暮れなずむ公園で

暮れなずむ公園で

みなせだよ!水無瀬ですよ!

初投稿なります。
まだまだ未熟ですがぜひ読んでください。

僕のお気に入りの場所は、野良猫一匹すらいない、寂れた公園だった。
放課後、行く当てもなくふらふらと町を彷徨っていると、偶然にもここに辿り着いた。以来、放課後から日が暮れるまでの時間をここで過ごすようになった。
この公園では、今頃みんなはもっと大きな公園で遊んでいるんだろうなぁとか考えながら、一人で砂場を掘ったり、時に不恰好なお城を建てたりして遊んでいた。
学校で孤立しているわけではないが、家が遠いおかげで友人と呼べる人たちからは遊びにはまったく誘われないのだ。
僕はその日も、最近凝り始めていたお城を一人黙々と作り上げていた。風もなく、子供の嬌声すら聞こえない。ただ、夕日だけが爛々と輝いている。
「――――すてきなお城ね。こんな上手につくれる子、クラスじゃあまり居なかったわ」
背後から唐突に、見知らぬ少女に声をかけられ、僕は振り返ることさえできず、その場で固まった。
「びっくりさせちゃった? ごめん」
若干笑みを含みつつ、少女は形式的に謝った。
他から見て分かるほどに、びくついてしまっただろうか。赤面しつつ、僕はとりあえず礼を言った。
「…………えっと、ありがとう」
掠れた声が、僕と少女しかいない公園に響く。すごいね、と、少女はまた僕のお城を褒めた。
「別にすごくなんかないよ。みんなちょっと時間をかければ、僕よりきっといいものが作れる」
「へーそうなの。なら、私にもできるかしら」
少女の、驚くほど白く華奢な腕が、ぐいと視界に入ると、ずっと背中でしゃべっていた僕の目の前には、薄水色のワンピースを着た小柄な少女がしゃがんでいた。
「できるよ、多分」
僕はちょっとどきまぎしながら答えた。中学生くらいの、クラスの女の子よりずっと可愛い女の子だったから。
彼女は快活に笑いながら、上手なお城の作り方を教えて欲しいというので、その日から約束するでもなく、暮れなずむ公園で会うようになった。
彼女とは色々な話をした。同じ小学校出身であるということ、水色が好きだということ、中学は受験をして、すこし遠くに学校があるということ。
中学校が離れた距離にあるのなら、彼女も僕と同じように、地元から通うクラスメートたちにはあまり遊びに誘われないのではないだろうか。
疑問に思った僕は、思い切って彼女に問いかけた。
「やっぱり学校から家が遠いと、遊んでくれる友達も少ないの?」
「んー……そりゃ小学校ときよりかは減ったかなぁ。でも、遊びたかったら自分から誘えばいいしね」
何気なく彼女は言うと、お城の門部分である穴から手を伸ばし、僕の腕を引っ張って遊んでいた。
そっか、そうなんだ。僕は彼女のおかげで気づけた様な気がした。
ずっとずっと、箱の中に閉じこもっていてはいけないこと、自分から、一歩を踏み出さなければいないこと。
僕は彼女に礼を言おうとした。しかし、彼女は僕の言葉をさえぎるように、「作り方、教えてくれてありがとう」と言って去っていった。
オレンジ色の光と、スコップと、彼女と一緒に作ったお城だけが、静謐な公園に残された……。

次の日、友人が放課後、公園で遊ぶ約束をしているのを聞いた。
僕は勇気を振り絞って、「僕も、行っていいかな」と友人に言った。
しばらくの沈黙のあと、友人が意外そうに、「いつも、遠いから遊びたくないのかと思ってた」「いいよ、一緒にサッカーしよう」と口々に言った。
その日僕は、あの公園には行かず、もっと活気のある、親子連れや同年代の小学生がいる賑わった公園へ行った。
次の日も、次の日も、またその次の日も。あの一歩を踏み出したことを皮切れに、僕は前よりずっと、遊びに誘われるようになった。
それからだんだんとあの寂れた公園に足を運ばなくなった。



今日は珍しく、みんなは用事があるとかで遊びには誘われなかった。
なんとなくふらふらしていると、またあの時のように、寂れた公園にたどり着いた。
ふとよく見ると、公園の入り口の手前に、掲示板が設置してあった。
地域内でのバザーの開催日や、お年寄りとの交流会の詳細などが貼ってあった中で、とくに目立つものが合った。
――――『探しています。当時12歳の、この公園で遊んでいたらいなくなってしまった女の子です。服装は水色のワンピースを着ています。見かけましたらこちらの番号へ。些細な手がかりでも構いません。ご協力よろしくおねがいします。』
その紙には、失踪した当時の日時が書いてあった。もう十年ほど前の話になる。
――――もう十年も見つかってないんだ。死んじゃってるんじゃないのか?
そんな不謹慎なことを思いつつ砂場へ向かい、今日は彼女は来てくれるだろうかと、スコップを片手に、お城作りに没頭した。

暮れなずむ公園で

複線を一応最後あたりに貼っておいたはいいんですが、ちょっと分かり安すぎますかね・・・

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暮れなずむ公園で

公園で出会った少女との物語。 今日も砂場で、僕は彼女を待ち続ける――――……。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-23

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