火が来るぞ

日口国都

火が来るぞ

火が来るぞ

火が来るぞ

火が来るぞ

男は長い階段を登る。塒が巻く長い道を上り詰めた。暫くして、白いシャツに黒い染みがある事に気付く。男はハンケチを徐に取り出し、黒を擦るように拭う。しかしそれは、油性の様に脂っ気を持つ黒で、服に付いたそれを拭いきれてはいなかった。

男が辿り着いたのは、低いビルの屋上だった。低い雲も青い空も虹色の野花も人も、それぞれ男に向いていた。自然が放つ空気には金切り声のせいでピリピリと震えていた。

男はそのままその場に座り込んで下を見た。

老婆は鼠になった。姦し娘は蜘蛛の糸の様に空へ、意図も簡単に高く舞い上がるだろう。

鳶だか猪だか、苔だろうがプランクトンだろうが、男の目には森に見えた。

男の目には、その深さは見えなかった。

男の咽喉が精一杯震える。男は喋った。

「私はどなたですか。しかし私には男である事が分かります。彼は誰ですか。彼女は誰ですか。私は知りません。彼は誰ですか、彼女は誰ですか」

「私は私である以上、私はあなたがたとは違います。あなたがたはいつか自分を見返すでしょう。だから私はあなたより大きく、もっと大きく。もっと大きく。もっと大きく。

私はあなたがたを見下すでしょう」

路上では風が通り抜ける様に人が走っていた。伽藍堂のビルからは光が突き抜け、やがて火は空に目掛けて立ち上がった。男の白いシャツの黒い染みから素早く着火し、火は既に男を飲み込んでいた。何よりも大きく、俄然恐怖が湧き上がる程、男は巨人の様に人を見下していた。

地上にいた人は必死になって走っていた。

“火が来るぞ!”

“火が来るぞ!”

“火が来るぞ!”

“火が来るぞ!”

“火が来るぞ!”

火が来るぞ

火が来るぞ

人は必ず貪欲です。 貴方のエゴは貴方自身を破壊していませんか?

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted