暖かい暗闇

午前五時、ふと目が覚める。

寝室の空気は冬にも関わらずやけに暖かい。隣で眠る、彼のせいだろう。彼を起こさないようにゆっくりと視線を向けてみる。彼の表情は暗室に紛れて見えにくいが、どのような表情をして寝ているのかは分かっていた。

お前はいつも幸せそうな顔をして寝ているな、と心の中で呟いた。

そっと体を起こし、掛け布団と毛布を彼にかけてやり、自分は何も掛けないまま眠ることにした。そこに混ぜた少しの偽善は、部屋の暗闇が隠してくれた。


翌朝、思っていた通り喉の痛みと頭痛を感じた。彼は心配してくれた。良心は少し痛んだが、自分のために懸命にかつ丁寧に看病してくれる彼が愛おしかった。

仕事続きだった彼は休みを取り、自分にかかりきりだった。彼の暖かさに身を預けている自分と、少しの偽善を悟られないようにせめて、部屋は暗くして寝ようと思う。

暖かい暗闇

暖かい暗闇

午前五時+暗室+偽善を題材に書きました。

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-06-23

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