前夜

ある夜
廃れた小さな病院の
廃れた小さな寝台で
管に繋がれた祖父が横たわっていた
眼をさました祖父から
細く力を失ったような隻腕で
葡萄の缶ジュースを貰ったことを憶えている
暗い病室は外の風の音につつまれて
どこを見渡しても侘しい光景が拡がっていた
汗を滴らせる缶だけが生きているように見えた
誰一人、声を発する者は無かった

前夜

前夜

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-08-08

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