私の好きなもの
ガム
口に入れて噛み始めると「ザキザキ」音がして、次第に「ジャムジャム」、「サムサム」と音が変わり、硬い殻が唾液と、内部のゴムとで混ざり合っていくのが楽しい。
ところで、内部のゴムはなにでできてるんだろう。「ゴム」と呼んでしまっていいのだろうか。実は、チーズ屋見習いが作るのに失敗した無味無臭のチーズだったり、小学校の帽子のゴム部分(常に顎に装着しているため、塩っからい。貴重な塩分補給源になるね)をくたくたに煮込んだものだったりしないだろうか。ガムは所詮、口の中で噛み続けるだけなので多少衛生に気を使わなくても許されるって思っていたら嫌だな。
ガムといえば、スーパーで売られているガムの種類が数年前に比べてかなり減っていると感じる。「若者のガム離れ」を耳にしたことがあるが、どうやら本当ではないか。その真相を探るべく我々取材陣は秘境、アマゾンへ向かった…ということはなく、ひとりの大学生が日本で想像した。
なぜ若者はガムを噛まなくなったのか。
私の想像では、顎が疲れるから。
えのき茸
これもまた食感が楽しい。
きのこ類には珍しい、「ジャリジャリ」である。
きのこの食感を表すのに「ジ」を使うとは誰が想像しただろう!「ジャリジャリ」なんて、さながら小石でも貪り食っているかのような擬音だ。
そして、なにより名前が好きだ。
「えのき」
「え」のきなのか、「え」「のき」なのか…
「えのき」の「の」は、助詞?
発音もしやすい。
『えのきっ。』
「まいたけ」はどうしても「ま」の時に唇を重ね合わせなければならず、(言うぞ!)という志がなければ難しい。「ぶなしめじ」なんて最悪だ。「ぶ」でカロリーを使う上に、「な」から「し」への切り替えは高度のテクニックを要する。
それに比べて「えのき」はどうだ。ただ口を指一本ぶん開いて、声帯を震わせるだけでいい。
えのきの母音はeoi であり、これは背負い投げの「背負い」部分と一緒。もっとも発音しやすい母音の配列ではないか。
私の好きなものと題して、ガムとえのき茸について書き連ねた。しかし、私はこれら以外にも世界のあらゆるものを愛している。これからもその全てに対しての恋文(と書いてラブレター)として、愛を文章に現していきたい。
私の好きなもの