ペースト

ペースト

   






日々を落とします。

なんにもできない無力なわたしは、ただペーストしたファイルを並べています。



あっけなく行ってしまいます。白い壁際のグラジオラスをなくしたのは、いつの部屋でしょう。いつもさりげなくお別れです。

わたしが言葉を組み立てる前に、わたしが電車に乗せたわたしの向こう側が、ずうっと息の音を残して、がちゃんと連結された貨車になって行ってしまうのが見えます。

夏の服に着替えるのは命がけです。短い命を見る思いでわたしは夏を迎える。うしなうものたちを弔うのは、わたしが生きていないような原っぱです。

一年がすぎていく間に幾つもの弔いが堆積していくことでしょう。ペーストしたファイルは黙っているけれど。決して告げないけれど。



夜に沈む前に白い月をなぐさめます。

わたし、見ています、誰も泣かないで。

涙を擦る音がしたら、誰かが生きている証なのです。



わたしはここにいます。


  

ペースト

作者ツイッター https://twitter.com/2_vich

ペースト

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-07-30

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