最初に生きたひと

 その星で最初に生まれて生きた人の事はあまりしらない。ただその人が、ロボットのいうことをしっかりときいて、この星で生きて、そのためにノートを記し、星の形状をととのえ、人間の群れが暮すには分相応の生態系を作り上げたことをしっている。おかげで小さな、ほんの小さなこの星でさえ、私は今日も呼吸をして、食事をして、人々と笑いあう事ができる。
 けれど私は彼やまたは彼等のことは全くしらない。その秘密は、もっとおおきな遠く方々へ散らばり今生きる過去の人々でしかしらない。私が知っているのは、この小さな星は母星の消滅間近に新しいひとつの母星としてつくられて、開拓されたのだ。そして、私の希望のこのノートを記した人の本当の目的を知ることはできない。ただノートの最後のページには、こう書いてあったのだ。
 『暗闇は怖いけれど、明るいさやさしい』
 初めにこの星を開拓した人のためにこの星の名前をしるそう。この星の名前は希望。そして彼等は星のために、偽物の太陽をつくった。

最初に生きたひと

最初に生きたひと

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-06-18

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