覚めたときには、オレはベッドで大の字になっていた。腕や脚や腰や首までにも、ベルト状のものが密着している。痛くはないが、身動きが封じられている。
「木野口さん! やっぱり、愛梨を選んだのね」
 青色のランジェリー姿で立っていたのは、恵である。
「そ、それは……」
「だから、わたしがタイトル貰うには、こうするしかなかったの」
「で、でも……」
「あなたに、愛梨にも声かけやすくしたのはね、あなたから選ばれたかったからよ。ただ、こちらからのアプローチに応えてもらうだけじゃ、もの足りなかった。選んでほしかった」
「それなら……」
「愛梨を選ばれたら、許せないッて気持ちになってきたの。何がなんでもタイトルは、わたしが貰うッて。愛梨はね、お金持ちの娘なの。あの店も愛梨の所の店。まあ、あの子は、わたしのいいなりなんだけどね」
「ううう……」
「さあ、お愉しみはこれからよ」
   *
「心配しなくてもいいんだから。手足縛ってるのは最新の素材だから躯にやさしい……。気持ちよかったら、いくらでも躯を捻ってみせてください」
 恵は切れ長の目をしている。その間のスーッとキレイな鼻、その先をツンと上に向けるようにして、手は、オレの股間を弄っている。
「ふふう」
「気持ちいいでしょ? 気持ちいいなら、気持ちいいと声に出してほしいな」
 恵の声はハスキーだが、その声が僅かに潤っているように感じるのは、気のせいか。
「嬉しい。木野口さんのここ、大きくなってきた」
 彼女は、オレのペニスの側面を指先でつまむようにして、上下に擦すってくる。ベッドに張り付けられ、一方的に始められてしまった行為なのに、躯が反応してしまう。
「乳首、責めてみようかなあ」
 片方の手で股間をもてあそばれながら、オレは乳首まで、もう一方の手に撫でられた。
 乳首で感じるなんて、信じてなかった。オナニーのとき、自分で触ったこともあったが、感じたことなんて無かったからだ。
「ああー」
「乳首、スゴく勃ってる。ははッ」
 そう言って嘲笑されるように、舐めることまでされると、オレはもう、胸がなんだか苦しいような、手先の力が抜けるような感覚で、
「く、感じる……」
 遂に言葉を発してしまった。
「気持ちいい? 気持ちいいんだ?」
 恵は、嬉しそうに言って、ペニスを擦する行為と、乳首を刺戟する行為を続けた。やがて、
「あ、ネッチャリするものが出てきた。我慢汁ね」
 彼女は、顔を下ろしたかと思うと、ズズズと、オレの股間の先から滲んだ粘液を吸い取った。
 そして、オレと唇を合わせてきた。口の中に唾液と混じったそれが、注ぎ込まれる。
「むむむ」
「さあ、呑み込みなさい。木野口さんが自分で出したものなんだから、汚くないでしょ」
 確かに汚いとは思わなかった。オレは、口中に溜まったのものを全てゴクリと呑んで、もの足りなくすら感じたのだ。
「ふふ、おりこうさんねえ。御褒美に、キスしてあげる」
 恵は、再び唇を合わせてきて、オレも思わず舌を絡めた。彼女の舌は本当に滑らかで、オレは恍惚となってしまう。もし立っていたら、腰を砕かせて尻もち突いてしまっていたのではないか。
   *
 唇を離した恵は、自身が身に着けていた青色のランジェリーを脱いだ。
 全裸になる。
 オッパイは小ぶりで、美しい乳首がついている。
 陰毛は薄いらしく、秘部が透けて見えるようである。
 恵は、ベッドに上がると、オレを跨いだ。見下ろしてくる。そして、片足を上げたかと思うと、その先をオレの口に入れようとしてきた。
「う、うう……」
「ほら、ほらあ」
 オレは、思わずいやいやと顔を左右に動かしたが、彼女はやめない。
「ううーん」
「ほら、口開けなさい!」
 オレは従ってしまった。そうしないと、顔を力強く踏みつけてくるような怖さがあって、開けてしまった。
 恵の足指は、汗の味がした。
 しかし、いざやられてみると、嫌な気はしなかった。それを見てとったのか、
「うーん。もしかして、ペロペロ舐めちゃってるう? そんなに舐めたいなら……」
 足を外し、今度はガニ股スタイルでしゃがんできた。彼女の股間が、オレの鼻と口に近づいてきた。
 ムワッとした熱気を感じた。オンナの匂いを覚えた。オレは、昂奮してしまい、今の状況を忘れて、舌を伸ばしてしまった。
 彼女が秘部を密着させてくる。オレは、無我夢中で、舐めて、そして吸った。
「ああん。ケモノの食事のようじゃない? こんなことしたら、嫌がるかと思ったけれど、喜んじゃってるみたい……。ヘンタイさんですね」
 恵は、自身の手で、秘部を広げて見せる。クリトリスを弄りもする。しょっぱい粘液が溢れてきて、オレの顔をクチャクチャにした。
「うむうむ」
「あん、ああん。気持ちいッ。イッちゃうわあ、このままじゃ……」
   *
 恵が、オレの下半身の方へと移動した。
 しばらく触れられてもいなかったのに、硬くなったままのペニスを、手で強くシゴくようにして、
「はああーん」
「いい声です、木野口さん」
 彼女は、オレに背を向けて腰の辺りで跨ぐと、腰を落としてきた。
「入れまーす。タイトル、いただきーい」
 オレの股間のものが、恵の内側に入っていく。
「はあー」
「入った……。木野口さんのここ」
 彼女の内部はとても熱く、快く、直ぐにでも腰を動かしたくなった。しかし、躯はベッドに張り付けられている。
 激しく動作するのは、恵の方だ。
 上下に躯を動かして、股間を刺戟する。
「あん、あん、あん。ヤバ」
「はあ、はあ」
「ヤバッ、ヤバ」
「はあ、はあ、で、出そう」
 オレに射精の予感は直ぐにきてしまったのだ。
「い、イく。イくう……」
「はあー、出るッ」
 恵が躯を強張らせるようにするのと、オレの股間に止められない波が寄せたのは、同時だったかも知れない。オレは、ドクンドクンという音を耳で聞いたかのようだった。
 恵が言った。
「わたし、これでグランプリのタイトル・ホルダーね。もうタイトル募集しなくていいように、木野口さん、あなた、これからも頑張るのよ!」
   (おわり)

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