アールグレイの定点

アールグレイの定点

    
    


      





何月のことだったのだろう。躓くようにして、ひとのことを、この世界のことを憶えるようになったのは。



凝視してみるアールグレイの色。半分だけの透明の向こうがいい。見え過ぎてしまうことは、傷つけることかもしれなかったから。

ひとを、定点で観測している。俯瞰する。近づき過ぎることは、互いを消してしまうことかもしれなかったから。



世界と並行に延びゆく線。延長にあるもの。知っていること。憶えているもの。懐かしいもの。



打ちひしがれたように涙を溜めたひと。言葉が心変わりしていく場所。彼や彼女のモニュメント。

僕の定点が少し移動していく。

世界との並行。

感じている、僕の方が世界へにじり寄る線を描いていることを。



多くを過ぎていく。

今度は何月のことだろう、僕が思い出そうとするのは。


      

アールグレイの定点

作品集1 http://slib.net/a/1845/
作者ツイッター https://twitter.com/2_vich

アールグレイの定点

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-08-27

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