堕天使の裁き 3

3 フェデリコの栄誉と苦悩

イタリア行動科学課はフェデリコが立ち上げたもので主にプロファイリングを専門としている所だ。アメリカのFBI行動科学課よりもイタリアの分析官のプロファイリング力は劣るがフェデリコのプロファイリングは他の捜査官とは異なったアプローチをして事件を解決していた。彼はアメリカのFBI行動科学課に従事していたロバート・K・レスラーを尊敬しており、また研究していた。ロバートの著書は世界的にも知られており警察にも重要な参考資料になるとしてアメリカはもちろんアフリカ、イギリスで多大な影響を及ぼしている。フェデリコはロバートのような鋭く緻密なプロファイリングを駆使しておりイタリアの難事件と呼ばれていたモンテーヌ事件、アメリカのサムの息子のようにマスコミに手紙を書き警察当局を困惑させた事件に似たフェデール事件、数々の女性を誘惑し殺害したフレデリコ事件、これらはイタリアの代表的な殺人事件として挙げられ、またフェデリコによって解決された。マスコミや住民は彼を英雄と見なし「聖ゲオルギウスの再来」と称される程であった。そんな讚美を贈られたが三件の事件が解決した後、ますます捜査に没頭する
ようになっていった。イタリアだけではなくアメリカやイギリスにも協力してほしいとの要請があり、いつでもそれを応じるようになったフェデリコは次第に精神と肉体が疲労に襲われ精神科に行かざるをえなくなってしまった。精神科医により軽度の鬱病と診断され、認知行動法と催眠療法を行うべきだと薦められた。結局それが役に立ったのかは分からないがその日から悪夢を見るようになり、苦悩の日々に誘われている感じがした。しかし先日の事件を目の当たりにした瞬間、また気持ちが高まってくるのをフェデリコは感じていた。休暇で英気を養った後だからなのか、自身が備えている優れた能力を使用したいと思っているのか、それは不明だがまた一から始めようというある種の気楽さがあったのかもしれない。フェデリコはここ行動科学課で先日の事件、また数日の六件の殺害事件を調べ直してみた所、やはり共通していると見ており、犯人は同一犯であると確信した。先日のプロファイリングを書類に書きそれを持って捜査課のほうに行き、クロフォードの室を訪れたが、彼は捜査で外に出ていたので書類を机に置く事にした。後は被害者を解剖し、執刀医が診断するのを待
つだけだ。それには二、三日はかかるだろう。クロフォードの室を出たフェデリコはその後かかりつけの精神科医に会う予定になっていた。素晴らしく優秀な医師との評判もあり、本格的な催眠療法の第一人者ミルトン・H・エリクソンの派閥の医師でイタリアでは最も優れていると言われている。しかし悪夢を見るようになってから本当に治療になっているのか不安に駆られていた。その事を精神科医であるサルヴァトーレに聞こうと決めていた。フェデリコは行動科学課の捜査官に挨拶をし、近くのグラッツェカフェでコーヒーを飲んだ後、予約されてるクリニックに向かった。

堕天使の裁き 3

堕天使の裁き 3

イタリアの街フィレンツェで連続殺人事件が発生した。優れた心理分析官であり捜査官のフェデリコは卓越した頭脳で数々の事件を解決してきたが、「堕天使」と名乗る殺人犯は巧妙な完全犯罪で捜査網を回避し、フェデリコは行き詰まってしまう。所が突然、殺人犯自ら歩み寄り彼に衝撃的な事実を突きつける事になる。その事実とは…。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-19

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