Staras 宙

Shino Nishikawa 作

Staras 宙

誰もが、家族を守るために、強くなるのだから。

Staras 中
ジョアンナとキキは、まだ別れてはいない。
デジィの方は、セレクトショップを二週間で辞めることにした。
全然、お客が来ないので、怖くなったのだ。
従兄が変な女と結婚したせいか、就職活動がうまくいかなかった。

ジョアンナは、キキと別れていないが、あまり会ってもいなかった。
ジョアンナは、だんだんと自分を想ってくれる男の人達の存在に気づいて、気を使ったのだ。でも、それが、とても辛い事だった。
『キキと別れたい。』
ジョアンナは、休日でも、スーツを着て出かけるようになった。
それでも、いつでも、心はキキとつながっている気がして、本当は別れたくはなかった。
ジョアンナはビシッと決めて、マンションを出たが、人からジロジロ見られて、少し切なくなり、スーパーに寄って、買い物をして、家に戻った。
気分が悪くなり、ソファーに横になった。
でも、自分が静かにこうしている事が、大人になったなと感じた。
長い間、一人で怒る癖が治らなかった。
夕方、キキと会えたら、どんなにいいだろう?
でも、スーツを着る機会には、本当は恵まれていないのに、スーツで行ったら、みっともない。
テレビをつけると、スワン大統領が映った。スワン大統領のことを、ジョアンナは好きだ。
少しでも認められたくて、スーツを着るようになった。
でも、会える機会なんてない。
それでも、一度、夢の中で、スワン大統領のファーストレディーをした。
話して見ると、人情味の溢れる良い方だった。スワン大統領は、温泉饅頭を、アメリカ大統領に手渡した。
アメリカ大統領のオバマは、黒人初の大統領だったので、白いお菓子をあげるよりも良かったのだ。スワン大統領は、オバマ大統領との会談前に、わざわざ日サロに行って、さらに黒くした。
オバマ大統領は、とても優しい口調で、まるで諭しているようだった。
スワン大統領は、英語が苦手だ。昨晩、妖精に通訳を頼んでおいたのに、来てくれない。
スワン大統領は、誰もいない空気に向かって、「おい。」と言ったので、オバマ大統領は身を引いた。
でも、妖精の通訳が来てくれたので、よかった。
妖精は、スワン大統領の膝の上に座って、通訳を始めた。
この妖精は、スワン大統領にしか、見えないはずだった。
でも、オバマ大統領は黙り、スワン大統領の膝を見つめた。
「え‥。」

「いや、なんでもない。」
オバマ大統領は、笑った。

スワン大統領が飲み物を飲むと、妖精が罰サインを出したので、スワン大統領はうなずいた。オバマ大統領には、やっぱり、妖精が見えたみたいだ。
少し、疲れたようにぐったりとしている。
会談は、スワン大統領の成功だった。本当に良かった。
今まで、他の連中が恐れている異世界を信じてきたおかげだ。

「おかげ様で‥。」
スワン大統領は、この言葉をよく使っていた。
おかげ様という言葉は、言われた方が恐縮する言葉である。
ただ、スワン大統領はそれを知って、言っていたわけではない。

ガウルは、ロシアのリンクで、韓国の女子フィギュアスケート選手、ホマレと一緒になった。
「こんにちは。」
細くて綺麗な体で、華麗に踊りながら、ガウルはホマレに挨拶した。
練習中、グローブはかかせない。
もし足がダメになっても、手だけは守りたいからだ。
「うん。こんにちは‥。」
聞こえるか、聞こえないかのような声で、ホマレは挨拶をして、滑り始めた。

ホマレは、大会では魅せてくれるが、練習中は冴えない。

ガウルは、ベンチに座って、汗を拭いた。
リンクには、ホマレしかいない。それをガウルが見ているのは、奇妙な感じがした。
ガウルは外に出て、スマホを見たりして、時間をつぶした。
また戻ると、ホマレはまだ踊っていて、女性のスタッフが2名、滑りを見ていた。
ガウルがベンチに座って、ドリンクを飲み、準備をしていると、おじさんが来た。

フィギュアスケートの選手が、稼げるかどうかと聞かれるとそれは分からない。
自分は、テレビにも出ているし、自分が出るショーや大会は、毎回超満員だし、写真集もカレンダーも売られている。
だから、ガウルは稼いでいる。ガウルという存在がいるだけで、動くお金は10億単位なのかなと予想している。年収を100億円に例えたら、半分をスポンサー企業へあげないといけない。スケート協会にも、お金をとられる。
多分、ガウルで儲けている人がいるのだろう‥。
もしかしたら、ガウルが嫌いな選手の家族なのかもしれない。
フィギュアスケートはお金が必要だ。ガウルは、インドネシア人でも、異世界に選ばれし王子だったから、滑ることができたのだ。

結局、ガウルが一番輝いた年で、年収は5億円となってしまった。
オリンピックで金メダルをとった年でも、3億円である。
以前、よくわからないオジサンが、ガウルの年収は3千万円でいいなと言ったので、少しむっとした。3千万円の年収は、超高給だが、ガウルにしてみれば低かった。
双子の兄のリザは、いずれ、もっと稼ぐ気がする。
ルビーの事はわからない。ルビーの事を考えると、『消えろ。』とか『死ね。』という言葉が浮かんでしまう。ガウルは、体操は出来ないので、やっぱり嫌だった。
それでも、ルビーの年収は、ガウルの10分の一だったので、ガウルはせせら笑った。
ルビーに、『落ちろ。』と睨んでやったら、本当に落ちて、負けたので悲しくなった。

とりあえず、今のガウルはお金を稼いでいるが、全額はもらっていない。
でも、ガウルは特別な人間なので、お金をもっともらって、世界の富豪に並ぶことを夢見ている。
それでも、他のフィギュア選手の中には、借金まみれの人もいる。
ホマレはとても人気の選手なので、年収が10億円とか言っていた。
それは、ホマレのパパが管理している。
ホマレの方が、トワスよりも人気だ。たくさんの広告に出ている。
トワスやメギは、年寄りからお金をもらうために、カメラに色目を使うので嫌だった。
ホマレは違う。お金なんかいらないという表情をする。

前に聞いた話だけど、トワスが、貧乏爺さんから60万円をもらったらしい。
それがどんなに気まずい事だろう‥。テレビに出る時は、出来る限り、貧乏人や障害がある方の幸せを想った方がいいと思う。

ホマレは、とても大変な思いをして生きていた。
だけど、それは、ホマレが非常に狂った子だったから起きた事だ。
普通なら、神様に助けてもらえる‥。

ホマレは養子だった。
「ほら、挨拶しなさい。」
お母さんが言った。
2歳のホマレは、きょとんとした顔で、ササキ夫妻を見た。
「じゃあ、ホマレをよろしくお願いします。」
お母さんは涙ぐんだ。

「ああ、わかった。大丈夫だよ。」
ヨシオは言った。
「あと、どれくらいなの?」
ミナ子が聞いた。
「あと、2カ月です。」
「そんなに悪いの?」

ホマレのお母さんは、末期癌になり、ホマレは、裕福なササキ夫妻の下に養子に出されたのだ。
しばらくして、母親が亡くなったので、ホマレはお葬式に出た。
お母さんはすごく冷たくて、涙がたくさん出た。

それからは、ササキ夫妻の第一養子のジロウと遊んだり、第三養子のミアが来たりして、とても楽しくすごした。
気づくと、ホマレは7歳になっていた。
ホマレより10歳年上のジロウは、進路のことで、ヨシオと喧嘩をしてばかりだ。

「ジロウ、昨日だって遅くなったじゃねぇか。どこほっつき歩いていただ。」
「別に関係ねぇだろ。俺は、親父の本当の子供じゃないんだから。」


ガタガタッ
数日後、ヨシオが、普段使われていない小部屋を開けた。
「へへ、ホマレのお母さんは、この部屋のことまでは、知らなかったか。」
「え?」
その部屋をのぞくと、畳一畳ほどの広さで、木の蓋がしてあった。
ヨシオが聞いた。
「ここ、なんだと思う?」
「えっと‥お風呂。」
「残念、はずれです。ここはね、悪い事をした人に罰をする場所だよ。」
「罰?」

ホマレは、宙に、指でバツを書いた。

「昔、カズに使った部屋を、ジロウに使わせようと思う。」
ヨシオが、ミナ子に言った。
「ええ、あの子はまだ若いのに。」
「大丈夫さ。殺しはしない。」

「あっ。」
ホマレは、見えない誰かにずっと守られていた。
その人が、パパかもしれない。
ホマレはフィギュアの練習をする事を思いついた。
姿が見えないその人との約束で、毎日フィギュアの練習をする事になっていた。

それでも、ヨシオは嫌な感じで笑って、ミナ子に話を続けた。
「カズをやった時はさぁ、カズの嫁さんにしゃぶらせといてから、俺がまず、嫁さんを殺って、その後、カズを殺ったんだ。」

「あの時、嫁さんが、俺にやるって言えばなぁ。」

ホマレは聞こえないフリをして、フィギュアのポーズを決め続けた。



ジロウに罰をする前夜も、その前も、ホマレはジロウに、危険を告げるチャンスがあったが、言わなかった。可愛い彼女と歩いている所を見てしまったのだ。
罰をする前の晩に、メシを食いながら、ヨシオがホマレに聞いた。
「ジロウには、罰が必要だよなぁ?」
「うん、そうおもーう。」
ホマレは、彼女のことを思い出して答えた。
「ほら、みろ。」

「ジロウ、明日、お前に良い物やるでさ、家にずっといろよ。」
ヨシオがジロウに言った。
「分かった。良い物って何?」
「それはお楽しみ。」

次の日、ホマレは少しうきうきしていた。
ホマレは子供だった。それでも、やっぱり、狂っていた。
妹のミアは、まだ小さいので、何も分かっていない。
「良い物って、なんだろう?」
ジロウは言い、階段を駆け上がった。

「ジロウ、来い。」
ヨシオが呼んだ。
「はい!」
ジロウは、しっかりとした返事をした。

「ええ、なんですか、これ?」
「いいから、いいから。お前に良い物、見せてやるで。」
「見せてやる?くれるんじゃないんですか?」

ジロウは罠にかけられた。
「邪魔邪魔。」
ヨシオは、ホマレを罰部屋の前から、どけた。

「うぅ‥どうして、どうして‥。」
ジロウは、蓋から首から上だけが出た状態で、ヨシオをうらめしそうに見上げて泣いていた。
ジロウは服を脱がされ、性的な行為をミナ子からされた。
ジロウの顔の前に、ヨシオが自分の堅物を差し出した。
ジロウは、耐えて、それをくわえるしかなかった。
ジロウは、トイレを漏らしてしまった。

しばらくして、ホマレが来た。
「お兄ちゃん、どうしたの‥?」
「ホマレ。助けてくれ。」
「うん。助けてあげる。ホマレ、警察を呼んでくるね。」
「いや、警察は呼ぶな。大変な事になる。」
「え‥?」
「ホマレ、ちこうよれ。」
「うん。」

アハハハ!
ジロウは、ホマレの腹をなめたりして、ホマレは笑った。
「本当に大丈夫?」
「俺も、ここから逃げ出す方法を、考えてみる。」
しかし、ジロウの両手は、後ろで縛られていた。

深夜、ジロウの足はぶるぶる震えて、ついに大便を漏らしてしまった。

「お兄ちゃん、大丈夫かな?」
ホマレは、一緒に寝ているミナ子に聞いた。
「うん、知らないふりしとき‥。」
ミナ子は眠りながら、言った。
「うん‥。」
ホマレはそっぽを向き、見えない誰かに、ジロウを助けてもらうように祈った。

ドンドンドン!!
「助けてくれ、助けてくれ!!」
「うるさいぞ!!」
ジロウとヨシオの声がした。

ホマレは起き上がって、行こうとしたが、ミナ子に服をつかまれた。
「よしなさい。命がおしければね。」
「ええ‥。」

ヨシオは下に行って、手持ちランプをつけた。
「ああ‥。」
ジロウが大便を漏らしているのを見たのだ。

ヨシオは、ジロウに言った。
「お前のこと、明日殺るでな。」
ジロウは寂しげにうつむいた。

『そんなことない。大丈夫じゃ。』
『今から、わしがボタンを押す。』
その時、ジロウが、天界を信じていて、精霊や神様の存在を信じていたのなら、助かったかもしれない。

朝、起きると、なぜかヨシオとミナ子とミアがいなくて、ホマレは焦った。
急いで、ジロウがいる部屋に行った。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
しかし、ジロウは死んだように動かなかった。
ジロウの目は開いているが、瞬き一つしない。
ホマレは、ジロウの顔をじっと見て、目を閉じようとすると、ジロウはまばたきをした。
「よかった。今、助けるね。」
ホマレは、走って、下に行った。

「ええっ。」
ジロウは裸で、大便があった。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ごめんな。」
「いいよ。」
ホマレは、ジロウの大便を触ってしまった。

「これー!」
ホマレは上に行き、指についたクソを、笑ってみせた。
すると、ジロウも少し笑った。
「パクッ。」
「おえー。」
ホマレは、笑った。
「汚いから、やめろ。」
ジロウも笑った。

「どこにボタンがあるのかなー。」
「下の方じゃない?」
「下の方ー?」

「もしかしたら、手で開けるのかな?」
ホマレは顔をあげた。
ジロウの鼻は、鼻水だらけだが、拭けば綺麗になると思った。

「あっ!」
ホマレはついにボタンを見つけて、ジロウの首は開放された。
ジロウは倒れた。

「お兄ちゃん!」
ホマレは、ジロウに駆け寄り、しばらくの間、何度かキスをした。

気づくと、ヨシオとミナ子とミアが帰ってきていた。

ホマレは、ミナ子によって、ジロウから離された。
ジロウは、ヨシオに腹を何度か殴られ、死んだ。

ヨシオのシャツに、ジロウの吐しゃ物がかかった。

ジロウのお葬式があり、親戚の若夫婦が来た。
ジロウと何か話し、若夫婦の下に、ホマレとミアは行くことになった。

しかし、ホマレは、ヨシオとミナ子に情が移っていたので、定期的に、何度も会いに行って、しばらくの間、一緒に過ごしたりした。
ヨシオは、ジロウを殺した時のシャツをよく着ていたので、あの時のことが嘘かと思った。

ホマレの成長にともない、ヨシオは、ホマレの裸を見たがった。
仕方なく、ホマレは、ヨシオに裸を見せた。

ホマレには、もう良い若夫婦がいるし、パパはホマレを本当に愛していた。
だから、ヨシオとミナ子のことなど、もう無視すればよかった。

ホマレは狂っていて、それが出来なかった。
ホマレは、ジュニアの部で、世界一をとった。

「ホマレ、来い。」
ヨシオは、ホマレを呼んだ。
「はーい。」
「一緒に寝てくれ。」
「うん。」
「あの衣装、持ってないの?」
「え‥?ピンク色の?」
「うん。それを着てくれないかな?」
「ちょっと待って。」

「おばあちゃん、おじいちゃんが、ホマレのピンクの衣装見たいって。」
「そうかい。じゃあ、見せてあげなさい。」
ホマレは、それを見せた。

次の日、可愛かったその衣装は、なんとなく色あせて見えて、ホマレがハサミをいれた。
しかし、その衣装をまた着ないといけなかったので、ホマレは衣装屋さんに、もう一度作ってもらえるか心配になった。
「そんなことできるわけないじゃない。あんた、ばっかじゃないの?」
お母さんは言った。

それ以来、ホマレは出来る限り、同じ衣装を二着作ってもらうことにした。
自分のお金を上乗せした。ホマレは若くしてお金を持っていたので、ヨシオに会いに行く事を、止められなかったのかもしれない。

ミナ子は風俗で快楽を得たり、ヨシオもデリヘル嬢を呼んだり、母親も若い男と浮気をしたので、ホマレは、まわりから笑われて、辛い思いをした。
パパは、ホマレを愛していたので、もう一度、信じればよかったのかもしれない。

ホマレはオリンピックに出た。
そして、銀メダルをとった。
自分は、一流のアスリートになったと感じた。
腹筋も割れている。ヨシオが体を見せろと言った時、割れた腹筋を見せて、どんなものかと思ったが、ヨシオはただ、「上出来。上出来。」と言って、笑った。
銀メダルの時の衣装は、偽の同じ衣装があったので、保守した。
しかし、ホマレは、その時と同じ衣装で、ヨシオと寝た。

大人になったホマレは、少しフィギュアをやめたり、知り合いになった人に嘘をついて、都会で遊んだりした。
しかし、性的な誘いは断った。男子達は、作り笑いをこわばらせた。
やっぱり、本物のアスリートなんだなと実感した。
それでも、ホマレは、ヨシオと悪い事をしていたので、断る事が出来た。

ホマレは狂っていて、ヨシオのことが好きだったのかもしれない。

ホマレにとって、フィギュアの世界の舞台は、当然だった。
フィギュアが出来ない人のことが、本当におかしくて、大笑いした。
それでも、落ちると、本当に痛いと思った。

ホマレは狂っていたからこそ、世界の舞台が当然だったのかもしれない。

二度目のオリンピックの時、ヨシオが体調をくずして、入院していた。
ホマレにいろんな人が手を伸ばしてきたので、ホマレは本当に疲れてしまったが、ヨシオだけを信じることにした。
本当は、ホマレを一番に愛しているパパを信じればよかったと思うが、ホマレは変わっていた。

オリンピックに臨む人は、完璧な準備をした方が良いが、完璧な状態で臨めるわけではない。苦労やストレスがつきまとう。だからこそ、完璧な準備をした方がいい。

ホマレは、オリンピックに近づくにつれ、ジロウとの思い出や、あの時の出来事を思い出した。
ホマレは、パラレルワールドに迷い込んだ。
たくさんの記者がよってくる。もっとパパを信じていたなら、一緒にいて、守ってもらえたかもしれない。
ホマレは、いちいちインタビューに答えるのが辛かった。
ホマレの本当の事情を誰も知らないので、ホマレがつばをとばしてしまうと、ゲラゲラと笑われたし、心ない事や、酷い写真を載せられた。
ホマレの本当の事情は、本当に誰も、知らなかった。

客席に、ジロウの遺影が見えた気がして、ホマレが目をこらしてみると、ホマレのファンの物だった。
ホマレは、病気のファンを可哀想に思わなかった。病気で死ねるのなら、幸せな事だ。
ホマレは、メダルを取れなかったが、特別にホマレ用のメダルをもらった。

ヨシオは頭をおかしくして、遠くの病院に移された。
ホマレは、ジロウが罰をうけた部屋に入って、自分も同じようにしてみた。
ホマレの頭は小さく、その穴を抜けられた。
でも、誰かが、守ってくれたのかもしれない。
ジロウと小さなホマレが遊ぶ姿が見えた気がした。

「お父さん‥、いや、ヨシオ。今まで、ありがとうございました。
私は、ジロウお兄ちゃんに、会いに行きます。」
ジロウの遺影に銀メダルを、すでに飾ってあったヨシオの遺影に特別メダルをかけ、ホマレは、鋭いナイフで喉をさいた。
その瞬間、人生が終わりだと感じた。
そして、みぞおちにナイフを奥まで刺し、死んだ。

「こんにちはー。お姉ちゃん?誰かいるの?」
ホマレの亡骸は、ミアが見つけ、ホマレの人生は終わった。
ホマレは狂っていたが、最初から最後まで、本当に立派な子だったと思う。


ガウルは、自分のしている事に誇りを感じているが、リザがそっぽを向いている時には、虚しく思う。
ガウルとリザとルビーの両親は、息子を自由にしてくれた。
それでも、いつでも想っている。
もしも、母親が、若い男のケツの穴をなめたらどうする?
ありえなくはない。有名人の親がそうなった事は、今までにも百件はあった。
だから、ガウルは、嫌な有名人にも、きつい事を言わない。

リザは音楽を始めた。ガウルのために、フィギュアの世界選手権の応援ソングを担当したかったが、大人びたバンドが担当をする事になってしまった。
与えてくれなきゃ、脚光を浴びるなんて、赦せないよ。
何か、見せてください。
君は、何をした?ああ、もう見えた。ありがとう、もういい。

2年後には、ソチオリンピックがある。
ガウルは、金メダルを見据えていた。これから出場する大会のメダルの色を自分で予測をする。アメリカには、強い選手がいる。彼は何をしたんだろう?
無罪ならそれでいいが、せめて、弱点だけでも教えてくれ。

これから出場する大会のメダルの色は、自分で予測するんじゃない。自分で決めるんだ。
ガウルは、それほどまでに強い選手だった。
でも、あのアメリカ野郎がどう強くなるか‥。それだけが気がかりだ。

ネットニュースで話題のカーリング選手の声が、なぜか頭に響く。
君は、何をした?嫌いな選手の首でも、転がして遊んだか?
ステージに立つなら、神もこなさなければいけないことを、君は知っているか?
ホマレも、トワスも、メドも、神役をこなすことができる。
彼女達は狂っているが、フィギュア以外に出来る神の行動を持っていた。

しかし、なぜ、お前の声は、頭の中にこんなに響いてくる?
カーリング女、お前は何をした?

フィギュアスケートも、何もかも、ステージに立つお仕事は、人間の力だけでは、不可能だ。


ジャカルタ。エドは、ジョアンナがよく撮影しているスタジオに来た。
エドは、マンションの一室みたいな所で撮影をしていた。
最初、そこに案内された時は、何かと思った。
エドは男だし、プロのバスケ選手だ。鍛えているから、卑猥な物を要求されたら、すぐにぶっ飛ばせるが、女子一人でこんな場所は無理だ。

エドは、ジョアンナのスタジオの立派さに、安心している。
モデルの写真が飾ってある。大体はセクシーな写真で、ジョアンナの写真もそうかなと思ったが、違った。はにかんで笑っている写真だ。
タナさんが来た。
「ジョアンナは見た目のわりに、心は子供なんだよ。」
「はい。」
「俺は、ジョアンナの未来を心配しているんだ。」
タナさんは、ジョアンナのことを愛していた。

しかし、ジョアンナの寿命はあとわずかである。その事は、タナさんとエドは知らない。

エドは、撮影をした。
タナさんはエドの写真を見て、腕が綺麗だなと思った。
やっぱり、スポーツ選手だからだろうか?
でも、エドには、特別な女性がいなそうなので、体が綺麗に見える写真でも許そう。

タナさんは、男の写真を選ぶ時、体の線が綺麗に見える物は避けていた。
主婦が本気になってしまったら、自分の責任になってしまう。
自分なら、スポーツ選手の試合中の写真を撮っても、上手く撮れる自信があった。
タナさんは、エドに聞いた。
「次にある、大きな試合、いつかな?」
「えーと、来週、アジア大会の予選がある。」
「ジャカルタで?」
「はい。フィリピンでも試合はありますけど。」
「あのさ、ジャカルタの試合のチケット、俺にくれないかな?もちろん、カメラマンとして会場入りできれば、一番いいんだけどさ‥。ちょっとまだ、コネがなくて。」
「そうなんですか?タナさんなら、すぐに入れそうなのに。」

タナさんは、一般席で会場入りした。禁止されているが、一眼レフカメラを構えても、何も言われなかった。

エド達の応援に、インドネシアの新体操選手が来た。
他のチームメイトが声をかけ、手を振った。
エドは、微笑だけして、何も言わなかった。

ああいう子は、特別だ。
何をしたのかは知らないが、新体操や体操選手に運命の女がいたのなら、自分は確実に、スポーツなんか出来ないだろう。
きっと、練習を見に行って、誰もいない体操の体育館で、彼女を抱きしめて、ゾッとするのがオチだ。きっと、キスは断る。
苦しくなって、病気になって、死ぬにちがいない。


デジィは、昔、精神病で入院した時に、新体操の国際大会をテレビで見た。
演技に力をもらえた。それで、新体操を観る事が好きになった。
そして、自分も、体操か新体操が出来る力を、一度、もらった。
でも、神様に頼み込んで、その才能をお返しした。
そのような神業を手に入れたら、どれほどの代償を支払うことになるか、デジィは知っていた。
デジィの猥褻映像が、ネットに公開される。
両親が自動車事故を起こす。妹が病気になる。それ以上のことが、たくさん降りかかるのだ。
それは、デジィが、その神業をやる必要がないからである。

体操選手のルビーは、幼い頃より体操選手を目指し、鍛えてきた。
体操部がある中学に進学したが、自分はまわりよりも出来なかった。
ルビーは泣いて、神様にお願いした。
「僕も、他の選手みたいに、出来るようになりたいんですけど。」

昔の体操オリンピック金メダリストの霊が、ルビーに言った。
「体操でオリンピックの金メダルを取りたければ、次の事を約束してください。
① 恋愛を一生我慢する。
② 他の者よりも練習をする。
③ 野菜を多く食べる。」
「え‥。それならもうやってるよ。それなのにどうして、僕ができないの?」

「練習が足りないからです。」
「他に、何かないの?魔法の呪文とかさ。」
「ありません。あとは、生まれ変われないとかかな。」
「いいよ。生まれ変わりなんて、最初から信じていないもん。」
「そうですか。でも、今のは嘘です。」

この霊との会話で、ルビーは神の存在を確信した。
神に力をもらうのだから、自分も体操で、神の力を、見た人に与えないといけないと思った。それ以来、ルビーは強くなった。

ルビーは神の存在を確信しすぎて、最初の世界大会で、人前で、霊に話しかけてしまった。霊は答えてくれない。その代わり、海外の選手が、ルビーをじろりと見た。
「ふはー。」
ルビーは、演技の前に、大きく呼吸をする。

鉄棒の演技をしながら、肩に止まっているであろう精霊に話しかけた。
「なんかさー、みんなが俺を真似するんだぜ。」

「ほら、あのドイツの選手も、息をしているだろう。まるで俺みたいにさ。」

「もちろん、それだけじゃないけど。」
ルビーは、着地を決めた。

「いやいや、兄さんは、ポイント高いですわ。」
体操の審査員の神爺さんが、ルビーに話しかけた。
「本当ですか?!」
「本当。ほぼ9割、自分の力でやってくれているよ。」
「神業じゃない‥?」
「うん。兄さんのは、人間の技のみ。」

それ以来、ルビーは、自分を神だと確信した。

ルビーは、特別な選手だ。それぞれの国に、3人はいるのかもしれない。
体操は多くの人が憧れているが、神の力を借りていると分からないと、辛くなるだろう。
ルビーも、リザの職場の男性から脅されて、何度か落ちた。

ルビーがロンドンオリンピックで団体を組むことになる、ダットアが、母親の目を喰った事を、この時はまだ知らない。
「母さんはこの中にいる。」と、ダットアが腹をさすった時、ルビーは完全に、ダットアが母親の目を喰った光景が見えたが、忘れることにした。
人殺しをして、最高の死体遺棄の隠し場所は、動物の腹の中である。
愛する人を喰う行為は、最悪にして、最大の呪いと言えるだろう。
「お前一人でやったのか?」
しかし、ルビーは思わずダットアにたずねてしまった。

神が与える試練がどれほど厳しい物か、ルビーにはよく分からなかった。
ルビーはそれほどまでに、体操をする自分に惚れていた。
最良のオリンピアンへの神が与える罰とは、自分が一番愛する者に、自分の姿が見えなくなる事だ。これは、本当である。だから、愛する者は他の者を選び、罰がさらに深くなる。
ルビーは、愛していた子と恋人の一部始終を目撃した。
ロマンティックだったので、ルビーは気にならなかった。
ルビーには、神がこのような罰を与えたが、ルビーは分からなかった。

体操競技をする自分に惚れていた。

家族を大切にした方がいい理由は、自分の夢を認めてもらいやすくなる事が一つある。
自分の夢を妨害する親友なら、捨てた方がいい。
以前、体操選手で、夢を妨害した親友の首をぶらさげた鉄棒で呪いをした人がいる。
大体、呪いに使う人は、自分を愛してくれていた人なので、虚しく思う。
いや、呪いというのは、大抵は人殺しなので、虚しいだけでは終わらない。

貧しい自分の国を想うばかりに、呪いの存在を知った聡明な青年がいた。
呪いの日をかぎつけ、何度も隠れて一部始終を目撃した。
青年と神様との間に何があったのかは分からない。
しかし、青年は、良いヒーローになれた。
きっと感動するストーリーがある。でも、涙は充分流した。

しかしながら、きつい話を一つ書こうと思う。
女子の体操選手の話だ。

『この球を撃てば、地球は滅亡しない。』
『この技を決めれば、第三次世界大戦は起こらない。』
『この試合に勝てば、貧困が解決する。』
スポーツ選手に、よくあるのかもしれない。
しかしそれは、自分と神様の間の問題と思った方がいい。
大体、世の中の多くの人が、世界の幸せを考えているのだから、その一端にすぎない‥。

女子の体操選手のビョウは、狂った家庭に生まれた娘で、おじいちゃんにフェラした事も、お母さんやおばあちゃんのケツの穴をなめた事もある子だった。
ビョウには、ブナという妹がいた。
「お姉ちゃん、この一家、おかしいよね?2人で逃げ出さない?」
「うん‥。」
それでも、ビョウは、狂った家庭の子だからこそ、体操競技という特別な事が出来るような気がしていた。
ブナも、計算がすごく早かった。

しかし、2人は家族の事を包み隠さず、児童相談所に相談をした。
児童相談所の役員の方が、時々、一家を見に来た。
新しい家を、2人の子供は紹介されたが、家を出なかった。
ビョウは体操競技を始めることにした。
体操のクラブには、最初断られたが、ビョウが技を見せると、入会できた。
しかし、邪魔が入る。ビョウの友達だ。
ビョウは、今まで不幸だったから、体操が出来たのに、みんな分からなかった。
ビョウの一番好きな人は、同じ体操クラブのトアだった。
でも、ビョウは狂っていたので、トアを含めた体操クラブの人達に、自分の一家の事を、包み隠さず話してしまった。
ビョウの一家の事は、インターネットの掲示板に書かれた。犯人はトアだったのに、ビョウはトア以外の男は意中になかった。

ある日、友人のタカが、ビョウに賭けを持ちかけた。
「ビョウさ、体操を続けたいなら、俺たちと賭けをして。」
「どんな賭け?」
ビョウは、話し言葉も綺麗でお洒落だった。
それは、家族の事を、今まで我慢して、愛してきたからだと思う。
「ビョウの一番大切な人を賭けて、技をやってくれよ。」
「私の一番大切な人は、おじいちゃんだよ。」
「へー。爺さんか。」
「でも、命を懸けるつもりなら、私、警察に通報するね。」
「ダメ。もう始まっているんだもん。通報したら、お前の妹を殺すぞ。」
「え‥。無理だよ。だって、刑事さんが守ってくれる。」
「いや、守れないね。俺たちには、ゴールド先輩だって、いるんだから。」

ビョウは、試合前でないと、ハイレグで練習しなかった。
試合前、ハイレグで練習をすると、男子達が歓声をあげたが、辛いだけだった。
モエが話しかけた。
「みんな見てるよ。」
「辛い。」
ビョウは言った。

トアが登場し、「やっと来たね。」ビョウは競技をしながら言った。

「賭けの話、本当かなぁ。」
大人になったビョウは、賭けの話を、クラブの人達に相談できなかった。

賭け当日、ビョウはハーフパンツとTシャツで登場した。
妹が口にガムテープをされ、連れてこられている。
「ブナには何もしないで。」
ビョウが言ったが、妹のブナがクビを振った。
集まった友人たちは、ニヤニヤと笑った。
ビョウは、Tシャツの袖を肩まで上げ、技を次々とこなしていった。
タカはイラつきを抑えるように、ガムを食った。

タカの兄貴分が、チェーンソーのスイッチを入れた。
「私の腕切る?」
ビョウは聞いた。

「お願いだから、もうやめて。」
「ダメだ。」
「この中に、警察の人いない?」
みんなニヤニヤと笑い、悔しさで泣いた。

ビョウは、体操をやらない方がよかった。でも、ここまできたら、引き返すことができない。
鉄棒で逆立ちし、プルプルした腕のビョウに、タカがストップをかけた。
そして、掛け算の問題を出したが、「もうダメ。」ビョウは答えられなかった。

ブナは膝をがくがくさせ、座り込んだ。
ビョウは競技を止め、ブナを抱きしめればよかった。
ブナは切られた。顔が切られた時、ブナは全身が凍り付いた。
もう人生終わりだった。

『殺してあげて。』
ビョウは競技を続けた。

一部始終をトアも見ていた。
トアもビョウも狂っていた。

ビョウは、体操という特別な競技をやらなければ、真実の愛を手にして、本当の幸せを味わえた事だろう。
例えば、旦那さんとの旅行先でも、最愛の妹と電話をして、楽しかったはずだ。

体操や新体操は、夏季オリンピックの目玉の競技だ。
美しい衣装や会場の雰囲気で、神の目も閉ざされる。
しかしながら、苦しさの中に、知られざる本能を見出した者には、伝える事ができる。
それが、命を救うという事を忘れないでほしい。

最良のオリンピアンへの神が与える罰とは、最愛の人に自分の姿が見えなくなる事だ。
私は、誰の目も見ることなく、集中出来ていた。
誰かの目を見ていれば、書く事は出来なかっただろう。
物語がうまくいく秘訣は、最良の子をモデルにする事だ。
この秘訣は、たんなる自惚れである。
この物語は私の自伝もかねている。なぜなら、デジィが私だからだ。
デジィには、無罪の罪がある。無罪の罪はとても重い。
いち早くスターになりたければ、呪いをするか、最良の子を最愛とする事だ。
デジィは家族を愛しているが、自分自身を最愛とは呼ぶことはできない。
自分自身を最愛とも、最高とも、ほとんどの人が言わない。
でも、自分のする事を認め続けていれば、自分の夢が肯定される日が必ず来る。

ロンドンオリンピックの出場権を手に入れたルビーは、リザの同僚の男から、再び脅された。『ルビーが優勝すれば、リザに何をするか分からない。』というものだ。
ロンドンオリンピックの直前の試合で、ルビーは失敗してあげる事にした。

ロンドンオリンピック代表のルビーが決勝に進まなかったので、ネットニュースは炎上した。
リザは全てを分かっていたが、超有名人のルビーとは、連絡先交換をしていなかったので、励ます事が出来ない。それなので、インドネシアで一番有名なネットニュースにコメントを残す事にしたが、出来なかった。
ネットニュースは一般人にとって、早くて手軽な情報になるが、ストレスの素になる。
ネットニュースには黒くて悪い大きな感情がひそんでいるため、リザのコメントを、ルビーが見る事が出来なかった。
スターたちは、時々、ネット上で公開の情報交換をする。

ルビーは、自分自身を神と確信するほど、霊力が強い男だ。
内なる怒りが爆発し、決勝で、死者が出た。
もしも、リザのコメントを見ていたら、そんな事は起こらなかっただろう‥。
ネットニュースを見なくなると、脳がすっきりするのが分かる。
世の中の大体の人が、ネットニュース依存症かもしれない。
新聞やテレビが一番だ。

『リザがどうなっても、ロンドンで必ず勝つ。』
ルビーは強く思った。
「勝利の代償なら、いくらでも、俺は払う。ずっとリザのそばで、リザを支える。」

賭けから5年後のある日、ビョウは殺された。
体操の魔法は解けてきていたが、ビョウは笑顔で子供達に先生をしていた。
昔からの友人のモエが言った。
「ビョウ、体操できなくなっちゃったね。」
「うん。でも、今はこうして教えているから、楽しい。」

殺されたブナは証拠隠滅のため、皆に喰われた。
当時のビョウは辛くなり、偽の記憶を作った。
記憶が作成されることは、いくらでもある。

友人モエとの帰り道、ビョウは隠れる女の子の影を見た。
『私だって、元オリンピック選手なんだからね。』
ビョウは女の子を見に行った。
顔が小さく、妙に下品な子だった。
「情けないね。」
ビョウはモエの所へ戻った。

ビョウは時々、駅の近くの古いトイレを利用する。
下品な子カコは、ビョウを殺すため、そこで待ち伏せをした。
何日たっても、ビョウはトイレに来ない。
一度、ビョウの休みの日にまで、待ち伏せをしてしまった。

「あんた、いつも何をやっているだ?」
異変に気付いたおばさんがカコに声をかけた。
カコは笑顔で答えた。
「何でもありませんから。」

警察も来て、カコに酷い事を言ったが、カコはビョウへのストーカーを止めなかった。
『必ず、ここで殺すんだから。』
ビョウの後をつけると、ビョウが駅ビルの綺麗なトイレを利用している事が分かった。

カコが深夜まで、トイレに潜んでいた時、ビョウがトイレに来た。
「あなた、何しているの?」
「うええあ!!」
カコは奇声を発し、用意してあったトリックでビョウを刺した。
「わああ‥。」
ビョウはすぐに倒れた。
カッパを着たカコが、ビョウをめった刺しにする中、ビョウは目を開いてその光景を目の当たりにした。
カコはビョウが冷たくなった事に気づき、クソをする事を思いついた。

「ウンコよ、出ろよ!!」
カコは叫んだ。
カコはようやくウンコをし、ビョウの前でウンコをした時、カコの前に、一人の神男が現れた。
いろんな物をなくしてくれたが、ウンコとカッパとビョウの死体だけは消えなかった。

カコは逃げきった。正直言って、びっくりしているが、それほど、ビョウが奪った命が多かったかもしれない。

そのカコが、未来で、ジョアンナの命を奪う事になることは、誰も分からなかった。

カコの過去の話を書こうと思う。辛い話が続くが、頑張って耐えてもらいたい。
私には、隠されている事を明かす事が出来る。
私なら出来ると言われている。

カコは、養子だった。幼い妹がいたが、カコが殺してしまった。
強く倒して、頭を床にたたきつけたのだ。
カコは元々、悪魔のような子供だった。
心優しい両親は、カコを許した。
両親は、カコの弟を迎えることにした。
ある日、両親が家に戻ってくると、弟が頭から血を流して泣いていた。
「あんたがやったんでしょ!!」
両親はカコを追い回し、カコは家を飛び出した。

「あの子は‥。」
母親は人差し指を頭の所でクルクルした。
それでも、カコの面倒を見続けたのだから、良い夫妻だったと思う。
カコが弟を襲うようになったので、弟は再び養子に出されることになった。
カコは男好きすぎた。カコは、ステージに上がる事を望んでいたが、ステージに立てば、モテないようにしなければいけない。カコにはそれができなかった。
多くの人が許さないと、魔法もかからない。
ビョウが体操を許されたのは、悲しい過去と許した人がいたためだ。

カコの悲しい過去は、妹を殺して、両親を一人占めした事だ。

中学に上がると、カコは男に甘えすぎて、みんなから嫌われた。
中学を転々とするようになる。小学校でも問題を起こして、強く倒して男の子を殺したので、仕方なかった。
カコを愛していたお爺さんがいて、その人が一家を守った。

中学2年の時、カコは、地元出身のアイドル、リカを殺してしまう。
これは、エロイスと共謀してやった事だった。

超人気アイドルだったリカは心を病み、再び街に顔を出すようになっていた。リカのお金で、両親は地元のリゾートに家を買った。
リカもそのリゾートが好きだったので、1日中静かに過ごして、ゆっくりしていた。

カコのお父さんは、リカが好きだったので、下心丸出しで、お母さんにリカのことを聞いていた。カコはバスに乗り、エロイスとリゾートに行き、下見をした。
お母さんはカコに、
「もう二度と、子供だけで行ったらダメだよ。」
と、注意したが、
「ううん、また行く。明日行ってもいい?」
「絶対に行ってはいけません。」
お母さんはカコに話したが、カコは聞かなかった。
一週間後、カコとエロイスは再びリゾートに行ってしまう。

昼頃から探したが、リカは見つからなかった。
夕方、カコとエロイスは、誰もいない道を一人で歩くリカを見つけてしまう。
もしかしたら、この頃から、カコには犯罪の魔法がかかっていたかもしれない。
カコとエロイスは走って、リカを追いかけた。
カコとエロイスはビニール袋をはめ、包丁でリカを刺し、道から草むらの中に倒した。

「ヘーイ、女の子2名、元気ないね。」
車の男が声をかけた。
何人か男が乗っている。
「どうしてここにいるの?」
「えっと‥。」
「とりあえず、観光案内所まで送ってあげるね。」
「ありがとうございます。」
カコとエロイスは黒いワゴン車に乗った。
男達は、リカを愛していて、リカを心配し、探していた。
「リカ、どこかなぁ‥。」
運転席の男が言った。
「ちょっとさ、見つけたら、すぐに知らせて。俺は運転に集中しているから。」
「うん‥。」
後ろの席の男達は、元気がない。

一人の男が、カコに聞いた。
「ねぇ、女の子。アイドルのリカに似た子を見なかった?というか、本物のリカなんだけどね。」
「リカ‥?」

エロイスが言った。
「本物のリカなんて、いるわけないじゃん!!」

「え‥?いるよぉ。ほら、こーんなに胸がでかくてさ‥。」
「知らない。そんなの気持ち悪い。」
エロイスは言った。

「ほら、ついたぞ。降りろ。」
男達は冷めた目で、2人の子供を見た。

カコとエロイスの家に、警察が来たが、捕まらなかった。


高校に上がったカコは、好きだった男子と付き合っていた女の子を殺した。
生徒会室に呼び出して、紐で首を絞めて殺したのだ。

そっとドアを開けると、カコが好きだった初老の先生がうつむいて、研究室から出てきた。
初老の先生は、物音に気付いたようだが、足早に去った。

カコは喜んで、教室から飛び出た。
そもそも、友達が本当に死んだとは思わなかった。
次の日、学校に行き、生徒会室をのぞくと、友達がそのままだったので、カコはゾッとした。
休憩時間に、男子達が友達の遺体を見つけた。
男子達はワンワン泣いていた。
好きだった人達がみんな大泣きして、犯人を殺すと言ったので、カコも泣いた。
友達は白目で死んでいたらしい。

数日後の授業中に、担任が「ソノ・カコ!来い!!」と、大きな声で呼び、クラスのみんなの前で、
「殺したのお前だろ!!」と言って、カコをひっぱたき、倒した。
「え‥。」
カコは泣き、「そうなの?」女子がカコを囲んだ。
「ちがいます‥。」
「でも、目撃者がいるんだぞ!!」
先生は、殺された子の両親に詫び状を書いたり、お金を渡したので、ストレスでいっぱいだった。
でも、卒業式まで、担任を務めたので、立派な先生だったと思う。

「カコちゃん、お友達殺したの、ちがうわよね?」
優しい母親は緑茶を淹れて、ベッドで寝ているカコに聞いた。
「うん、そう。」
「そうなの?」
「嘘、ちがう。」

「お母さんは、カコちゃんの事を信じてる。いつも、味方だからね。」
「うん‥。」
母親は、カコをさすった。

眠ったカコが下に行くと、父親が新聞を読みながら母親に聞いた。
「殺されたのって、女子か?」
「うん、目のキョロっとした子よ。シナさんの家の。」
「ええ、あんな可愛い子が?」
父親はカコを見た。
「お前が殺したんだろ。」
「ちがうよ。‥パパだって、この前、若い子と歩いていたじゃんよぉ!!」
「え‥?俺はそんな事、してないよ。」

深夜、「カコが犯人だな。」「ええ、そう思います。」
両親は話し、泣いた。

「次に人を殺したら、うんときつい目に遭うんだからな。」
父親は、カコに酷い言葉を言った。

カコはホームセンターでペットを見て、癒されるようになった。
家に戻ってくると、置手紙があり、両親はいなかった。
『カコちゃんへ。
さっき、警察から電話がきました。
① なぜ、カコちゃんがあの日に生徒会室にいたのか。
② 殺された女生徒とどんな話をしたのか。
③ その時、女生徒はどんな感じだったのか。
④ 女生徒は自殺か他殺か?
以上の4点を教えてもらいたいそうです。
お母さんとお父さんは、カコちゃんが犯人ではないと信じていますが、警察の方に本当のことを話した方がいいと思います。あとで、警察の方が家に来るそうです。』

「はぁ?家に来るのかぁ?!正気かよ、それ!!マイマザー!!」
カコは1人で怒鳴った。
カコは泣いたが、その頃には精霊が現れるようになっていたので、精霊と相談して、女生徒は男子生徒のことで、悩んでいたことを話したことにすることを決めた。
『よし、練習してみろ。』
妖精は言った。
「女生徒は、私が一番好きだった人と付き合っていたので、ムカついて殺しました。」
『ちがうだろ、もう一回。』
精霊と、警察の人に言う事を練習した。
もしかしたら、その精霊はお父さんだったのかもしれない。
警察の人が来た時、カコは膝がガクガクしたが、うまくいった。


その後、母親が優しくしてくれたが、カコは時々癇癪をおこした。
「カコちゃんは、特別大事な子。」
母親が言った。
「私があなたの特別大事な子って何?他に大事な子でもいたの?」

「私、芸能人になりたいんだからね!!」
カコは癇癪を起して、大泣きした。
母親はその姿を、呆然と眺めた。
「カコちゃん、お母さんの前ではいいけど、お父さんの前では止めてね。」
それでも、カコが癇癪を起して、父親はカコをひっぱたいた。

誰からも相手にされないカコは、暇をもてあまして、勉強をした。
不思議なことに、生物や動物の勉強は、すらすらとカコの体に入った。
カコは、動物の道に進めばよかったのかもしれない。

しかし、カコはそれが分からなかった。
芸能人に憧れて、小顔になるためのローラーを買ったりした。
「やめな、無駄だよ。」
母親がのぞいて言った。
「もう関係ないから。」
カコが強気になった理由は分からない。
先輩と付き合うようになったからかもしれない。
でも、先輩からお金を要求された時、親に頼るしか方法がなかった。

「お姉さんと付き合う?」
カコは小学生をその気にさせた。
まだ10歳の男の子だ。
カコは手をつないで、アイスを食べに行ったりした。
アイス屋で、男の子の知り合いが声をかけ、カコを注意した。
カコは橋の下に男の子を連れて行き、男の子を殺してしまった。
石で頭を叩いたのだ。
カコは返り血を浴び、お父さんの言葉を思い出した。
しかし、精霊がカコを助けた。
それが、なぜかは分からない。
その罪を、カコは免れた。

カコは卒業式には、なんとか出席した。
しかし、カコは、高校を一からまたやり直すことにした。
両親が、「神様がそうさせますので。」と担任に話した。
担任もその頃には、元気を取り戻していた。

しかし、二度目の高校でも、カコは同じような罪を犯してしまう。
しかし、今度の殺しは、カコだとバレなかったようだ。
カコが手に入れた魔法は、殺しの才能だったのかもしれない。
カコは、二度目の高校も辞めた。

しかし、カコはいろんな事を思い出した。
忘れるために、頭をソファーの間などに挟んで、矯正した。
ジャカルタで、カコはデリヘル嬢をしたが、そこでもいい挟み場所を見つけて、頭を矯正し、仕事はうまくいかなかった。

しかし、カコを想っていたあのお爺さんが客の時は、カコはうまくできた。

カコは洋裁学校に行ったが、うまくいかなかった。
デリヘルの仕事で見つけた縁で、モデルのスタジオに潜りこんだ。
前に、ジョアンナの前で、ピースのポーズをしたのが、カコである。

デジィとカコは、少し似ていた。
ジョアンナの死から5年後に、デジィはカコと一緒に働くことになる。
苦痛な仕事だ。

誰でも、人をうらやんでいる。そして、心の中は、自分の悲しみでいっぱいだ。
自分の悲しみに浸っている時、誰も、他人の悲しみのことなんて想わない。
それを知り、笑ってみせるのが、スーパースターという物だ。
デジィとカコの決定的な違いは、デジィがどれほど辛くても我慢して、神様の存在を信じ、自分の才能を見出し、妹を大事にした事だ。初歩的なことである。
デジィは、カコがジョアンナを殺した事を分かっていた。全てを見抜いた上で、小さな自分のミスを神様に祈るのだから、デジィは本物のバカである。

デジィには無罪の罪がある。だから、なかなかステージに上がれないことを、デジィはきちんと分かっていた。
そして、スーパースター達を自分の心の神に置き、楽しんでいる。
そのやり方はというと‥。想像する事だ。デジィは、他の人よりいろんなことを知っているので、出来る。デジィは、本物の魂ではないが、人の心に置くための精霊を作る魔法を持っていた。
心の中に、精霊が現れた時は、驚かないでほしい。それはデジィが作った物だ。
きっと、あなたを良い方向へ導くだろう。
でも、本物の魂の精霊が現れたのなら、あなたが本当にピンチだという事だ。

ジョアンナが、カコに殺されたのは、2013年3月7日のことである。
『ミナ』というゴロを、カコがわざわざ選んだのだ。
しかし、ジョアンナは殺されて死ぬ予定ではなかった。
その頃、ジョアンナは気づかない間に、白血病に侵されていたのだ。

ジョアンナが死ぬ話はまた後で書きたい。
その前に、ロンドン五輪の話もあるし、カコは2012年にもう一件の殺人をした。

女性デザイナーのクオリ・マイを殺したのだ。
クオリは、カコと同じ街出身で、両親が、クオリの親と知り合いだった。
クオリはハイブリッド車に乗っていて、カコの両親はおんぼろの車に乗っていた。
カコがああいう車に乗りたいと言うと、
「うちにはそんなお金はないから。」と、両親は言った。

「なんとかして、モデルになれないかな。」
カコが言った時、心優しい両親は、クオリの親に頼んでくれた。
両親は、カコが風俗で働いた事を知って、カコに諭したばかりだった。
カコがこれまで捕まらずにすんだのも、優しい両親のおかげかもしれない。

カコはモデルの撮影に挑み、クオリは、カコにとても優しくしてくれた。
でも、出来上がったブランドの冊子には、カコの写真が一枚しか載っていなかった。
それでも、一番最後に載っていることは、すごい事だった。

「私、この写真が一番好き。」
クオリは、カコの母親に話した。
クオリも苦労していたので、カコを気に入っていた。

それでも、カコは分からなかった。
クオリを付け回し、ついにクオリは、気に入っていたカコの事を、警察に相談した。
それでも、警察はカコへの事情聴取に遅れ、カコは、クオリのハイブリッド車のドアに、青酸カリを塗り、クオリを殺した。

クオリは、車中で死んだが、トイレを大と小両方したので、医師は毒だと断定した。
それでも、警察は調査を深めず、自殺という事にしてしまったので、カコは捕まらずすんだ。

カコは、人を殺せば、素敵な恩返しがあると勘違いしていた。
カコの運命の男は、高校の時に殺した女生徒と付き合っていた男だったかもしれない。
カコは男好きだったので、付き合って見せつけたのかもしれない。
最終的には、カコは、その男に殺した事を打ち明けて、男はカコの前から消えた。
24歳の時に再会して、男の車でデートしたが、カコがマネキンの首を持ってきて、始終抱いていたので、不気味に思い、会わなくなった。

カコが今、付き合っているのは5歳年上のハタバだ。
ハタバも、小学生の頃に殺人をし、運命の女を失っていた。

ハタバは、地元出身の元大統領を殺したのだ。
元大統領のクハは、庶民の気持ちを心より考える良い男だった。
だから、時々変な事もしたが、みんなクハの事が好きだった。
ハタバの両親は、何をやってもうまくいかない。
それでも、きちんとした給料をもらっていた。
クハから見たら、それはそれで幸せな事だった。
自分は独り身のスターで、そちらには愛する家族がいた。

でも、ハタバの両親には分からなかった。
クハに、政治家になりたい事を相談すると、「よくない。」と言われてしまった。
政治家になるには、それなりの忍耐が必要だった。
家族がいたとしても、訳アリになる。

ハタバの両親は、クハを殺すために、毒を用意した。
夜中にこそこそと計画をしているのを、ハタバは立ち聞きしてしまう。

ハタバは、両親のために立ち上がった。
散歩中のクハに毒をかけると、クハの顔は見る見るうちに溶けた。
クハは真っ赤な顔で、口を少し開け、目を開け死んだ。

私は、クハの死に顔に会った。
そこまでは悪くなかった。
クハの手をさわると、握ってくれたような感じがした。

クハは、本当に立派な政治家だったと思う。



インド‥。
ビサルは怒って、部屋に貼ったジョアンナのポスターにダーツを刺してめちゃめちゃにし、自分の目の球にケチャップを盛る夢を見た。
「はっ‥。」
ビサルが目覚めると、目の前に美しいジョアンナのポスターがあったので、安心して、うっとりして眺めた。

ビサルはジョギングをする。いつものように、街の人達がついてきた。
ビサルは、寝た切りの兄のため、実家で暮らしていた。
一人暮らしをして静かに暮らしたかったが、良いヒーローになるためには、仕方のないことだ。
仕度をして、仕事に出発する。
眼鏡をかけ、真面目な態度で仕事に打ち込んだ。

仕事を終えると、家に戻る。
外食する日もあるし、弁当を買って帰る日もある。
母親が美味しそうな料理を作ってくれてあると、後悔するが、一人暮らしをしていたら、大体はこんな感じだろう。

夜は部屋でトレーニングをする。
トレーニングセンターに行って、手の内を知られたくなかった。
あとは、エアスイムをしたり、フォームの確認をする。
時々は、オリンピックの録画を見返して、金メダリストの泳ぎをチェックする。
毎日体を念入りに手入れしているので、どこの筋肉が落ちたのか、ゆるんだのか、すぐに分かるようになった。
やはり、鼻の中に水が入る感覚が大事だろう。
本物の水道水で鼻うがいをするが、結構体に悪い気がする。
でも、ビサルは大丈夫だった。

肉体を研ぎ澄ますと、精神も研ぎ澄まされた。

『Final eyeのことを知っているか?おばあちゃんはね、Final eyeなんだよ。』
亡くなったおばあちゃんの言葉を思い出した。
『Final eyeって、何?』
『その名の通り、最終的な目さ。その人に、どんな罪があるのか、それともまるっきりの無罪なのか、わかるんだ。』
『へえ‥。』
『Final eye は一億人に一人いる。強いFinal eyeは、何かの役につけるだろうね。
だって、その人の過去や体重まで、全て分かるんだから。
Final eyeになると、その人をパソコンで分析したかのような画面が目の前に映るんだ。』
『それ、面白そうだね。』

ビサルは目の前を、手の平をいったりきたりさせた。
残念ながら、ビサルはFinal eyeではない。
でも、こんな事を思い出したのだから、近くにFinal eyeがいるはずだ。
きっと、寝た切りの兄ではない。
もしもそうなら、負担が重すぎる。

ビサルは、ダーツで、部屋に貼ってある街の地図を狙った。
トン
刺さった場所は、ライフル射撃場である。
ライフルは、オリンピック競技でもあるので、休日に行ってみることにした。

「こんにちは。」
ビサルが受付に行くと、うつむいて折り紙のような物をしていた親父が顔を上げた。
「いらっしゃいませ。体験ですか?」
「はい。」
「何名様で?」
「見ての通り。大人1名だ。」

「ついてきて。」
「あなたが指導してくれるのか?」
「ああ。俺が教えてやる。」
「受付の仕事は?」
「大丈夫。」
ビサルと親父が振り返ると、女性が受付に入った。

男や、かっこいい女性が銃を撃っている。
「怖い。」
「大丈夫さ、包丁を使うのと同じだよ。」
「でも、離れた場所から狙うだろう?」
「うん、その分、ライフルの方が安全だよ。」
親父はニッコリと笑った。

親父はライフルの説明をした。
そして、的を狙うコツを教えた。
親父が手本を見せてから、言った。
「やってみて。」
ビサルはライフルを受け取ったが、初めて銃を持つので、手が震えてしまった。

ビサルは一発撃って見ると、体中が熱くなって、トイレをもらしてしまったかと思った。

「コンラッド、大会の練習か?」
親父は、男に声をかけた。
「そうだ。もうすぐ、オリンピックがある。」
「君が出場権を逃したはずだ‥。公式戦を休んだんだろう?」
「うん。でも、ロンドンに呼ばれている。」
「そうか。」

「オリンピック選手なんですか?」
ビサルが聞いた。
「いや、代表もれした。だけど、IOCにロンドンに来るように呼ばれている。」
「そうですか。僕も、ロンドン五輪に競泳で参加します。」
「そうなのかい?お互い、頑張ろうな。」
「はい。」

「やっぱり、君は、競泳選手のビサルさんかい?」
親父が聞いた。
「はい。」

しばらくライフルをして、球を切らすと、ビサルはベンチに座って、コンラッドの練習を見学した。
親父がビサルの隣に来た。
「コンラッドは、金メダルを狙える。」
「はは。五輪の出場権を手にした者全員に、その権利があります。」
「確かにそうだな。でも、あいつは、金メダルに限りなく近い男だ。
親が銃で殺されたとか、そういうわけじゃない。昔から、才能があって、子供の頃は、虫に石を当てて遊んでいたんだ。」

「そうだったんですか。」
「うん、そうだ。でも、銃を撃つことは、災いでもある。だから、恋人がいる所は、一度も見た事がないな。」
「へぇ‥。」
しばらく黙った後、ビサルが親父に聞いた。
「親父さん、もしかして、Final eyeかい?」
「なぜ、それが分かった?」
「勘だよ。それに、俺の祖母が、Final eyeだったんだ。」
「へぇ、そうかい。じゃあ、ビサルさんは、Blue Muttだ。」
「どういう意味だい?」
「蒼い犬さ。君の事は何も分からなかった。」
「まさか、そんなことが。」
「君はきっと正直すぎて、Final eyeの力が通用しないんだ。」

親父は去り、ビサルはうつむいて考えた。

しばらくすると、ポニーテールの女性が来て、ビサルの隣でガンの準備を始めた。

コンラッドはゾーンに入ると、宇宙に行くことがある。
ゾーンに入る事ができなければ、的だけに集中して、緊張で体が疲れる。
宇宙に入る事ができれば、襲ってくるエイリアンを無視して、奥にいる黄緑色の怪物に狙いを定めるだけだ。
誰かの病気を治すと考えるのもいい。
最初、その考えをした時は、癌をつぶしているのではなく、心臓を貫いているのではないかと感じ、恐かった。
しかし、今は違う。
命中させれば、誰かの病気が治る気がしている。
今、病気の人が頭の中に浮かんできて、コンラッドは決めていく。
そして、インドの著名な先生が浮かぶが、可愛い女の子が出てくるので、
『先生はまだだよ。』
そう言って、コンラッドは女の子のために狙いを定める。

運よく、残りの玉がある。
「じゃあ、最後は君に。」
コンラッドは先生の病気を治した。

あくまでこれは、ゾーンの話であるが、真実だと信じたい。

あとは、時々、コンラッドは殺人者になる。
これも、あくまで、ゾーンの話である。
刑務所にいる人達を助けるためだ。

「真犯人は、俺だぜ。」
コンラッドは、的に向かって、狙いを定める。
決めると、コンラッドは安堵する。
真ん中でない方がいい時もある。

『この勝負は、宇宙と俺と神だけが中にいる。』
コンラッドは言った。

ビサルは立ち上がった。
初めての本物の銃で、魂がぬかれた感じだ。
帰るためにふらふらと歩き出した。

「さよなら、ビサルさん。」
コンラッドが声をかけると、ビサルは手を振る仕草をした。

「こんにちは、ケリー。」
コンラッドが、ポニーテールの女性に声をかけると、
「やぁ、コンラッド。」
ケリーは男のような挨拶をした。

ケリーは本当にかっこいい女だ。
彼氏ではないが、愛している男は年上だ。
ケリーは、インドの王族のつもりで戦っていた。

ライフルの選手は、訳アリな感じがする。
実際そういう人は多いと思うが、ケリーは、自分の過去を想像して、神様に話していた。
例えば、落ちている銃で弟を撃ち殺したとか、父親が盗賊で、玉を外したせいで、警察に御用になったという話だ。

これらは、全て、ケリーの過去ではない。きっと別の選手の過去だろう。
ケリーはその事を知り、そういう悲しい選手だなと感じた時は、わざと負けたりした。
試合の時、相手選手や観客の悲しい過去が見えることがある。
それでもケリーは魅せた。

ライフルを握ることを許されたわけは、運よく、ケリーの父親の友人がライフルにハマっていたせいだ。
その男こそ、ケリーが愛している人である。

結ばれるかは分からないが、ライフルで五輪に出場するよりもずっと、認めてもらえない願いだと分かっていた。

ケリーは念のため、両親に土下座したが、両親はすんなりとケリーがライフル選手になることを許した。

ケリーが戦場で戦うよりも、ずっと良い事だった。
ケリーの試合は、美女たちも見に来る。
それほどまでに、ケリーは良い選手だった。
全てに長けていた。
ファン達とどこまで仲良くするかは、それぞれの選手に考えがある。

ケリーはみんなが同じだと思った。
握手を求められ、今、この立場では握手をする。
ケリーは臆病なところがないので、ライフル選手に向いていたかもしれない。
みんなが平等なので、それで考えればいいと思う。

ケリーには優しいところがあったので、みんなから認めてもらえた。

そろそろ、ロンドン五輪が近づいてきた。
インド代表に、ビサルとサムは、ほとんど内定だったが、五輪の前にも国際試合がある。

スポーツ界も、芸能界と同じで、キツネが存在している。
キツネといっても、それは、精霊だとか、自分のコピーである。
それまで理解できなければ、トップ選手として一線を走り続けるのは無理だ。

競泳選手の中には、オリンピックにだけ出場する男だっている‥。

以前、キツネの存在を途中まで理解していた女子選手が、自分と似た選手を何名か用意した例が何件かあった。
その中の一人は、事件に巻き込まれて、最愛の男を喰ってしまった過去のある選手だったので、もったいなかった。

その女選手ヒラコは、インドネシア選手で、2014年、カコに殺されることになる。
カコは有名人も庶民も狙う殺人鬼だ。見た目では分からないので、それが怖い‥。
ヒラコの家は、人間の肉を喰う習慣がある家で、ヒラコを愛していた男エイジは、自分が喰われることを決意する。それがどのような事件だったのかは分からないが、ヒラコは気づかない間に、エイジを喰った。
ヒラコは、何年も前に自分が喰ったエイジを探すかのように、ロンドンオリンピックで自分を売り込んだ。しかし、エイジが見つかることはなかった。エイジはヒラコの中にいたのだ。
ロンドンオリンピック後、ヒラコは1人暮らしを始め、透明人間のエイジと暮らすようになった。朝ごはんも昼ごはんも晩御飯も、エイジの分まで用意した。
時々、本当にエイジの置手紙があったので、ヒラコはそれをやめられなかった。
ヒラコは、一人でエイジに語り掛けた。
一人で話すことは辛いし、疲れることだ。
でも、ヒラコがそれをやめることはなかった。
ヒラコは、3時間も鏡の前で、エイジと話した。

カコは、ヒラコのマンションのドアの前に立って、その声を聞いたのに、ヒラコが辛い人間だと分からなかった。

ルードとカイとキキが練習するプールに、ヒラコが来た。
ヒラコは普段の孤独を、男を見て、癒したかった。
カコは、その日は、ヒラコを殺す予定ではなく、ルードを殺す予定だった。
ジョアンナ達を殺した事を、ルードに見抜かれていたのだ。
しかし、登場したヒラコを見て、カコは心を変えた。
カコは水着に着替えて、プールに侵入した。
カコは、競泳選手のなんらかのスキャンダルを持っていたのだ。
本当はそんな事はどうでもよかったが、スタッフには、カコをプロのプールに入れたらどうなるだろうという好奇心があった。

「あれ、何ー?」
ヒラコはルードに聞いた。
カコは聞こえたが、気にせず、ヒラコのロッカーに毒を塗り、逃げた。
名前を名乗っていなかったので、逃げられた。本当にカコには犯罪の才能がある。

『本当は、私、あんたが毒を塗ったの見えたんだからね。』
カコには声が聞こえたが、カコは逃げきった。
それでも、カコは、ルードとカイとキキの前で殺人をしたので、カコが働く工場に、3人が、それぞれ別の日に来て、副工場長と話した。
副工場長も頭が悪いが、その殺人事件には絡んでいない。
やっぱり、競泳選手は女に優しいかもしれない。

カコのことは赦せない。まだまだ秘密がありそうだ‥。
しかし、今は置いておこう。

よく言われるように、神が与える試練に乗り越えられない物はない。
その言葉どおり、そこまではキツイ物ではないが、少々難しいだろうなと思う。

キツネを理解する事と、パラレルワールドについての考えを否定される事と、自分が信じて走っている道を否定される事は、とても辛く、難しい事だ。

そんな時は、良い音楽を聴いて瞑想をし、神の声を聞くことだ。
実際、私はステージに上がっていないので、どのようにしてキツネと交信をするのかは知らない。

でも、サムもビサルも、オリンピックで勝つために練習をしていた。
オリンピック選手が、オリンピックのことを五輪と言うのは、ちがう気がする。
もしも、パラリンピックがきたら、自分がパラリンピック選手に変身するのなら、話は別だが、五輪というのは、オリンピックパラリンピックを総称した呼び方なので、適していない気がする。

海外の選手は、モンスターになるために、海に人喰いサメをはなして泳ぐとか、池に危険な魚をはなして泳ぐことをしているらしい。
そんな危険なトレーニングがある事を全く知らないトップ選手は、何度も海外練習に参加するように求められる。
計算高く、導くが、うまくいかないとストレスを爆発させる。
訳の分からない池江は、ハイレグ水着の股の部分に指を入れたり、プールにSK2を入れたりした。
怒りを感じたオーストラリア人達は、池江を殴り倒すことを考えたが、そこに精霊が到着した。
『世の中には敵がいた方が、社会の質が良くなる。』神様の会議で決められた、最悪の掟がある。そして、みんなの敵として、池江が選ばれていた。
しかし、それは、池江が悪い人間だからである。
悪い人間すぎて、少々、度がすぎた。いや、すごく度がすぎた。

池江が悪すぎて、被害者が出たので、精霊は身の危険を犯して、過去の犯罪写真を持ってきた。CIAとして、証拠写真を見せた。
池江がどうなるかは分からない。そっとしておこう‥。
水泳協会にもなんらかの問題があるのだから、池江被害が終わらないのだ。


日本の競泳選手、ロンブは世界記録を出した。
しかし、ロンブは、世界記録の前に、世界の恐怖事件を何も分かっていなかった。
ただ単に、人気選手の献血をゲットしただけだ。
私にも、中国の選手から電話がかかってきたことがあるので、恐いと思った。
「血がほしい。」なんて電話は、明らかに悪い。
私は、有名になるまで、絶対に献血をしない。
以前、妹が献血をして、妹の血が、日本の芸能界にバラまかれて、みんなが、私の妹の顔になったので、恐かった。

ロンブは、海でのレースに誘われた。
危険な練習には参加しないように、指導はされていた。
過去に、タイヤをつかった練習で、騙されて溺れ死んだ男がいたらしい‥。
それでも、ロンブが参加した理由は、人気選手のキツネがいたからだった。
ロンブが信頼している人気選手は、堂々とレースをやってのけた。
それでも、それはキツネである。ロンブには分からなかった。
ロンブは船で、朗らかにしたので、みんな好きになりかけていた。
だから、断ることもできた。
でも、レースをした。
「下にサメがいる。」
外人は、一応、指示した。
「大丈夫。」
ロンブは笑ってみせた。

「○○君も大丈夫だから、俺にできないことない。」

ロンブは足を喰われ、その国で自殺をした。
死ぬ時に、『死ねば、元通りになるかな。』そう感じたが、元通りには戻らなかった。
前日に、ロンブの母親が心配して電話をよこした。
「○○君もいるなら、写真を送ってよ。」
ロンブに言ったが、ロンブは写真を撮らなかった。
一流選手としての対応を果たしたかった。
その時の○○君はキツネだった。世界記録をとったロンブへの嫉妬だったのかもしれない。

ロンブは赦されないのに、カコが赦されるのは不思議である。
カコが殺した女は優しかった。それに、男は女に優しかった。
しかし、私は赦さない。



サムは、念のため、湖で泳いでみることにした。
でも、これは、自分の身を守るために、おまじないをかけるような事だ。

湖には、何人かの人が泳いでいたので、安心した。
サムは走って湖に入ると、若いカップルが、ハッとしてこちらを見た。
サムは無視して泳ぎ始めた。
ゴーグルと帽子をつけている。濁った湖の中に、小魚が泳いでいるのが見えた。
湖の中には、ワニがいる気がして、わくわくしたが、しばらく泳ぐと深くなり、
少し怖くなった。
湖はどこから湧き出ているのだろうか?
ここに来るまでに、湖のメカニズムについて勉強しておくべきだった。

サムには、一流の筋肉をつけてある。
純粋で、苦労も努力も感じるが、美しかった。
たくさんの罵声を浴びたが、毒ひとつなく、美しいオレンジとホワイトとグリーンのために戦える体だった。

普通の人間なら、ここで溺れてしまうが、サムが溺れることはない。
サムは水中で何回か回転した。サムは、鼻がツンとする感じが好きだった。
悲しみなど、すぐに忘れられるからだ。
サムには好きな子がいる。
でも、振り向いてはもらえないし、裏切っているあの子がオリンピック選手の僕に振り向くことなんて、失礼な気がした。
でも、これでは、本当に好きかは分からない。

ボートが来る。
「誰だろう?」
サムは顔をあげた。もしも女ならとワクワクしたが、そうではない。
力強い漕ぎ手、オリンピック代表のノアルだ。

ノアルは現在29才。
ノアルの実家は裕福でも貧乏でもなかった。
ノアルはインドを救うために、生きるしかなかった。
弟のエルは、不良と関わり合いになり、人肉を食べ、狂ってしまった。
家には戻ってこない。

そのため、老婆や両親、老犬や障害者がいる実家を、ノアルは出る事が出来なかった。
その上、実家には嫌な地主オリイがいるので、油断すれば、何億円も要求されてしまう。

気晴らしのために続けていたボートが競技になったのは、26才の頃だった。
遅すぎたと感じて、後悔して泣いた。レースを目指す事は、勇気がいる事だったが、学歴や知識が足りない自分にとって、インドのトップに立つ事は、ボートしかないと感じた。
国のトップなどの憧れの場所に、自分が出来る事で近づいてみる事が肝心だ。

始めも途中も泣くかもしれない。それでも、やってみる。

ノアルが人生について分かった事は、人生で何より辛い事は、自分より若い家族を失う事だ。
だから、ノアルは、弟がどんなに狂ってしまっても、待つことを決めた。
弟の本当の夢はパイロットだった。パイロットになる事は無理でも、ノアルがオリンピックに出て活躍すれば、いろいろな良い人と知り合いになれるし、弟を助けられる気がした。
しかし、時には、家族が狂っているという理由から、代表に選ばれない場合がある。
その時、代表に選ばれた選手は、クズになる。仕方のないことだ。
大体、強くなる者は、自分の家の名誉のために強くなるのだから。


弟が人肉を食べてしまい、狂うという絶望の中でも、ノアルはそれが逆でなくてよかったと思った。それは、両親のおかげかもしれない。

オリンピックパラリンピックには、マドンナが用意される。
それは、だいたい選手ではない。芸能人だ。

インドネシアのマドンナはジョアンナだった。
ジョアンナはスポーツが苦手だったが、スポーツ関連の動画に出演したりした。
本当は、メリーと一緒にロンドンに行って、元気いっぱいに五輪を応援したかった。
でも、ジョアンナに悲劇が訪れる。

久しぶりに、ジョアンナとメリーは実家でご飯を食べた。
ジョアンナもメリーも嬉しそうだ。
「今年のロンドン五輪の代表ウーマンはお姉ちゃんだね。」
メリーが言うと、お母さんのバルサは浮かない顔をした。
ジョアンナは気づかず、言った。
「そうかなぁ?別にそんなに意識してない。でも、北京の時は、誰が代表ウーマンだったの?」
「それは‥。」
メリーとジョアンナは、バルサを見た。
「ねー、誰だったのかな?お母さん。」
「それは、リヨウに決まっているじゃない。北京は、リヨウにとって、5回目のオリンピックだったんだから。」
「ああ、リヨウさんかぁ。最近元気にしているかな?」

ジョアンナが聞くと、バルサは泣いた。
「北京の年の10月に亡くなったらしいわ。」
「ええ、そんな‥。」


五輪に5回出場した伝説の柔道選手、リヨウの最後はあっけなかった。
リヨウの寿命は短いとみんなが感じていたので、リヨウの柔道がどんなにうまくても許された。
それでも、リヨウがそんな事で天国に行くとは思わなかった。
リヨウは、嫉妬された女子高生たちに殺されたのだ。
リヨウの稽古場に、女子高生たちが訪れた。
リヨウは1時間ほど、厳しい声を出し、大学生を前に稽古をつけた。

女子大生は真剣な目でリヨウに向き合った。
それでも、リヨウに隙を見破られた。

女子大生は汗をぬぐい、リヨウに聞いた。
「どうやったら、そんなに強くなれるんですか?」
「隙を見せない事が肝心だよ。」

その後は、練習試合が行われたので、リヨウはベンチから見た。
リヨウはよく勉強をして、物理も体の基本も頭に入っていた。
足が強く、どんなに練習をしても、足の甲は透明で綺麗だった。
リヨウは顔が均整ではない。それなので、よく好かれていた。
勝負は、相手を嫌う事ではないと思ったが、負けるとすぐに嫌いになった。
時には憎むこともある。
柔道は技の見せ合いだと、時には言う事もある。
でも、リヨウにとっては、柔道は隙を見る事だった。
また、隙を見せないことでもある。

リヨウは、今まで毒殺の話を何度も聞いていた。
それでも、毒で人が死ぬのが本当なら、自分はもう死んでいると思った。

女子高生が紛れ込んだ。柔道はやっていなそうな、チャラチャラしている。
でも、そんなにギャルではなかった。
柱の影に隠れたり、壁に隠れたりして、嫌な感じがした。

リヨウは立ち上がった。
トイレがうるさかったので、入ると、突然目の前が暗くなった。
でも、しっかりと目を開けたが、まだくらくらした。
ドアに毒が塗られていて、リヨウは毒を吸ってしまったのだ。
リヨウは吐き気がして、水道で嘔吐した。
トイレが全て閉じていたためだ。

「セコインダヨ!」
「ハゲシインダヨ!」
「くどいんだよ!」

「くどいんだよ、どんだけ、リョウコちゃん。」

声が聞こえてきた。
リヨウは流しの下に横になった。
「わああ。」
女子高生たちはトイレから出てきた。
その中にカコもいた。
「じゃあね、リョウコちゃん。」
「リョウコちゃんのこと、みんな嫌いだったからね。」

「トイレなんか、もうお前は行かれないんだからな!」

リヨウは、もう一度、目を開け、トイレに行った。
そういう事で、人に迷惑をかけたくなかった。
リヨウは、みんなの下に戻り、柔道の畳の上で倒れ込んだ。
女子高生が捕まらなかったのは、リヨウがドアの毒を拭いたからかもしれない。

カコは踊った。他の女子高生は泣いたり、嘔吐した。
それから10年後には、みんな勢ぞろいして、一緒に働くことになったのだから、不思議である。メンバーには男もいた。
身長は高いが、冴えない。身長だけでスキになるのは、間違っている。

リヨウが灰になった時、私は初めて泣いた。

Staras 宙

Staras 宙

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更新日
登録日 2019-06-29

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