テロ対策は闇が深い！Julius

この話は『テロ対策は闇が深い！Ida』の続きです！（１話は『テロ対策は闇が深い！Able』）

※この話は『小説家になろう』にも載せます
※この話は『小説家になろう』では第二章にあたります

Julius

それから一時間後
東京本部、本部長室……

「ゾンビ愛護団体総本部の下調べは先程完了しました」

宇賀はそう言うと本部長である仲野に資料の入っている茶封筒を渡した。すると壁に寄りかかっている三ツ木がこう言った

「これで準備は完了だな。いつ実行する？」

仲野はそう聞かれると、部屋のすみにいる対策官にこう聞いた

「園部、そっちの用意はどうだ？」

「すでに用意は出来ています。が、作戦開始前に行わなくてはいけないことがあるので、少し時間を要するかと……」

仲野の質問に園部はそう返した。するとそれに続くように藍卯が「対策部はいつでもいけるぞ」と言った

「そうか。だが、今日明日にやるのも突然過ぎるから、一週間後に行うか。みんな問題はないか？」

仲野は皆にそう聞いた。すると突然、宇賀が右手を上げこう言った

「作戦予定日についてですが、もう少し早い方が良いかと……」

「何故だ？」

宇賀の発言に対して藍卯はそう聞いた

「今回の下調べで監視部は愛護団体のメンバーを二人消しています。なのでその事がバレる前に行う方が良いかと思いまして……」

ゾンビ愛護団体総本部の下調べで、監視部は愛護団体のメンバーを二人消していた。一人は真野が殺害し、もう一人は東京本部前の道路でゾンビ化。どちらも仕方のないこととはいえ、二人を消してしまったことには変わらなかった。なのでこの事をゾンビ愛護団体に知られ、対策を取られると面倒になると宇賀は考えた

「ほぅ。二人も殺ったのか。ならさっさと始めたほうが良いんじゃねーか？」

宇賀の話を聞くと、藍卯は仲野にそう言った

「確かに藍卯の言う通りだ。下手に時間を与え、武装されるほうが被害が大きくなるからな」

藍卯に続き、三ツ木もそう言った。すると二人の意見を聞いた仲野は少し考えると、皆にこう言った

「ゾンビ愛護団体総本部強制捜査を本日の午後九時に行う。対策部と特殊部はこれで大丈夫か？」

仲野はそう言うと藍卯と園部を見た。すると園部は「えぇ。問題ありません」と言った

「藍卯はどうだ？」

仲野がそう聞くと、藍卯は「問題ない。むしろもっと早くても大丈夫だ」と答えた。二人から大丈夫という返答を得た仲野は、今度は三ツ木にこう頼んだ

「三ツ木、悪いんだが作戦開始までの監視役として、何人か送ってくれないか？」

「構わないよ。ちょうど手の空いてる人がいるから言っておこう」

三ツ木はそう言うとメモ帳を取り出し、何かを書き始めた

「じゃあこれから作戦会議をしよう。第一会議室に宇土と本間、榎本を連れてきてくれ」

仲野がそう言うと、藍卯は「分かったよ」と言い部屋から出ていった。するとそれに続くように三ツ木も「俺も話してくるから行くわ」と言い、部屋から出ていった

「本部長、監視部はどうすれば？」

宇賀は仲野にそう聞いた。すると仲野は先程宇賀か渡した茶封筒の中から資料を取り出し、こう言った

「監視部はいつもの仕事に戻っていいよ。これ以上、監視部に出来ることもないだろうしね」

「了解しました」

宇賀はそう言うと「失礼しました」と言い、部屋から出ていった

「総本部の強制捜査は今回で何回目だっけな……」

宇賀が部屋から出ていき、一人になると仲野はボソッとそう言った

東京本部は過去に何回かゾンビ愛護団体総本部に強制捜査をしてきていた。けれど、その強制捜査では逮捕状の出ていたメンバーの逮捕しかできず、ゾンビ対策法に違反している点を見つけられなかった

といっても、最後にこの強制捜査をしたのは七年前のため、二十代の多い東京本部だと知っている人が少なかった……

「今回で三回目では？」

仲野がそんなことを考えていると、突然誰かにそう言われた。なので顔を上げて見ると、目の前に一人の対策官がいた

「あぁ、宮島か。びっくりした……」

仲野がそう言うと、宮島と呼ばれている対策官は「出てきた人と入れ換えで入ってきたのですが、気付きませんでしたか？」と言った

「あぁ、全然気付かなかったよ。それより用件は？」

仲野は机の上に資料を置くとそう聞いた

「第一部隊だけで行う強制捜査のことなのですが、調べてみたところ建物がかなり広く、逃げられる可能性があるため何班か貸していただけないかと思いまして」

東京本部対策部には日本で一番ゾンビを倒している対策官がいた。その対策官こそ、いま仲野の目の前にいる宮島だった。そんな宮島がリーダーになっている第一部隊は作戦成功率が圧倒的に高く、どんな無茶な作戦内容でも上手くやってきていた

「分かった。レベルを小規模から中規模に変えよう」

仲野はそう言うと机の中から黄色のフォルダーを取り出した

「あの仲野さん」

「何だ？」

宮島に呼ばれると、仲野は作業しながらそう返答した

「愛護団体の件、本当に参加しなくて良いのですか？」

宮島はそう言った。すると仲野は「宮島は心配性だな。今回は前を特殊部に任せてるから大丈夫だよ」と言った

特殊部は東京本部で一番対人作戦に長けている部署である。なのでそれを聞いた宮島は「特殊部が参加するというのは初耳でした。それだけ今回の作戦は危険なのですか？」と聞いた。すると仲野はこう答えた

「あぁ、だから戦い慣れしていないテロ対策部と監視部はこの作戦から外したんだ……」

『ゾンビ愛護団体総本部強制捜査』は本日の午後七時から。参加する対策官は準備をし始めたが、これに参加しないテロ対策部の対策官達はいつも通りの仕事をしていた……

仲野昂祐

ゾンビ殲滅局、東京本部長

武器……拳銃