熱帯夜

体のうちから這い出した蛇が首元にまとわりつくような、じっとりとした暑さで目を覚ます。回らない頭で手を伸ばし、ヘアゴムを探し髪の毛をまとめる。勢いで布団の周りに積み上がった本の山を倒した気がするが、いつもなら気になって仕方がないその音もどこか遠く気怠げに聞こえる。
ピアスに絡まった髪の毛の主張が激しい。つま先に畳のヘリを感じて歩く。襖に頭をぶつけて少し退がる身体。わずかに開いた先から忍び込む冷気にぶるっと震えると、両の手で勢いよく襖を開けた。跳ね返る音はしない。やはり寝起きは力が出ない。そのまま頭から倒れこむように水に潜る。寝起きで火照った身体の毛穴に、シワの隙間に、ピリピリと水が染み込む感覚を覚えながら、ごうという水の音を聞く。
水中でさえ鼓膜を震わす鼓動に嫌気がさす。いっそ止まってしまえ、と何度思ったことか。

熱帯夜

熱帯夜

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-07-28

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