繋ぐ電燈
暗い部屋に薄明かりがついて、まぶたがひらいたとき、そこがどこであるかをその人間に一瞬つげた。
しかし正直、全てを忘れてしまったこの暗がりの中では、そこが小さな箱の中であることしか理解できなかった。ほかの事が理解できていたとしても、きっと理解しようとはしなかったからだろう。四隅からときおり軋む音がする、ワイヤーが揺れる音と、鋼が体重を支え軋むような音だ、首筋の痛みと背中の重み、自分はいったい昨日までどのくらいの重さをその体で受け止めて来ただろう。どんなことを肯定的にとらえても、すべてが自分の思考の中で理解できる範囲において、ここがどんな暗がりかをおしえている。けれど時折ともる薄明りの電燈の向うで、光る虫たちが自分を迎えるのがわかった。ここは終末世界。舞台などない。生きたいから生きているわけでもなく、死にたいから死んだわけでもない、それがもっともよく照らされる舞台。少年は装置をでた。それは安全な地下から、異変をもたらした大自然の外へと歩む第一歩だった。
繋ぐ電燈