代弁者

昨日もここらで、この街で、変な怪物をみたんだってさ、白く多きな蜘蛛の姿で、人間のように後ろ足でたってあるいている。時折人を糸でがんじがらめにして、一晩中拘束しておくそうだ、蜘蛛の形した化け物だって、それは何をするでもないが、人から生気をうばいさってしまう。

店の外でさわいでいる客がいて、店主は面倒に思った。店主はまだ、商売をする若い男子。

よそでやってくれ、商売が上手なことの腹いせか、はたまたあんたの運が悪いんであてつけにこの“ショップ”の前で騒ぐのかい。
よくいった。あんな客はこなくて正解さ。
常連はいう、アンティークショップの傍らで、商売をする若い男子。
それにコクリとうなずいて、それでも疑問はまだまだ残る、よくいったって言葉が何を形づくる?

アンティークショップで彼が狙うのは売上をふやす事じゃない。こうした“いわくつきのもの”をこっそり、常連の幸運すぎる客に譲り売り払ってしまう事だ。彼の祖父も、父もそういって、その店をつがせた。蜘蛛の形した品々に、いくつもの“いわくつき”のものがまじってる。この店は絶対につぶれない、その代わりに、蜘蛛の呪いを、ひとてにひきうけ、それを人間に宿すのが役目。

アンティークショップの名前、蜘蛛の巣とはよくいったものだ。看板に偽りなどなかった。

代弁者

代弁者

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-08-29

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted