宇宙船、ある乗組員の夢。
孤独、けれど私の生活は、エネルギーに満ち溢れている。宇宙船に搭載された原子炉が、この世の中のありとあらゆるものから、エネルギーをもたらすことを可能にした。
あるとき、私は負け犬だった。弱き貧困の村の出身であり、人々は私をあざわらい、搾取し、時に私に騙されることを恐れた、けれど私は騙さなかった。
またあるとき、わたしは精神力あふれる若者だった。勉強熱心であり、ありとあらゆる文明にある知識は自分の頭の中、そして懐の中に自動的にはいってきて、また入ってくるべきものなのだと考えていた。
またまたあるとき、わたしは老いを恐れた人間だった。だから自分の体を完全に機械と取り替えた。それが私の完全な敗北であり、死だった。だから私はそれを今でも受け入れられない。私が機械化したことで、永遠を受け入れられない家族たちは私のもとをさった。そのときより、私の使命は家族を守る事ではなくなった。
またあるとき、私は新しく生まれ変わって、一巡した生活をめぐり、再び名前と、学びと、新しい家族と、人々の期待とをせに、国の中枢にいて働いた。
けれど私は生涯孤独だった。
またあるとき、わたしは幼児になって、宇宙飛行士の祖母をもった。私は死の循環を二度も逃れた。スクラップになるため、工場に紛れ込んだが、そこの家族に救われて、世にまた新しい生をうけた。
そして私はあるとき宇宙飛行士になり、宇宙にたびだった。しかし宇宙船は宇宙ゴミにぶちあたり、宙で分解した。
——―くだけちった残骸とともに、私は永遠のときを遊星した。だが一番重要な、宇宙船の技術のつまったマザー基盤とコンピューター、原子炉はのがさなかった。私はあるとき、ある恒星の上にたった。そこで思い出すかつての生活が、どれも私に死をもたらすのに自然なものではなかった事に思い至り、私は孤独を後悔した。私はその星を“偽物”と名付け、そこに住む事にきめた。永遠の時を、あてもなくさまようよりかは、まるで死の間際に見るような、花畑に包まれた世界をつくりたい。
原子炉がつくりだすことができたのは、エネルギー、そして私は偽の太陽をつくり、偽の気候をつくり、偽の海をつくった。それは長い宇宙航海のうちに、後悔と懺悔にささやかれながら、少しずつそれとともに私の中にさらっていったものだった。そして私はこの星の神となった。
——―この挑戦が失敗であれ、成功であれ、私の中で決意が成り立ったかー—―
それだけをもとに、私はいきている。だからだれでもあって、誰でもない。
体系化した記憶は、いずれ何者かの生活の礎になるかもしれない、あるいは私がこの宇宙の
片隅で、誰にも発見されず、誰にも会えないとしても、それもまた、哀れな人生として
この一瞬を刻むことと同じ、それ以上の価値を持つことだろう。
宇宙船、ある乗組員の夢。