あゝ
寂しそうな人が好きでした。
決して満たされない訳でもなかったと思える。
人にも程よく好かれていて得意なこともバイトもモラトリアムも何もかもが普通の基準を満たしていたように見えた。
それでも時折目に入るその人は誰かと話している時もそうではない時も目元がとても寂しそうに見えた。背中が頼りなさげで哀愁すら漂っていた。
フワッと横切る時の香りがあまりにもそっけないもので時折バイト先の匂いとタバコが移ったぐらいにしかわからないぐらいだった。
そしてそのバイト先でも程よく話からかわれ愛されていたようにも思えた。
それでも時折どこか遠くを見てはなんとも言えない顔をしていたのを人づてに聞いた。
ある日花束を買いにきていた。
私のバイト先にだ。彼は予算はこのぐらいで、派手でなければ良い。小さいブーケを作って欲しい。そうポツリと言ってきた。
私の目を透過しそうな目でこちらを見ていた。
彼は私が見てきたことを知らない。だからどんな色で作ろうがなんとも思わないだろう。
参考までにどんな方に贈りますか?色などの希望はございますか?
そう目を逸らして聞いてみれば少し困ったような、恥ずかしそうな声でコソッと、親友に。青を基調にお願いします。
思わず顔を上げるといつもの寂しそうな空気が出てきていた。その瞬間あゝ居ないんだなとわかってしまった。
前に見ていた人もそうだった。大事な人に…そう微笑みながら話してくれたあの女の人も少し泣いていた。
そういう私も同じだ。だからこそ寂しそうな人に惹かれてしまうのかもしれない。そうやって他人を通して居なくなった誰かへの想いを昇華できるような気がして。
あゝ