満員電車の中では、よく走馬灯を見る。
満員電車の中では、よく走馬灯を見る。
そう、俺は満員電車の中で、よく走馬灯を見る。
俺は半蔵門線で出勤し帰宅する。
あの人混みの中、エゴとエゴのぶつかり合いが起きる。しかも実際に体をぶつけ合うんだ。
なぁ、今度、オリンピックやるんだろ?
あれを正式種目にすりゃー日本は銀かパール
のメダルは確実にもらえるだろうよ。
メダルは“ぶっちょう面”のエゴイストどもに、満員電車の中で青いジャケットを着た、オリンピック委員会のやつらが、これまた
不機嫌にわたすんだ、傑作だろ?
え、判定基準?
さぁな、考えてなかった。この二杯目の茶色い水のせいで頭が回らないんだよ。
まーあれだろ、どんだけエゴイストが多いかとかどんだけの選手が、心のなかに“廃工場”
を抱えているかじゃねぇか。
そうそう、それでよ
最近俺は“あそこ”にいると走馬灯を見るんだよ。灼熱の体温の造り出した、地獄のような“あそこ”で。揺れはまるで三途の川を木船で渡るときのような気にさせる。
“あそこ”で俺は走馬灯を見る。
前はさ、昔のことが頭によぎったよ。
ガキの頃、公園でやけにはしゃいで、ジャングルジムったか?
あれから、飛び降りて骨折ったこととか、
中学時代の失恋、高校時代の失恋、
あれよ、あれよ、と過ぎ去った大学時代のこととかよ。
ああ、勿論、かみさんと結婚したこととか、
派手さのない結婚生活のこととか、かみさんが流産したこととか、まぁそう、いろいろな。
会社での出来事も見るよ、“どやされどやし”
“頭を下げ下げさせる”つまらん事の連続、
だけどよ、来ないだの走馬灯は変わってたんだよ、満員電車の中にいる俺が見えたんだ。
俺は電車の天井の電球を“ぼっと”見てたんだ。走馬灯の中で走馬灯を見ている俺を見たんだよ。
そしたらよ、走馬灯の中に女が出てきたんだ。
え?ああ、申し訳ない分かりにくいだろ、でも俺だってよくわかんないんだけどよ。
でな、その女っていうのは見たことのないぐらいの美人でさ、アジア人だったんだけども、何人かな?日本人ではない気がするな、
したら、女が言うんだ、「金メダルは貴方よ」って
よく見るとその女、青いジャケット着てたんだよ。
満員電車の中では、よく走馬灯を見る。