愛し恋

。.ʚAnzyɞ .。

  1. プロローグ
  2. 再会と悪夢① side kanata

※BL作品ですので、苦手な方はご注意下さい。

中学から高校上がる頃に書いていたお話です。ガラケーのデータが吹っ飛ぶ前にこちらへと、手直しを加えつつ移植中です(笑)

【お知らせ】
「プロローグ」手直し完了しました!!

プロローグ

『レンくんとカナタくんは本当に仲良しねぇ。』
保育園の頃、先生達は僕等を見ると決まってこう言った。そして僕の右手をぎゅっと強く握りしめながら、(レン)も決まってこう返すのだ。

『オレ、大きくなったらゼッタイカナとケッコンするんだ!な!?カナ!!』

満面の笑みを浮かべる恋とあの日の約束を、今でも僕の脳は鮮明に記憶している。いつだって、瞳を閉じればあの笑顔が瞼の裏に映し出される。耳を澄ませばあの無邪気な声が聴こえてくる。
そんな純真だった恋は、成長するにつれてどんどん大人びていった。見た目も、考え方や行動も。それに比べて僕は何もかもが子どもで、埋まらない2歳差への焦りと置いていかれる不安ばかりを募らせていた。

そんな悩める春の日だった。

愛大(カナタ)、100歳まで一緒にいような。』

今思えばちょっと笑えてくる告白。だけど僕にとってはどんな言葉よりも嬉しかったし、幸せになれる魔法だった。だからずっと一緒だって、絶対離れないって僕も心に誓ったんだ。

なのに、どうして裏切るんだよ。
アンタ、最低だ。

告白から半年が過ぎたくらいから、恋が僕を妙に避けるようになった。
そして、見てしまったんだ。一番見たくないものを。
あの頃僕が、もっと大人だったら恋のことをちゃんと理解してあげられたのかもしれない。けれどやっぱり僕はまだまだ幼くて、それ以上に…恋と向き合って自分が傷付くのが、怖くなった。

だから嘘を吐いた。

夏を迎える準備を始めた空から絶え間なく雨が降り注ぐ時期、僕は恋との関係に終止符を打った。

好きだった恋も、自分も騙して。
僕は、もっと最低だ。

それから1週間も経たないうちに、恋は忽然と姿を消した。

再会と悪夢① side kanata

「はぁ…やっぱデカイな。」
周囲の反応など構いもせず呟いた僕が、ここ蘇芳学園(スオウガクエン)に足を踏み入れるのはこれで2度目になる。
1度目は外部入試の当日だった。あの時は一応それなりに緊張していたので気付かなかったが、こうして平常心で見るとこの学園が平凡な学生生活を送るにはいかに似つかわしくないかが伺える。
校門は無駄にエレガントだし、そこから昇降口までの距離はやけに長いし。

おまけに校舎はまるで英国の古城風とか、意味分からん。

そんな訳で晴れて今日から通うこととなった我が学び舎は、附属の幼稚園・小学校・大学まである中高一貫の私立高校だ。
中等部までは一般の学校と同じような教育課程だが、高等部からは少し特殊なコース分けがなされる。国内外の名門大学進学を目的とした特別進学コース、一流のスポーツ選手を育成するトップアスリートコース、既に芸能界や華道・茶道・絵画などの多岐にわたる分野で活躍している者専門の文化芸能コースの3つ。
その為、集う生徒の大半は超ド級セレブのご子息ご令嬢ばかり。
どうしてそんな学校に僕みたいな一般ピープルが血迷って入学したかと言うと…。

『カナちゃん、悪いんだけど高校は蘇芳(スオウ)じゃないと認めないからね。』
ニコリと微笑む母の無責任な衝撃発言。
『いや…母さん蘇芳はちょっと、レベルが…』
『大丈夫よ!カナちゃんの成績なら。それにお母さんね、学ランはもう見飽きちゃったから蘇芳の制服を着て欲しいの。冬服は蘇芳色のブレザーで格好良くって、夏服は爽やかな白が基調で素敵なのよぉ。きっと似合うわぁ~。』
目を細めてうっとりとした表情で想いを馳せる母に、もう反論する気力すら奪われた。

それにあの、レベルっていうのは金銭面の話なんだけどね。

とも言えなかった。
何を隠そう、この着せられている感が半端ない母ご所望の制服と通学カバンの値段がえげつない。どこぞの有名クリエイターがデザインしているとかで、学園で身に着けるもの全てがやたらと高額だ。
それを一式新品で揃えたのだから、大変な金額になっている事はまず間違いない。
他にも一般の学校では考えられない行事のおかげで出費がかさむと、風の噂で聞いた覚えがある。
決して貧乏ではないが大金持ちでもない。これから馬車馬のように働かされる父が哀れでならなかった。

まぁ父の今後はさて置き、校内までの道程を思いっきりビクつきながら歩いて来た僕はセレブ生徒達から訝しげな視線を向けられていた。

スゴい嫌だ…完全に場違いじゃん。

そんな小言は心の奥にしまい込み、はぁ…と今一度ため息をついてから覚悟を決め教室を目指した。



◆❖◇◇❖◆

入学式直前特有のざわつく教室に到着すると、僕の存在に気付いたクラスメイト達のおかげで更にざわつきが増した。
というのも、この学園の外部入試は難易度が非常に高く僕のような外部生は相当珍しい。

もはや珍獣扱いだろうな。

しかも大多数の生徒は附属幼稚園からの幼なじみな上、高等部のクラス分けは1年次から一律で基本的に変わることがない。
大まかなクラス分けはA・B・Cクラスが特進コース、D・Eクラスがアスリートコース、F・Gクラスが文芸コースとなっていて、そこから各コース別に成績優秀者から昇順で細かいクラスへと割り振られる。
先程から何故こんなに学内事情に詳しいのかと言うと、僕が困らないように色々と吹き込んでくれた情報通な母のおかげだ。

程なくして現れた担任の先生が簡単な自己紹介を行った。その後、廊下へと整列してAクラスから順に会場である大講堂へと入場し、入学式が始まった。
式次第通り何事もなく順調に進んでいたが新入生代表者の名前を進行役の先生が口にした途端、今度は講堂内の全校生徒がざわつきだす。あれが噂の特待生か…と。
「新入生代表挨拶1年A組、宮津愛大(ミヤヅカナタ)。」
「はい。」
噂の何とやらは、僕。
特待制度で学費が免除されれば我が家の金銭的な負担を少しでも減らせるだろうと軽い気持ちで猛勉強をした結果、外部入試史上歴代最高点を叩き出してしまったらしい。
そして光栄にも新入生代表挨拶に抜擢された訳だ。
ざわつく中、どうにか大役も果たし無事入学式を終えた。けれど、このセレブ集団の中で噂になってしまった一般ピープルが幸か不幸かは…。

今は考えないことにしよう。

大講堂からまた教室へ向かう途中、クラスメイト達は生徒会長挨拶を副会長が代わりに行ったことを何故かしきりに残念がっていた。


教室へ戻ると、残りの時間はLHRだ。
担任は僕の前に座っていた生徒がいない事には触れず、副担任の紹介をしている。体調不良だろうかと考えていたタイミングで、隣から声をかけられた。
「なぁ。もしかしてアンタが外部入試歴代トップの特待生?えーっと、名前は確か…カナちゃん!!」
横を見れば茶髪で童顔な生徒が、入学式ほとんど寝てたんだよね〜と無邪気に笑いかけてきた。
僕も人のことを言えないほど童顔だが、やはりそこは流石セレブ。童顔なだけではなく、はっきりと整った目鼻立ちからは華やかさが滲み出ている。いわゆる美形と言うやつ。
「うん、まぁそうみたいね。」
どこでツボったのかは分からないが、高らかに笑われた。
「何だソレ!?自分のことだろ?あたし、神城聿流(カミシロイチル)。呼び捨てで構わないから。ヨロシク!!」
ベリーショートの髪と荒い言葉遣いで勘違いしそうになった事実を、フランクな彼女なら受け入れてくれる気がして正直に打ち明ける。
「こちらこそ宜しく。てか、初対面なのにごめん…一瞬男子かと思った。」
「失礼だな!ホントに!ま、あたしにとって性別とかってどうでも良いことだし。それにもう言われ過ぎて慣れっこ。」
そう笑い飛ばす聿流は恐らく僕なんかよりずっと男前だと確信した。
それからは担任の視線を軽く受け流す聿流の一方的なマシンガントークに圧倒されていた。だが、隙を着いて気になっていた素朴な疑問をぶつける。
「今更だけどさ聿流…入学式前と席、違うよね?」
「マジで今更だな。あたし目が良いからさ、葉山と席変わったの。」
そう言いながら聿流が指し示す方を見ると内気で真面目そうなメガネの男子生徒が一番前の席に大人しく座っている。彼の雰囲気からして、恐らく強引に替わったのだろう。


そんなこんなでいつの間にかLHRも終わっていた。
帰り支度を始めると、途中から教室に入って来た保護者達の中で一際盛り上がっている集団の中心人物が僕の名前を呼ぶ。
「あ!カナちゃん♪ママこれから皆さんと親睦を兼ねてランチに行くけど、一緒に来る?」
セレブ集団の中にいても、圧倒される事の無い母である。
「う~ん…僕は遠慮しとく。」
「そお?残念ねぇ。じゃあ気を付けて帰るのよ。お昼ご飯は冷蔵庫の中にあるからチンして食べてね。」
一瞬寂しそうな顔をしたがすぐに切り替えた母は、セレブな親御さん方数人とご機嫌で去っていった。
その状況を呆気に取られた様子で見ていた聿流だったが、早々に正気に戻り率直な感想を述べる。
「うわぁ…嵐のようなお母さん。しかもカナちゃんと顔そっくり。」
勘違いして貰っては困るので補足を付け加える。
「顔だけね。性格は父親に似て地味で質素だから、僕。」
「自分で言って悲しくない?それ。」
「全く。」
「あっそ。ま、けど外部生の保護者っていつもだいたい浮いちゃってて大変そうだけど、全く心配なさそうだな。」
「母さんコミュ力の塊だから。いや、もはや権化かもしれない…。」
「間違いないわ。」
二人して激しく頷きつつ、帰り支度が完了したカバンを持ち上げる。すると聿流が顔を覗き込んできた。
「やっぱもう帰るの?部活見学も行かないんだ。」
一般の学校と同じように入学式後に授業はないが、多方面への人材育成を目的としている為、部活動は普通に行われている。
「うん。別に入りたいものも無いし。」
僕自身スポーツは好きだし、中学時代だってサッカー部に入るぐらいには得意だった。けれどそれも、色々あって途中からは俗にいう幽霊部員となっていた。
少し眉間にシワが寄った僕を、不思議そうに見ていた聿流だったが、あ!と何かを思い出したように切り出す。
「じゃ、ヒマでしょ?ちょっと付き合って。」
可愛い笑顔を浮かべてはいるが腕を組む力は女子とは思えない程凄まじく、ほぼ強制的に引きずられながら教室を出た。
「なぁ聿流、どこ行くの?」
「ん〜?たぶんアイツあそこに居るだろうから。まぁついて来なよ。あ、ついでに校内も案内したげるからさ♪」
アイツって誰ぇ〜?と聞きながら聿流の後に続く。



◆❖◇◇❖◆

そうして行き着いた先は何やら洋風な両開き扉の部屋。教室ではなく部屋と呼んだ方が正しいと思うのは、きっと僕だけじゃ無いはずだ。
デカい扉の上には"生徒会室"の文字。聿流はノックもせず堂々と入っていく。慌てて後を追うと、そこはもう学校とは思えない場所だった。

何?これ。生徒会室?もう教室の域越えてんじゃん。広すぎ…。

入って直ぐ目に飛び込んできたのは、見るからに高級そうなソファーとテーブル。その奥にはこれまた高級そうなデスク。生徒会長用だろうか。

大企業の社長室かよッ!?

そんなツッコミが口をついて出そうになったが、どうにか飲み込んだ。
冷静を装いながら観察を続けると、部屋の壁はすべて本棚で埋め尽くされていることに気が付いた。ここまでするのなら、図書室の存在意義は果たしてあるのかと考えさせられる。
教室の造りでさえ普通の学校より豪華で落ち着かないのに、もうこうなるとため息しか出てこない。
「あっ!やっぱここに居た!!」
部屋を物色する僕を他所に聿流は目標を発見したようだ。声がした方へ振り返ると、さらに唖然とした。

なっ、ま、まだ奥があるのか?もう怖いわッ!

奥部屋のドアを開けっ放しで聿流が誰かに声をけている。どうなっているのか怖いもの見たさで、聿流の元へと近づく。そして中を覗いて、一瞬パニックになった。
「っ!!」

ありえない。ベッドがある。しかも結構大きい。

この心の声が漏れ出ていたなら、きっと激しく棒読みだったであろう。
問題はベッドのサイズなのだが、キングに限りなく近いクイー…。いや、ダブルだと勝手に思い込むことに決めた。

スケール違いすきだよ。もうムリ。ツイテケナイわー。

胸中で百面相している僕のことになど気にも止めず聿流は、ベッドで寝ている誰かに声をかける。
「セツー。雪ちゃーん。……おい、雪っ!いつまで寝てんだっ!起きろよ!!」
寝ている生徒を揺さぶり起こす。少しの間の後に唸るような声が聞こえてきた。
「…聿流、うるさい。静かにしてよ頭痛いんだから。」
相手はとてつもなく不機嫌な反応だが、聿流の辞書に容赦という文字の記載はないようだった。
「頭痛いなら、保健室行くか早退しろよ。"レン"さん来ても知らねぇぞ!シメられても助けてやんないからな!!」

"レン"

僕にとって不穏な名前が耳の中でこだまする。条件反射のように顔色が変わったらしく、さすがの聿流もそれには気付いた。
「ん?カナちゃん大丈夫?顔、真っ青だけど。」
「ちょっと気持ち悪くなっただけ。大丈夫だよ。」
ベッドから起き上がった雪と呼ばれる生徒が目も合わせずに言い放つ。人を寄せ付けない冷たい空気感を漂わせて。
「…誰?部外者は立ち入り禁止。」
聿流とはまた違った、と言うより真逆の儚げな童顔美形だ。漆黒の髪が真っ白な肌によく栄えていて、そのコントラストが冷たい雰囲気をより一層引き立たせていた。
彼の様子など一切お構いなしに、聿流
「そんな言い方すんなって!あたしが入れたの。宮津愛大、噂の特待生だよ。そんでカナちゃん、コッチは同じクラスの舞園雪。」
「あ、確か僕の前の席の子だよね?入学式終わってから教室にいなかったから、体調悪いのかなって心配してた。」
「!」
原因不明の気持ち悪さを抑えながらの自己紹介に、何故か驚いた様子の雪は僕の顔をじっと見つめる。すると彼を覆っていた冷たさがスっと消え去り、僕の名前を呟いた。
「宮津…愛大。」
「うん。雪くん、これからよろしく。」
更に聿流の明るい声で場が一気に穏やかになる。
「そっか!2人席前後じゃん。雪、途中からバックれてたのによく覚えてたな、カナちゃん。」
「いや、入学式前めっちゃ綺麗な髪の子が座ってるなぁ~って思ってたからさ。」
しかし穏やかな空気はまたすぐに打ち崩された。

「お前等、この部屋で何してる?」

最後に聞いた頃より幾分か大人びてはいるれけど、馴染み深い声。かつては大好きだったこの声を聞き間違うはずがない。顔を確認しなくたって誰だか分かる。
「げッ!ほら言わんこっちゃない。恋さん来たじゃん!」
「ここは俺のプライベートルームだ。入室を許可した覚えはーー」
相手もこちらの存在に気が付いたようで、言葉を切り僕の名を呼ぶ。
「…愛大?」
とっさに耳を押さえ身体を丸めてしゃがみ込んでいた。異変に気付いた聿流が近寄ってくる。
「……イ…だ、」
声が掠れて、泣いていた。
「ん?カナちゃん、もう一回ーー」
聿流の問いを遮って泣き叫んだ。
「…嫌…だ。 …嫌ッ!何で…」

ナンデアンタガココニイルッ!?

最後まで言葉を紡ぐことなく、僕はそこでフッと意識を失った。

愛し恋

愛し恋

幼なじみだった愛大と恋は、互いの想いを打ち明け恋人という関係になる。しかし、ある出来事をきっかけに2人は別離した。 それから2年半後、高校生となった彼らは再会を果たし止まったはずの運命の歯車がまた動き出す。 この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。

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更新日
登録日 2019-07-01

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