ルーレットゲーム
まただ。懲りずにあの元首はわけの分からないことを言い出した。
今度は兵器削減条約からの脱退を宣言だなんて。
つい先に難民を隣国に追い返したばかりなのに。
ま、それはこっちの国家だって負けてないね。なにせ単独で対立国に経済制裁なんて始めちゃうわけだから・・・・・・。
世界は確実に戦争の時代へ戻ろうとしているのか?
「さっきから何ふけってんだよ」
椅子に背もたれながら揺れていた私に、からんできたのは同僚の蒔田だった。
「世界平和を考えてるの」
そう言いながら私は天井に貼り付けられたボードの合わせ目を、あみだくじのように眼でなぞっていた。
「おいおい、どうしたんだよ。急に」
心配する蒔田の声はどこか笑っている。
この瞬間にも世界では争いが起きているんだ。
「世界との協調より自国優先。各国が、まるで悪い選択しかないルーレットを回して、政治を決めているみたいだ」
天井でゆっくり回る扇風機に視線がたどり着いていた。
蒔田が無言になったので顔を向けると、あごに手をあてながら考えている。
「意外と事実だったり」
えっ、と聞き返す私に蒔田はかまわず話す。
「噂では、実は・・・・・・」
もったいぶるように蒔田が間を取る。
「宇宙人が陰で世界の首脳たちを動かしているって。彼らは、ゲームをしているんだ。ルーレットゲームをね」
「ははは」
私は思わず笑ってしまった。だってこのままでは。そう、このままでは、
「世界は第三次世界大戦が起きて滅んでしまう。ゲームオーバーだよ」
蒔田に叫んでいた私だった。蒔田が口角を上げて笑う。
「ちがうよ。宇宙人のゲームでは上がりなんだって。第三次世界大戦が」
ルーレットゲーム