夏は二度と現れない
蝉が鳴きやむのと
夏が終わるのとは同時で
人はそこに一つの終末を見る
人はどうして次の夏があることを知っているのだろう
いつからそのことを知っていたのだろう
秋を経て冬が来たりて春も過ぎた先に
どうして夏が待っていると自信を持って言えるのだろう
あなたはどうして次の夏があることを知っているのだろう
いつからそのことを知っていたのだろう
母や父から教えてもらったのか
それとも見知らぬ誰かから
私は次の夏がないことを知っている
一度死んだものが蘇るはずもないのだから
ところで海の果ては滝になって落ちていくだけ
私の世界ではそうなっているのだから
だから夏は二度と現れない
もしももう一度夏がやって来たなら
そのときは安心して私を忘れてほしい
私は舞台から押し出されて消えているから
夏は二度と現れない