危険なつばさ第3章
「艱難、汝を、玉にす。」山だの、谷だの、なんか、言っていられないんだよ。 僕の心が、どんなに、弱いか、知らないんだね。傷あとを、一人で、直す、さみしさよ。 海見れば、広くなろう、山行けば、高くなろう。思えども、思えども、今日を明日へ、つなぐ、のみ、、、、、
僕は、屋根瓦の下にいる。目の前に雨どいがある。雨の振る日は、川のようになって流れていく。僕は、瓦と雨どいの間の 壁が少し崩れているのを、突っついて、自分の、からだが入るくらいの、おおきさにしたんだ。壁をつっつくのは、得意じゃない。これは、キツツキの仕事だ。スズメは茂った木のえだを、すみかにする。大体は、ひとかたまりなっている。
僕は、姿が見えないように用心してるんだよ。
僕の生まれた巣は、意外と、民家のちかくだった。
屋根から、屋根を 飛びうつって、庭の木の実や、虫を探した。
縁側に走ってきた子供が、「めずらし鳥がきたよ。」っていうんだ。僕は、少し得意だった。
よおおく、見せてやろうと思ったんだ。僕は、首を ちょっと傾けて、尾羽根をピンと張った。
地面に、パラ、パラ、と何かまいた。僕は、飛び降りた。
その時、僕のからだが、反応した。僕は、不思議な感覚を持った。尾羽根が、ビクンとしたんだ。光ったに違いない。
その振動は、ザザアと背中を伝わって両方のこめかみをズキンと打った。
僕は、とっさに、その意味がわかった。「危険だ。」横飛びに、パッと飛び立った。
次の瞬間,、ぱさっと 虫取り網が、落ちてきた。初めての経験だったのに、なぜ、わかったんだろう。
僕は、尾羽根を流線型に とがらせてほんの少しひだりへむけた。僕は、半円を描いてスズメとは思えないスピイドで飛んだ。そして、急上昇したんだ。
そうさ、これは、ツバメの飛び方だ。僕は、ツバメように、地面すれすれに、まっすぐに、とびあがりながら、急上昇できる。尾羽根を、開くと風を受けて、ゆっくりと、飛べる。
少し横に傾けると、かたむけたほうへ、曲がる事ができる。全速力で飛ぶ時は、力一杯羽ばたく。尾羽根をピンと流線型に伸ばして、僕の、尾羽根は、ピク、ピク、と波を切る船の梶のように、正確に方向をきめて、わき腹から両方の羽根に力を伝えてくる。
僕はスズメだ。長くは飛べない
危険なつばさ第3章