多久さんの事件簿【可哀想な美女】35

Shino Nishikawa 作

多久さんの事件簿【可哀想な美女】35

倫子は綺麗だった。

多久さんの事件簿【可哀想な美女】35
倫子は、歌手になりたかった。
最初の両親が、子育てがうまくできないと、新しい両親が現れる。
私もベイビーの頃、そうだった‥。ママの事なんて、もう忘れた。
子供なんてみんなそうだが、自分の真っ黒な足を見ると、切なくなった。
この体でどうやって良い大人になれるのか。


新しい両親を本物の家族だと分からないと、酷い事になる。
苦しみが消えないからだ。家族は、不純異性交遊を繰り返す。
子供はそれを目撃する。
倫子はそういう子供だった。

高校生になった倫子はため息をつくようになり、中年男性シンのアパートに行ったりした。
シンのアパートには、大学生も暮らしていた。
「しゃあないねぇ。」
シンは言った。

倫子の家は家賃を払えず、取り立てが来た。
そのたびに、可愛い倫子が顔を出した。
妹の朋子も可愛かった。
みんなで、「ごめんなさい。」と謝った。

「知ってる?」
朋子が聞いた。

「何?」
「お父さんって、お母さんじゃない女の人と会っているんだよ。」
「へー。」
倫子は布団の中で泣いた。

倫子は高校を卒業したが、そんなものはうわべだけの物だった。
倫子は、23才の一堂と付き合うようになる。
一堂の部屋で、一堂が、大人だという事を見せるために淹れたブラックコーヒーを飲みながら、倫子は言った。
「私、モデルになりたいんだ。」
「ええ?倫ちゃんがモデル?」
「うん。」

でも、倫子はモデルではなく、歌手になることになる。
「あいつ、こんな物、持ってやがった。」
一堂は、幼馴染のユウの家から、お洒落なレコードを持ってきた。
「どれ、見せて。」
倫子が見た。
「どうしてこんな物、持ってきたの?」
倫子はドキドキして聞いた。

かっこいい一堂は、一度、俳優に誘われたのに、なれなかった。
狂っていたので、無関係のユウのアパートに殺しに入ったのだ。

倫子には、それが分からなかった。その晩も、一堂と寝た。でも、とても辛い夜だった。

一堂は、今度、照彦を狙うことにした。
一堂は、おっとりした奴しか狙わない。
弱い男だった。

一堂が、照彦のアパートに侵入すると、照彦はギターを持って、歌を書いていた。
そして、驚いて言った。
「何~!?ちゃんと鍵かってあったでしょう?!」

いろいろあって、倫子と一堂と照彦は、3ピースバンドを始める事にした。
朋子は反対した。じじいと付き合ったりして、倫子に見せたがダメだった。

メジャーデビューすると、始めの方はうまくいった。
でも、紅一点の倫子に苦情がきた。

一堂か照彦が抜けることとなった。

ひょんな事から、倫子は、歌が書ける神童と出会う。それが私である。
私は、母に歌っていた歌を聞かれ、その歌を渡すことになってしまった。
家族の安全のために、仕方のないことだ。

でも、音楽というのは、その家の事情を隠すためや守るために流れるものなので、人の音楽を盗ってはいけない。
もしも、自分がそのメロディーを引き立てることが出来そうなら、書いてみせるといいと思う。
メロディーの作者も、良い心を持って、お互いに協力し合うことだ。
でも、みんなが、自分の言葉を歌うことに快感を覚える人だっている。
それは快感ではなく、安堵でもない‥。感謝なのだ。
私はメロディーの中に、魔法を入れてある。
あとは編曲家が、その魔法を呼び起こしてくれるのを待つのみだ。

作者が好かれることも肝心だ。だから、私は恋をしない。
どんなに良い人に愛されても、答えない。
東京五輪に私がふさわしい理由は、ファンが、私の良い男から、愛してもらえることだ‥。

倫子の話に戻る。
私があげた歌は最高だった。
でも、肝心な所で話はねじれ、それは、照彦が書いたこととなってしまった。
「さよならっ‥。」
倫子は、一堂に別れを告げた。

いろんな事があって、倫子はシンに再会した。
私は、車の中から、排水路に嘔吐する倫子を見た。
母が言った。
「あれ、倫ちゃんかなぁ?」
私は言った。
「関わらない方がいいよ。」

両親は胸を痛めた。できるかぎり、女の人を、娘だと思うようにしていたのだ。

どんなわけか分からないが、倫子はシンに、尿と便がかけられた白米を出されたのだ。

倫子はパンしか食えなくなった。

倫子は、病気になり、死んだ。
代わりの両親は、お米農家だった。
そちらに行けば、幸福だったと思う。
シンや一堂には、逢えなかったと思うが‥。

倫子は人気だった。
照彦の前に、倫子2世が現れた。

会社の人とよく話して、照彦も納得したことだ。
倫子2世が、倫子よりも伸びのある声で歌った時は、安堵した。
でも、恋人が来て、頭をなでたりしたので、不快だった。


私は、倫子の事が、忘れられなかった。
このところ、毎日のように思い出していた。
倫子は、尿と便のかかった白米を食べた。

デビューしなくても、音楽を書くことが赦されたのは良い事だった。
それは、歌に意味をこめて、聴いた人にとって、価値のある物にしたからだと思う。

私は、ダメだと言われても、作品を書き続ける。

人間の価値は、死んだ時に決まるのだ。
それまでに、お金にならなくても、素晴らしい作品を残しておくことだ。
他のみんなのためになる宝物を‥。

私は、もしも自分の息子がいたら、そう教えたい。
そう言って、無料の素晴らしい作品を書かせたいと思う。

多久さんの事件簿【可哀想な美女】35

多久さんの事件簿【可哀想な美女】35

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • ミステリー
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-06-22

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