暖かい暗闇
午前五時、ふと目が覚める。
寝室の空気は冬にも関わらずやけに暖かい。隣で眠る、彼のせいだろう。彼を起こさないようにゆっくりと視線を向けてみる。彼の表情は暗室に紛れて見えにくいが、どのような表情をして寝ているのかは分かっていた。
お前はいつも幸せそうな顔をして寝ているな、と心の中で呟いた。
そっと体を起こし、掛け布団と毛布を彼にかけてやり、自分は何も掛けないまま眠ることにした。そこに混ぜた少しの偽善は、部屋の暗闇が隠してくれた。
翌朝、思っていた通り喉の痛みと頭痛を感じた。彼は心配してくれた。良心は少し痛んだが、自分のために懸命にかつ丁寧に看病してくれる彼が愛おしかった。
仕事続きだった彼は休みを取り、自分にかかりきりだった。彼の暖かさに身を預けている自分と、少しの偽善を悟られないようにせめて、部屋は暗くして寝ようと思う。
暖かい暗闇