ごみ掃除

腐った果実

 夏祭り。
 夜空には色とりどりの大輪の花。流星の如くぱらぱらと降る火の花弁。
 開花の瞬間を是非見ようと集りに集って、広間はまさに人の海。

 屋台に並ぶ人、シートで場所を取る人、大会の進行を仕切る人。
 わいわい、がやがや、賑やかしい。
 他人が他人と感性を共有し、同じ芸術を見て愛でる。

 そんな宴の中に響き渡るのは、司会を務める役員の機械的なアナウンス。

「恐れ入りますが、ここで一旦”ごみの分別”を行いたく思います」

 海辺の裾から一粒の種が、ひゅるるっと鳴いて駆け上がる。

 破裂した種から飛び出てきたのは。
 大きな大きな、人の”手”だった。

 花が開くように五本の指を、ぱあっと広げてご挨拶。
 口を開けてぽかんとしている観客の海に、指先はぬぬうと突っ込まれ──

 近くの人を適当につまんで、海原へほいっと投げやった。

 ひゅるる、ひゅるると種が飛ぶ。
 夜空に開くは巨大な人の手。あちらに一輪、こちらに一輪。
 わあっと散らばる小さな人ごみを、両掌でかき集める。

 植物の種をそうするように。
 消しゴムのカスをそうするように。

 そうして集めた人々を選り分ける。
 こいつはあっち。この子はそっち。
 ペットボトルをラベルと蓋と本体と、それぞれ分別するように。

 一人つまみ上げては、ほいっと放り。
 指先でもちゃもちゃ人を退かしては、またつまみ上げてほいっと放る。

 太い指先が小さな頭を潰そうと、鋭い爪先が小さな胴体を削ろうと。
 見落としがあっては困るので、ちまちま、こつこつ、選り分ける。

 そのうち喧噪もなくなって、海原の水飛沫も収まってきて。
 分別がすっかり終わる頃には、人ごみの山はしいんと静まり返っていた。

「これで、”人ごみの分別”を終わります。ご協力、ありがとうございました」

 機械的なアナウンスが分別の終了を告げた、その後は。
 また何事もなく花火が上がり、すっかり静かになった地上とは対照的に、夜空は更に華やかさと賑やかさを増した。

ごみ掃除

ごみ掃除

夏祭り。 夜空には色とりどりの大輪の花。流星の如くぱらぱらと降る火の花弁。 開花の瞬間を是非見ようと集りに集って、広間はまさに人の海。 屋台に並ぶ人、シートで場所を取る人、大会の進行を仕切る人。 わいわい、がやがや、賑やかしい。 他人が他人と感性を共有し、同じ芸術を見て愛でる。 そんな宴の中に響き渡るのは、司会を務める役員の機械的なアナウンス。 「恐れ入りますが、ここで一旦”ごみの分別”を行いたく思います」 海辺の裾から一粒の種が、ひゅるるっと鳴いて駆け上がる。 破裂した種から飛び出てきたのは。 大きな大きな、人の”手”だった。 ──────────────────────・ 一発ネタ的なやつ。

  • 小説
  • 掌編
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-08-27

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