日の丸を、焼いてみた
表現の不自由を行使します
日の丸を、焼いてみた
日の丸を焼いてみた
理由などない、動機などない、目的などない、信念などない
ただただ、焼きたかったから焼いたのだ
だいたい、私は昔から何事も深く考えないたちだ
生きたいから、生きる
行きたいから、活きる
活きたいから、粋る
粋たいから、息る
だから、焼きたいから、焼いた
だから、というと、すくあなた方は、理由をたずねる
だから、どうだというのだ
だから、であるから、あるからして、すべからく、かくなるうえは、それゆえに
だから、だから、だから、だから
もう、たくさんだ
だから、でなく、からだだ
からだがあるのだ、人はからだで出来ている。
からだ、だからだ
わたしは、からだでできている。わたしのからだが、「だから」をつくり
だから、が、わたしの体を形づくっている。
だから、なのだ。
からだが、「だから」をうみだした
だいたい、なんなのだ。
よのなか、「だから」だらけだ
日本人だから、男だから、女だから、主婦だから、サラリーマンだから、子供じゃないから、いい大人だから、それでもやっぱり日本人だから。
だから、は、もう、たくさんだ。わたしのからだは、からだ、でできている。だから、で、わたしのからだは作れない。
だから。
そう、だから、きょう、わたしは、からだで、だからを示すことにした。
日本人だから、どうした。それが、どうした。
だってそうだろう。
にほんじん、は、わたしのからだをつくれない。わたしも、にほんじんのからだを、つくれない。
だから、どうしたというのだ。
そうだ! たった今、わたしは「だから」から解放された。
この地球の、この地上の、この空の下の、この海の向こうの、太陽圏、地球圏、電離圏、成層圏、対流圏、岩石圏
ありとあらゆる、重層した、積層した、堆積した、蓄積した、鬱積した、山積した
問題だらけの、矛盾だらけの、自己撞着だらけの、しがらみらだけの
人間関係、親子関係、雇用関係、隷属関係、社会関係、法律関係。
全ての物理的、電子的、精神的、肉体的、法律的、光学的、金銭的、思想的、政治的関係から
完全に、不可逆的に、未来的に、解放された。
だから、日の丸を焼いてみた。
燃やしてみたい、破壊してみたい、蹂躙してみたい、滅却してみたい、消滅してみたい、抹殺してみたい。
そんな、喜びと、楽しみと、めぐみと、いつくしみに、満ち満ちた、じぶんのからだ=だからの自由をあらわすために
日の丸を焼いてみた。
わざわざ、日本国旗を用意するまでもない。それは金銭的に日本銀行と隷属的、苦役的、奴隷的、懲罰的な関係をつくりあげてしまう。
それは、わたしの「だから」ではない。
日の丸を描いてみた。わたしの内に秘めたる「だから」が、わたしの「からだ」をつかって描かせたものだ。
ぐるぐるぐる。
ぐるぐるぐる。
ぐるぐるぐるぐるぐる、と、「だから」のおもむくままに赤い丸を描く。
日の丸が出来た。これは日の丸であって、日の丸ではない。わたしの「からだ」が描いた「だから」の日の丸だ。
だから、だから。
どうしようと、私の勝手ではないか。
自由だ。焼こうが煮ようが、雨で濡らそうが、槍で刺そうが、自由だ。
自由の身になった日の丸だ。
だから、自由にしてやるのだ。
庭に出た。
ぽっこりと晴れたなつぞら。
日の丸が輝いている。
天然の日の丸の下で人工の日の丸を自由にしてやるのだ。
この、だから、が描いた日の丸には自由が足りない。
いや、日の丸じたいに自由が足りない。
日の丸を焼いてはいけない。
なぜだ、どうしてだ。
わたしのだからが描いた日の丸は徹底的、完全無欠、神聖的、根本的に自由であるべきだ。
自由が足りない、日の丸に自由が足りない。
日の丸に油をかける。
ぼっ、と鈍い音をたてて、日の丸が燃え上がる。
もえろ、もえろ、わたしの日の丸よ、自由になれ。
日の丸を、焼いてみた