根の国のマウシカ

マチミサキ

ネットニュースで見たのですが
どうも都内某所で鼠が出ているみたいですな。

実は私もその昔には
とてもネズミには悩まされた口なのです。

そこで
まー

いつかどなたかの役に立つかも知れませんので
私の経験談を記しておきましょう。

ネズミが苦手な方は
もう
これより下は読まない方が良いです。

かなり
リアルに書きますので。


私が初めて
ネズミと関わってしまったのは
都内某所
世界でもかなり有名な巨大歓楽街で
酒屋のアルバイトをしていた頃のこと。

小さな飲み屋さんが
幾つも軒を連ね

そういった多くの店舗を担当していた私。

特に私は
バイト仲間内でも

当時は普通免許を唯一
所持していない人間でしたので

その昔
社長が若かりし頃
愛用していたという
特注品の
酒屋カスタムリヤカーを
駆使しての配達人でした。


消防法なにそれ美味しいの?
という雰囲気の
店舗、雑居ビル
この中の幾つかは
裏通りも裏通り
ビルとビルの狭間
人も正面からは入れぬ程の隙間に
見上げるほど高く
空き瓶、空きケースが置かれていたのですが

こちらを回収する前に
入り口に備えつけてある二メートル程の棒で
最初にケースを叩きまくるのが暗黙の了解

これをしないと
ネズミが頭から降ってきます。

一匹二匹ではなく
ものすごい量のね。

どうやら
空き瓶に残された僅かなビールやジュースの
匂いにつられてやってくるようで。

叩くと噴水の如く
ワーッとネズミ達が一度噴き出し
地面へと壁へと
流れるように散っていきます。

大きいのから小さいの

大きいのはマジででかい。

ちょっとシャレにならないくらい。

たまにこれが
ほんの数メートル離れただけの
一本向こうの
おしゃんで陽の当たる道に
飛び出てしまうのです。

すると
歩を進めている
華やぐ格好&スーツエリートの皆様は
パニックとなります。

当時
この光景をどれ程見たことか。

なにもそんなに大騒ぎしなくても
アンタ達が飲み歩く
お店の回りにゃ…

まるでお洒落ではない
前掛け&長靴を身に着けながら眺め
よくそう思っていました。


ところで

上記のこの一連の作業を
新人が行った際に
上手く行かなかったり
うっかり忘れたりすると

まず
間違いなく
その日のうちに辞めます。

なにか
地獄をみたのかもしれませんね。

これはいわば
儀式的な
ネズミと配達人のお約束なのです。

ネズミとて
いきなり
地面を崩されては驚きますし。

配達人としては
ケース回収するから
退きなさい。

という。

熊避けの鈴。

お互いの為の。

ちなみにこの叩き棒を
【ハーメルンの杖】
と私は呼んでいました。

叩き方にもコツがあり

壁を二回バンバン

それから強弱をつけ
ケースの中ほどをリズミカルに

しかる後
地面を強烈に。

等の手順により
ネズミの退路をある程度操ることが可能。

そして立ち退き後のケースを専用手袋と
腕カバーを用い回収。

これもハードで。

世界有数の繁華街

お店の数も半端でない。

その筋のお店も多かったですし。

時間との戦いでもあるので
空なら一度に5ケースは持てないと
話になりません。

これは
バイト面接時にテストされ
中身入りのビールケースを三箱以上
上げられるのが必須条件でした。

私は
高額のバイト代に釣られ
やってきたチビの愚か者として
当初は嘗められましたが

その可憐で華奢な容姿とは裏腹の
男子顔負け
脅威のハイパワー&ハイスピードを見せ付け
社長のお気に入りと化したのです。

件のビールケースですが
これを足場のキチンとしたところで
積み降ろしすると思ったら
大間違い

足の爪先だけで
ケースの取っ手部分を駆け登って
頂上を目指し
その姿勢のまま
今度は
ケースを持って降りてくるのです。

雑居ビルのほぼ全ての階層に
飲食店が入っていたので

こういうスタイルになったのですかね。


私は行ったことがありませんが
その様子は
ひょっとしたら
かの有名な
九龍◯にも通じるものがあるかも
しれませんな。

上空から
転落して大怪我をした人も
居たとか居ないとか。

当時でも
バイト仲間としては
六大学で有名なM大ラグビー部男子とかが
多かった記憶があります。

高校生ではおそらく無理かと。

私の在籍時では見たことがありません。

ハッキリ言って
強制筋トレを超す内容の
ハードトレーニングにも
なるので
なかなか芽の出ない選手の方が
よく来ていたような記憶があります。

室外機に囲まれた裏通りは
温度、湿度も半端でないので
着替えも数着は用意して置かないと
話になりません。


ネズミばかりではなく
怖い専門職の方や性的に色々とまあ

的なお店もかなりありましたので
ついでに精神的にもかなり鍛えられ
メンタルトレーニングとしても最適かと。

とにかく
その破格のバイト代に見合う
精神的にも肉体的にも
スーパーハードなアルバイトでした。


ああ、
それと
大丈夫ですよ。

この辺りは
大きな火災に遭い
今ではもう
当時の面影すらない景色になっていますから。

安心して
楽しく飲んで下さい。

だいぶ長くなりそうなので
続きは
あさってにまた。

明日書けるようなら
かきますけど。

明後日のほうが時間がとれそうなので。

ではまた。

追記2

はい!
ちょっと時間が空きましたので続き

それから
しばらくして
祖母が亡くなり
私はヤクザな生活を悔い改め
将来を見据え
少し遅まきながら進学を決意

一度田舎へ帰り
祖母の葬儀を済ませ
こらからの生活について考えていましたところ

祖母の葬儀にてご挨拶をいただいた

と、ある金満家の老婦人のお世話に
なることになります。

この方は祖母と女学校時代にかなり
親しくして下さったそうで

私は知りませんでしたが

祖母が生前
自分になにかあった時には…

的なことを時おり話していたそうで

そんな
ご縁もあり

私はこの老婦人の持っていた空き家を
借り受けることになり

それから
かなりの長きにわたり
この借家に生息しておりました。

この辺りは
エッセイ【ハッピーハウス】に
以前
書き込んだ記憶があります。

この借家には
敷地内に物置小屋も完備されていたのですが

ここに居たのですよ。

悪魔のチュー軍団が!

どうやら
空き家にしていた間に
根城にされてしまったようで

それでも
最初のうちは母屋には来ないので
放置していましたが

これが
段々
私の生活圏まで侵入するようになって
きたのです。

決定的だったのは
台所に置いておいた石鹸が齧られ
ネズミの歯形だらけになっているのを
帰宅後に発見したこと。

まさか
食べ物も放置していないし
こちらには
来ないだろう…と、いう甘い予測は
完全に打ち砕かれ

留守中に
領地の侵犯が行われていたのです。

これは
どんどんエスカレートし

しまいには
私が居ようが居まいが
天井を遠慮なく駆け回り

居間にさえ
その姿を表すようになってしまいました。

もはや
アリエッティどころの話ではない。

このままでは
ペストにかかってしまう

それに
ネズミは配線も齧るようなので
漏電による火災も心配

そう危惧した私は
それから
数日間ホテルを借り受け

この間に
部屋に置いてある家具や食器のほぼ全てを廃棄

勿論
大家さんの許可&助成金を受け

本格的なアリエッティ狩りが始まり
私対鼠の戦争が始まりました。

先ずは宣戦布告として
超音波攻撃による先手を打ちましたが

この音波発生装置

モノにもよるとは思うのですが
私が購入したものは
最初こそ効き目があったものの

僅か数日でその効き目を失い
挙げ句この機械の横に鼠が居る始末。

これではどうしようもない。

それから
殺鼠剤

これも
初めのうちだけ
部屋の中や小屋の前で息絶えた個体を
発見しただけで

あっという間にその効果はなくなり

鼠は薬剤入りの毒餌には
一切近づかなくなりました。

ネズミは
おそらくこちらの想定するより
数段上の知能と危機回避能力を備えている…。

思い悩んだ私は

動物園に赴き
虎やライオンの尿を染み込ませてもらった
バスタオルを用意

これは
かなり効きましたが

それでも
近づきずらいだけで
根絶には至らない

このクサタオルより
少し離れた場所には
相変わらずネズミの気配

むう

やはり【アレ】か…

私は愛猫家の友人に頼み込み
多頭飼いをしているその中でも

気性の荒いという
ボス猫を借り受けてきました。

巨体の三毛猫
いかにも強そう

態度にも貫禄を感じさせる

が、

このボス猫がとんだ内弁慶で
ネズミを見ると逃げ出す始末

ネズミに立ち向かうことなく
畳をパンパンと遠慮がちに叩き

終いにはネズミがその姿を見せなくなるまで
物陰に隠れる

そして
ネズミが居なくなると
恥ずかしげもなく
堂々と出て来て甘えた声で鳴く

今日はこの辺にしといたるわ、的な雰囲気

吉本新喜劇ばり

あまりの期待外れにガッカリ


だめだ
ネコは役に立たない

そこで
山へ赴き
青大将を数匹捕獲

こちらを
小屋に放ちましたが

この数日後
蛇は小屋の片隅で死体となっていました。

むう

これは詳しくはかけませんが
その哀れな亡骸をみて
とても後悔したのを覚えています。

蛇は山へ持ち帰り
手厚く供養

おっと時間ですな
続きはまた。



追記3

それからはもう
本当に色々と試しました

忌避剤、昔ながらのバネ式トラップ
バルサンなどは
ネズミ+コイツらが持ち込むダニノミにも
対策したく
ほぼ毎週末に焚きましたし。

前述のホテルも
このセレブ大家さんがオーナーなので
とりあえずは従来の家賃以上は
掛かりませんでしたが
いつまでもホテル暮らしという訳にもいかない。

ここまでいけば
もはや
大家さんのご意見通り
プロ業者に頼むべきなのですが

それはもう最後の手段として
とりあえず
私がやれるだけはやろうと
意地でもないのですが
なにか
なんといいますか
変な状態に陥っていました。

おそらく
ネズミストレスにより
精神を病んでいたのかもしれません。

ちなみに
ネズミ(カゴ)のトラップは
一番オススメ出来ません。

これは
生きたまま
ある程度の動きをも失わず
捕獲出来てしまうので
あと始末がとても大変なのです。

とりあえず生きたまま
放そうなどと思うと
捕らえられ完全にイッているネズミに
食いつかれかねませんので
基本はカゴに入れたまま
水に浸け
溺死させるというものですが

これがとんでもないストレスになります。

やはり
害獣とはいえ
妙な言い回しですが
その手で
生きたまま
殺すとなるととても強い抵抗があるのです。

カゴに捕らえられたネズミは
なんとか檻から逃げようと
歯は檻を齧りまくり折れて
口のまわりは
真っ赤な血まみれになっていました。

これならまだ
粘着シートの方がマシです。

このネズミトラップ粘着シートは
本当によく掛かりました。

私のネズミルート研究にもよるとは
思うのですが
ほぼハズレ無しです。

仕掛ければ
2、3日中には必ずと言っていい程
捕らえていました。

ベットリと粘液まみれになり
もがけばもがくほど
身動きは取れなくなります。

ジュージューと鳴き声を挙げ
かなり大型のものも
完全にその動きを封じられていました。

よく
この粘着シートが半端に付いたまま
動きまくる巨大な個体が居るような
失敗談を幾度か耳にしたことがありますが

私の場合はそれは皆無。

少しでも触れれば
それを外そうとすればする程
自ら中心へと向かっていきます。

そして小型のものは
これを2つ折りにし

大型のものは
もうひとつ新品の粘着シートを
取り出しサンドイッチにして

そのつど
ゴミのセンターに持っていきました。

燃えるゴミに出すという話も
聞きましたが
万が一
清掃員さんが
噛みつかれでもしたら
大変なので。

あらためて
ネズミはもう住み着かれたら
おしまいだな、

と考え

もう諦めかけていたとき
私は
と、ある猫に出会ったのです。

その猫は
自動車が行き交う道路のはじっこで
今にも轢かれそうになりながら
その身を丸めていました。

と、いうより
最初はあまりにも動かないので
死体だと思ったくらいです。

その側を通りかけた時に
その顔が私を見、
その瞳が私の目を捉えたのです。

助けてくれ

と、言った感じはまったくなく
ただ真横を通る車にも動じず

その目は諦めのような
自らの死を悟ったような
静かな表情を
浮かべていました。

当時の私は動物好きでも
ましてや
猫好きという訳でもなく

むしろ上記の役立たず三毛の影響から
どちらといえば
猫は嫌いの範疇に入る生き物でしたが

さすがに

…なんて良い人ぶるのは止めます。

どういう訳か
この猫を抱え上げてしまったのですよ。

私はバイクでしたので
懐にこの猫を入れて
とりあえず
バイクを安全に停められる場所まで
移動しました。

その間

この猫はまったく暴れることもなく
完全な
なすがまま。

生きる意思を放棄しているようにも
感じました。

そして
懐から猫を出し

改めてじっくりと観察すると
後ろ足に大きな裂傷

後に獣医さんに診断されましたが
これは車に轢かれた訳ではなく

おそらく
大型の
犬か何かに噛みつかれたケガであったようです。

とりあえず
適切な処置を施されたケガ猫を
鼠屋敷と化した我が借家へと
運び込みました。

ホテルにつれて行く訳にも
行きませんでしたので。

昼間はネズミもあまり
出て来ないので

部屋の中に
テントを張り

その周りに件の粘着シートを設置し
猫を保管

そのままでは
ネズミのエサになりかねないので。

しかし
流石に
猫にネズミが近付くことは無く

日に日に
猫は回復して
数日後には
このネズミ屋敷内をうろつき
自由に闊歩するまでに回復

しかし
不思議なのは
テント内に
私が用意した
猫エサがほとんど減っていないということ。

その理由は
すぐ解りました。

ケガ猫にとって
このネズミ屋敷は食べ放題のパラダイスで
あったからです。

鼠の食べ残しがあちこちに散らばり
なかなかのスプラッタ光景では
ありましたが

私はこれを見て
爽快感、

…とはちょっと違いますな

けど
満足気な良い目を輝かせる
この思わぬ拾い猫になんとも言えぬ
頼もしさを感じていました。

このバラバラ鼠を掃除して以降
ネコにしばらくは
水以外の一切のエサを与えていません。

それに
ネコの飼い主になったつもりも
ありません。

猫にダニノミ薬は付けたものの
首輪もしませんし

『出て行きたくなれば何時でも出ていくように』

そう
よく話しかけていました。

勿論
居たければ居ても良いですが

私は君の主ではないし
義理を感じる必要もない

いわば
君と私は現在に於いて
利害の一致した共生関係にあるのだ!

だから
名前もつけず

この猫は
ただ
ネコとだけ呼んでいましたし
撫でたり
抱き上げて可愛がったりするような
ベタベタとした馴れ合いは
しませんでした。

それでも
しばらく一緒に居るうちに
どうやら
この猫は魚肉ソーセージに目がない

と、いうことだけは
解りました。

ので

これはエサではなく
ご褒美として
本当に
たまーに

ついつい。

猫もお礼とばかりに
この時ばかりは
私の足にやたらとその身体を
なすりつけて来たものです。

ネズミは
このケガ猫

いえ、元ケガ猫の登場以降
その数を激減させていきましたが

それでも
まだ根絶には至らず

母屋ではまず見掛けなくとも
そのアジトである
物置小屋には未だに住み着いたまま。

猫も遠征はしてくれるのですが

ネズミの巣までには
手が届かないようで。

とりあえず
小康状態と平穏を取り戻した
我が借家は天井裏から
軒下、板張りの下の隅々まで
消毒薬を散布され
畳も張り替えられ

快適さを取り戻し

私も本格的に借家へと戻ることに。

そして
数ヶ月が過ぎても
ネコは
我が家に居続け

もう飼い猫認定するかな、

と思いかけた頃に

あの地震が起こりました。

東日本大震災です。

家はミシミシと揺れ
瓦は崩れ
私は猫とともに
外へと飛びだしました。

この時
物置小屋の柱が老朽化の為か
一部がへし折れ

母屋の中もめちゃくちゃに。

私はこの借家を片付ける間もなく
職場へと呼び出され
それから
数日を職場で過ごし

再び
ようやく借家へと戻ったのは
震災からだいぶ経った頃でした。

猫は大丈夫だろうか?

どこに居る?

あの時
私と一瞬に飛び出した筈の猫の姿が
何処にもない。

何処にも居ないのです。

それから
ずいぶんあちこちを探し
興信所にも頼みましたが

世間は当時

猫どころではなく

このまま

そのまま

猫は姿は消したまま

あの時
猫を連れて
職場に行くべきだったか

とも

後悔しましたが

あの猫はもともと野生

自由に生きる猫

そう考えて…

無責任だと言われれば
返す言葉もございません。

不思議なのは
この震災以降

ネズミは完全に
我が借家からその姿を消しました。

その後
一匹たりとも
気配さえ感じません。

母屋はもちろん
物置小屋にさえ

これは

物置小屋を手直ししてくれた業者さんも
太鼓判をおしてくれたので
間違いありません。

猫はもう居ないのに。

ただ
何故か
それから

我が借家には
実に様々な猫がやたらと
訪れるようになりました。

白猫、黒猫
サビにブチ

仔猫から年寄り猫

あらゆる猫がなぜか
散歩にやってくるのです。

しかし

あのケガ猫

ハチワレ猫だけは二度と姿を見せませんでした。

私がハチワレを好きな理由は
ここにあります。

いつ帰ってきても良いように
常に冷蔵庫と鞄の中には
魚肉ソーセージ

そして

いつしかそれは
私の買い物の定番となって
いたのでした。


【完】

根の国のマウシカ

なにか
あとあとになると
私の性格上

書かなくなりそうなので
今晩中に一気に。

さきほど
たまたまつけた
テレビのワンシーンで
ハチワレ猫を若い男優が
泣き声を出しながら
抱きしめていましたが

私とあのハチワレ怪我猫に
そんなベタベタとした友情はありません。

もし
再会したとしても
言葉もなく

抱きしめることもなく

ただ
魚肉ソーセージを差し出して

少しだけ
笑うかもしれませんが。

根の国のマウシカ

追記3 完結しました。

  • 随筆・エッセイ
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-08-09

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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