夏は、ゆううつ
桜の花びらは、埋めた。
どうか、だれも、掘り返さないでと祈る、梅雨が明けた頃の、公園は、子どもで溢れていて、ああ、夏休みか、と思う。
恐竜博に行きたい、と呟きながら、かき氷を食べる、おまえの、右耳のピアスは、青い。
空よりも青く、海よりも青い。
どうしようもなく、青いから、少しだけ、泣きたくなる。
(夏よ、はやくおわれ)
おれは、いつからか、春の化身。
いまは夏なので、しずかに、生きている、おれを、おまえは、つまらないやつだという。
かき氷、花火、海水浴、キャンプ、お祭り、ロックフェス。
つめたいサイダー、汗をかきながら食べるカレーライス、うるさいくらいの蝉の声、ばかみたいにクーラーのきいたコンビニ。
つぎの春までは、おとなしくしていようとする、おれを、おまえは、強引に、外に連れ出して、然して興味のない、夏の楽しみ、というやつに付き合わされる、日々。
おまえは、夏の道化。
秋になれば、あの、名も知らぬ花のように、萎れ、横たわり、眠るのだろう。夏の残滓を、どこかに隠して。
夏は、ゆううつ