サナギ

フッツ

久しぶりに行った海が
なんだか記憶と違ってた。
懐かしい景色に突きあたりたくて
抜け落ちた時間をたどる。
でも、悪あがきで漕ぐペダルは
踏んだ数だけ思いを蒸発させるだけだ。

陽が沈んでしまっても
暗い空には満月があり
それが水面に映って静かに揺れる。
青白い円の中、
浮かび上がる小さな波が
いくつも砕け 混ざり合って
黙々と淡々と
新しい要素を作りだす。

神秘の夜に、サナギは次の形へ変われる。
湿った羽が乾くまで
波の音に紛れて眠り、
沁みついた潮の匂いとともに
明日の朝には きっと旅立つ。

サナギ

サナギ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-08-16

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