いつからこんなに臆病になってしまっていたのだろうか

きっかけも思い出せなくて

いつしか思い出せなくてもいいやと

思う様になっていた

関係を築くたびに感傷が生まれ

感傷を抑圧してできた瘡蓋からは

知らず知らずのうちに哀と憂の膿が

臓の表皮から垂れていた

気付いた頃にはもう遅くて

傷付いた自覚を得たときに意味を知る

その瞬間を直情を

憶えていますか

識っていますか

もしも憶えているのなら

憂を色で表して頂戴

もし覚えてすらいないのなら

無理に思い出そうとしなくていいから

そのかわり日々と一層

一層向かいあって頂戴

罅を深く見つめて頂戴

零れた汁は水溜まりになって

軈て知られることのない海へとかたちをかえるから

そこから救い上げた表象を

そこから掬い上げた情動を

大事にしたい

大事にしなさい

盲信を遮断して頂戴

ことばはたくさんつくらなくていいから

つたえたい相手にだけつたえたいことを話しなさい

つたえたい人につたえたいコトを

澱んだ海に還らす前に

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-08-19

Copyrighted
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