桃の皮

草片文庫(くさびらぶんこ)

桃の皮

おぞましい話です。気持ちの悪い物語が苦手な人は読まないほうがよいと思います。

 少女は真っ白い桃の皮を細い指で摘んで剥(む)きはじめた。
 すっと皮がむけると、その跡が白い雪のように浮き出てくる。
 くるっと丸まった桃の皮が指先に巻きつき、少女は指先からはがすと、そうっと皿の上に擦り付けた。陶器の皿の縁に薄い皮がべたっとくっついた。
 熟れた桃の匂いが部屋に立ちこめた。
 指がまた皮を摘んだ。今度は大きく剥がれた。
 皮がとれた跡は上等なアイスクリームの表面のように、水気のない柔らかそうなふわっとした、それでかさっとしている。
 人差し指がそれを押すと、薄黄味がかった跡がついた。
 少女の指が残りの皮を摘んだ、今度は細長く皮が裂けた。
 幾度ともなく繰りかえし、最後に張り付いていた小さな皮を指先で摘むと、いとおしげに剥がした。皮が皿の上に重なって黄色くなっていた。
 きれいな桃の実が現れた。
 片手に持って眺めていた少女は、いきなりがぶっとかぶりついた。
 じゅうと音を立てて、桃から黄色い汁が滴り落ちた。
 少女の顔に笑みが浮かんだ。

 子供のころを思い出していた女は、マンションのダイニングキッチンにある、木製のテーブルの前に腰掛けて、目の前の真っ白でふくよかだった友達を眺めていた。
 桃のようにきめの細かい白い肌をもち、大きな黒目がちの目が男を見ると、男は皆かぶりついてきた。桃の香りのする女、それが友達の通り名であった。
 女はその女友達に衣服を脱いでテーブルの上に横になるように促した。
 友達は笑い顔をみせながら、白いブラウスをとり、真っ赤なスカートを下に落とした。簡単にはずせる胸当てを、片手を背中に回し、いとも簡単に取り外すと、今度は糸のように細い下履きを足から落とした。
 テーブルの上の女友達のきめの細かい白い肌に女は目を細めた。ちょっと触れてみた。上向けに寝ている女友達は目を閉じて力を抜いた。
 女の人差し指が盛り上がった赤く充血した乳首に触れると、女友達はちょっぴり口を開けかけてびっくっと身を竦めたが、すぐにもとのようにただ横たわる女になった。
 女の人差し指を青い静脈が透き通る乳房の皮膚の上にはわせ、胸から腹から足からすべの皮膚の表面を女の指先が触れていった。女友達は時々、びっくっと身体をよじらせ、少しばかりのため息をついた。
 女の指は生きているように女友達の丸みを帯びた白い肌の上を動いていく。
 女友達が大きな目を開いた。
 そのとき、女の両手の指が女友達の細い白い首にあてがわれた。押さえつけられた首を何とか動かそうと女友達の手や足があちこちをむいて動いたが、それも長い間ではなく、やがて女友達はテーブルの上でふたたび静かに目を瞑って横たわった。
 女は女友達の手足を程良く開き形を整えた。赤くなった首の周りに指をはわせ、こすりながら赤みを散らすと、また首も白い桃のような肌を取り戻すことになった。
 それから二日が経った。テーブルの上の色の白いふくよかな女友達がちょっとばかり紫がかってきた。女の指が膚を押すと息をしている時のように弾力がある。
 女の手が友達の乳房を押した。
 熟している。
 女は笑った。
 部屋に充満する人の腐した匂いは女の鼻には熟した桃の香りだった。
 女の指の先が女友達の額の皮膚をつまんですーっと剥いた。手には丸まった皮が残った。白い皿の上にそれをなすりつけた。さらに赤い染みがついた。
 指の先の爪が少しずつ、友達の皮を剥ぎ取っていく。
 桃のような白い表面が現れることはなかったが、剥かれたばかりの李(すもも)のように赤い実が現れた。
 女の指は女友達の顔の皮を丁寧に剥ぎ取った。時がかなり経った。女の指の力が抜けている。女は自分の手をもんだ。
 首から胸、乳房、剥ぎ取られた皮は無造作に、白い皿の上に擦り付けられた。皮が幾重にも重なって、皿の上に肉の塊のようになって厚くなっていく。
 手の皮をすべて剥いだ女は、腹の皮を剥がし始めた。摘み上げてすーっと引くと、細長く皮膚が剥がれた。秘部の陰毛をひき剥がし、いい形の尻だったが、今は赤黒い大きな高まりににすぎなくなった。。
 ピッチリと張った大腿を摘まみ、少しずつ剥がしていくと、足の裏までじっくりと剥いでいった。
 目の前には皮を剥かれた熟した女友達のからだがあった。
 女は少女の時のことを思い出していた。剥いた桃にかじりついたときにほとばしりでた桃の汁。あの時の感激を今、味わうことができる。
 女が椅子から立ち上がった。女友達の盛り上がった皮のない乳房に目が注がれている。
 女の時間をおいたマグロのような色の薄い唇。
 女は目を細めた。
 女は口を開けた。
 女友達の胸の上にかがみこんだ。
 じゅうという音がして、腐乱死体の匂いが強くなった。

 高校生の少女、ただ人を殺したくて友人を殺す。との記事が新聞にあった。

桃の皮

桃の皮

おぞましい話です。気持ちの悪い話が苦手な人は読まないほうがよいと思います。

  • 小説
  • 掌編
  • ホラー
  • 成人向け
  • 強い反社会的表現
更新日
登録日 2019-08-23

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