殺人道路

バンプ

 小向町。山に囲まれた小さな集落。秋の稲穂が躍る頃に、大きな出来事が町を揺るがした。
 市政の再開発計画。その中に大きな街とオフィス街を結ぶ高速道路計画があった。その高速道路は町人たちの頭上にできる予定だった。つまり、町の真ん中に高速道路が敷かれる計画であった。
 町人たちは揃って反対運動を起こした。町ぐるみの運動であった。市街へ出向いてはデモや、反対署名を配ったりとそのエネルギーは目を張るものだったと感じる。
 自然が汚される、騒音被害、そして何より何軒かの住人立ち退きが町人たちを奮い立たせていた。
 市政も断固としてその反対運動は聞き入れない。小向町を迂回し高速道路を作ろうとすれば、ダムや湖の上に建つことになり、建設費が何倍も膨れ上がるという。
 最早、町人と市政の対立の激化は避けられず、緊張が解けない日々が続いた。
 だがその状態は突然終わりを告げた。
 小向町の第三家が一つである、佐々木家が市政との交渉を呑んだのだ。佐々木家は脅しにも似たやり方で住人に立ち退きを強制させ、高速道路計画を進めた。
 当然町人は佐々木家を目の敵にした。市政に向かっていたその矛先が佐々木家へと向き、溜まっていた怒りは形となった。
 佐々木家はたちまち町人から差別のような言動をされ、着実に追い込まれていった。佐々木家の敷地内には町人が投棄したゴミで溢れ、罵詈雑言が書かれた紙で溢れていた。それはもう酷いものだった。
 佐々木家が何人も自殺をしたのは、そう不可思議なことではなかっただろう。
 今でも首を吊り揺れていた両親を、僕は覚えている。
「許せない」
 あの道が無ければ、平和なままだった。
 あの醜い人間どもがいなければ、幸せなままだった。
 ほら見ろよ。高速道路の開通記念だって、道の上に町人こぞって集まって、笑顔を見せてやがる。
 これで町が盛り上がるね、だとか。住人増えるといいね、だとか。自分たちが殺した人たちを考えることもなく、笑顔を見せている。
 許せない、許せない。あいつらは全部、敵だ。
「死んじまえ」
 彼らの足元に置いた爆弾のスイッチを強く強く、握りしめていた。

殺人道路

殺人道路

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • 全年齢対象
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