第8話−23

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 グザは面倒をみていたポスハの静止も聞かず、振り回す腕が、ポスハの頬をぶって、彼女は水中を飛ばされ、硬化された水の壁面へ激突した。

「ちょっとお父さん」

 ポスハを抱えながらミザンが叫ぶ。

 だがグザの視線の先には、銀色のキューブしかなく、息子すらもどこに力があるのかというほどの怪力で、息子を退けて、中空の銀色のキューブを掴んだ。

「休んでろって言ったろ。なんで言うこと聞けないんだよ」

 憤怒するビザンの顔は、真っ赤に染まっている。

「これはいかん。これはいかんのだ。お前にはわからんのだ」

 興奮気味に叫ぶグザ。

 それを見たビザンは父が何かを知っていることを確信した。

 ポスハ。人間の言葉でヘルパーをする女性は、こういった病人の世話にはなれた様子で、キューブを2つの抱えたグザをなだめて、研究室から出て行った。

 頭を抱えるように首を振るミザンだったが、横のビザンは何かを奥歯で噛みしめるような、顔で父から聞き出さねば、と心中で呟いた。

第8話−24へ続く

第8話−23

第8話−23

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-06-22

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