恋の訪れ

軽く好き。
そんな感情はたびたびあった。
風でフッと消せてしまう、浅い想い。
毒にも薬にもならないような。
むしろ無駄な傷だけ増えてったような。

今回の人もそうかなと思ってたのに。
全然違った。
こんな熱量で恋をしたのは何年ぶりだろう。
本当に、何十年ぶりだった。

だから戸惑う。
貴重で。
こわくて。
近付き方すら分からなくて。
愛想よく適切な会話をするのが精一杯で。

好意の伝え方とか、心の距離の縮め方とか。
恋の進め方なんて全く分からないまま、時間ばかり過ぎていく。
心地いいのに、切なくて、離れたくなくて、同じ想いを向けてほしくて、好きすぎて、涙がこぼれる。

振り向いてほしいような。ほしくないような。
一方的に想っていたって、痛いだけ。
それなのに。
ただ一人で想っていたいだけのような気もする。

大人になって、臆病になった。
もともと臆病だったのに。
もっともっと、こわがりになってしまったみたい。

ただ。
こんな風にまた誰かを好きになれる日が来るなんて思わなかったから。
それだけは、ひたすら嬉しい。

恋の訪れ

恋の訪れ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-08-18

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