不思議なこぶたのずきん

お嬢さん、どこへ行くのですか、と

大きなバラが尋ねる

ゆるやかなカールを巻いた金髪の少女は

今日はこぶたさんとパーティなの、と笑顔で答える


そんな風にゆっくり話していると、小さなうさぎが一匹

時計を持って目の前を走る

それを見るなり彼女は走って去っていった



ここには、ある三兄弟が仲良く暮らしている

大きなレンガ造りの家

もう既にお昼の支度は始まっていた

「お兄さん、花瓶はもう少しこっちに...」

「いや、ここがいいだろう」

「じゃあ間をとって僕の目の前にしようか」

異常な程懸命に支度をしている三匹のこぶたの耳には

インターホンの音が聞こえた


その途端三匹は着崩したタキシードを慌てたように着直し

ドアを開けると

くるりと可愛い目をした少女を迎えた



お昼も終盤

一人と三匹で真っ赤な色をした苺の乗ったタルトを食べながら笑い合っていた

すると少女は、最近身の回りで起こった、とても面白い話を聞かせてくれた

ある日叔母の家へ行くと、桃色のずきんをかぶった狼が出てきて危ういところを

近所の猟師達に助けてもらったと言う

そんな話をすると、三匹が思い出した様に話し始めた

この間のこと、末っ子と真ん中のこぶた達の家が吹き飛ばされてしまったと言う

そこで仕方なく兄の家で三匹暮らしている、なんて話終えると

災難でさえ一人と三匹の間では笑い話になった



これまでにこんなに楽しいことはあっただろうか、と

一人と三匹は満足げな顔をし、お開きとなった



帰り道、赤いずきんを脱ぐと少女は

手に持っていたりんごを落とした

そのりんごはころころ転がり

大きな木下の暗がりへ消えた

少女は不思議に思い、その木下を探索すると

大きな穴があった


小さな叫び声と小さな好奇心を一緒に持って、少女は暗がりへ消えた



お開きとなったお茶会の後片付けをしていた三匹

一匹が皿を洗っていると、台所の床の一つのりんごに気づく

そのリンゴをかかんでとろうとしたこぶた



一瞬寒気がした一匹のこぶた

机を拭いていると、小さなピアノの上にりんごがあることに気づく

そのリンゴに懸命に手を伸ばしたこぶた


庭で一つのりんごが音をたてて落ちた

庭の手入れをしていたこぶたは、リンゴに気づく

よっこいしょ、とかかんでとろうとしたこぶた


明るい声が聞こえれば腰をあげると

そこには一人の金髪の少女

こんにちは、と微笑むと

その途端、目の前が真っ暗になったこぶた



大きな穴を眺める金髪の少女



「うさぎさん、お茶にしましょう」

不思議なこぶたのずきん

不思議なこぶたのずきん

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-20

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