夜中にローソンをさがす

実際探したよ。んで、実際は六丁目に行ったよ。

埼玉県戸田市に美女木という地名がある。

その美女木という地名は、その昔、荒れ狂う荒川の整備を行いそのために落命した者たちのために、その地域に住む巫女が人身御供によって鎮魂したことが由来となっている。

嘘です。

津原泰水さんの籠中花が好きで考えた。最後の一文がすごく素敵だと思う。





その日、夜中、私は戸田市美女木のあたりにいた。

戸田美女木三丁目にローソンがあるという。それを探していた。d払いを使うためである。d払いのマップで見てみるとローソン戸田美女木三丁目店が近くにあるらしかった。しかし、

「なくない?」

ない。どう考えてもない。

「早く帰らないと」

飼い猫のプーが腹を減らしているに違いない早く帰らなくては。ちなみに近くにファミマはあった。

でも、その日の気分はローソンだった。それにドコモのクーポンがあるから。プレミアムロールケーキのクーポンがあるから。

だから夜中にd払いで表示されるローソン戸田美女木三丁目店のあたりをぐるぐると回っていた。



ちなみに結果から先に話すことになるが、d払いで表示されるローソン戸田美女木三丁目店は場所が違う(2019/08/31現在)。私自身地図には詳しくないのでわからないけど、あれでは二丁目店になるんじゃないかと思う場所にローソンの表示がある。マップで言うところの24番の所をどれほどぐるぐるしてもあそこにローソンはない。グーグルマップで見たらローソン美女木三丁目店は全然場所が違う。



「ない、ないぞ」

でも、その時の私はローソンを欲していた。普段住んでる場所は近くにファミマとセブンがあるがローソンがない。だからローソンに入りたい病みたいな感じになっていた。あとドコモへの信頼もあった。生まれてこの方ドコモユーザーなのだ。ドコモを疑うことを知らない。更にそれ+熱帯夜の思考を奪う感じ。



だから、d払いで表示されるローソン戸田美女木三丁目店のあたりを、マップで言うところの24番の周りをぐるぐると回っていた。何度も回っていた。途中から自分でも何をやっているのかわからなくなっていたけども、とにかく回った。

「ない、ないな」

でも、自分の目が見えていないだけかもしれないし、もしかしたら私自身見ているのに見ていないだけかもしれないし。



そういう事ってある。探し物を手に持ったままそれを探すみたいな。恥ずかしいやつ。そうやって恥をかいてきた人生だった。騒ぐのは恥ずかしいことだ。無いとあきらめるのも恥ずかしいことだ。そうやって失敗を重ねてきたじゃないか。ここで騒いだり諦めたり、もう道を渡ってローソン戸田美女木六丁目店を目指したりするのは、よくない。また人生の恥ずかしいことを更新してしまうじゃないか。



だからなおもその周りをぐるぐると回った。時間はすでに深夜0時。



それでもあきらめず、周りをまわりぐるぐると、そうしてそれが100周を迎えた時、

「うあ!」

突然視界が真っ白になり、気が付くと私は異世界に迷い込んでしまっていた。

「あー、100周しちゃったかあー」

これはあれだなあ。

「ちゃんモモだ」

ちゃんモモ千葉県浦安・・・、



モモちゃんねずみのくにへ、松谷みよ子、作、堀内 誠一、絵



実家にこの絵本がある。今でもある。子供の頃何度も読んだ。恐ろしい絵本だ。



で、それと同じような方法で私も異世界に迷い込んでしまった。でも、冷静になって考えてみたら名誉なことだと思う。異世界ものが氾濫する世の中だ。どうやって異世界に行くのか、大体死んだりして転生する。でもこの方法は私にとって夢みたいな方法だ。

「夢が叶ったんだな」

子供の頃あれほど恐れた絵本と同じ方法で異世界に行けたんだから。



しかし、

「でも、戻るのはどうしたらいいんだろう?」

いや何、大丈夫だろう。もしももうどうにもならない状況に陥ったとしても、その時はきっとプーが助けに来てくれるだろう。絵本と一緒だ。きっと。あえて悲観的にとらえるのではなく、多分なんとなく大丈夫と思えるようになりたい。なりたいなあ。

夜中にローソンをさがす

夜中にローソンをさがす

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-09-01

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