前夜
ある夜
廃れた小さな病院の
廃れた小さな寝台で
管に繋がれた祖父が横たわっていた
眼をさました祖父から
細く力を失ったような隻腕で
葡萄の缶ジュースを貰ったことを憶えている
暗い病室は外の風の音につつまれて
どこを見渡しても侘しい光景が拡がっていた
汗を滴らせる缶だけが生きているように見えた
誰一人、声を発する者は無かった
前夜
ある夜
廃れた小さな病院の
廃れた小さな寝台で
管に繋がれた祖父が横たわっていた
眼をさました祖父から
細く力を失ったような隻腕で
葡萄の缶ジュースを貰ったことを憶えている
暗い病室は外の風の音につつまれて
どこを見渡しても侘しい光景が拡がっていた
汗を滴らせる缶だけが生きているように見えた
誰一人、声を発する者は無かった
前夜