アールグレイの定点
何月のことだったのだろう。躓くようにして、ひとのことを、この世界のことを憶えるようになったのは。
凝視してみるアールグレイの色。半分だけの透明の向こうがいい。見え過ぎてしまうことは、傷つけることかもしれなかったから。
ひとを、定点で観測している。俯瞰する。近づき過ぎることは、互いを消してしまうことかもしれなかったから。
世界と並行に延びゆく線。延長にあるもの。知っていること。憶えているもの。懐かしいもの。
打ちひしがれたように涙を溜めたひと。言葉が心変わりしていく場所。彼や彼女のモニュメント。
僕の定点が少し移動していく。
世界との並行。
感じている、僕の方が世界へにじり寄る線を描いていることを。
多くを過ぎていく。
今度は何月のことだろう、僕が思い出そうとするのは。
アールグレイの定点
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