たかが待ち受け

昔付き合っていたY。
彼は、自分のケータイの待ち受けに私の画像を設定したがる男性だったんです。

私に頼み込んで定期的に自撮り写真を撮らせてはそれを欲しがってみたり、彼から積極的に写真を撮ってきたりと、写真の入手方法は様々。

そうしてたまった写真達を、日替わりで待ち受けに設定。
そのマメさには脱帽したものの、愛されているという感覚はなぜか得られず。
むしろ、彼がそんなことをしている様子を流し見ては、「この人、恋してる自分に酔ってんのかな」と冷めた気持ちになることすらあったりして。

可愛げのない女だと、我ながら落ち込んだりもしましたね。
当時は彼も私もまだ二十代前半。
彼氏がそんなことをしてくれたら喜びをあらわにのろけ話などしても充分許される年頃だ。むしろ健全。
現代で言うと、カップルYouTuberや、インスタ、ティックトックへの投稿などに当たる行為なのでしょうか。そういう形の愛情表現を否定する気はさらさらないし、むしろ、楽しそうにカップルの記録を残している様はとても微笑ましく、憧れすら覚えます。

私自身が冷めているだけで。

Yの話に戻りますと……。

そんな風にマメなYなのだから、慶さんに一途なのでは? そんなに愛されてるのになぜ喜ばないの? と思いましたか?
ごめんなさい。そうは問屋が卸さなかったのです!

Yは、私のいない飲みの席で、Yの親友H(男性)の彼女に、酔った勢いでキスとかしてしまうお調子者だったんです!

それを、後日私はHから聞かされ唖然としました。

それ、裏切りじゃないのかなー。と感じると同時に、深く屈辱的な気持ちになりました。この程度、浮気にもならないし笑って許す女でいてよ、と、一方的な理想を押しつけてきました。私はそこまで自分を下げて生きてるつもりはなかったので、正直怒りが爆発しました。だけど口の上では冷静に伝えました。

そういうの嫌だよ。多分またきっと同じことが起こる気がする。もう別れよう、と。
するとYは、「謝ってんだろうが!」と逆ギレしはじめまして。別れようのセリフを脅迫と受け取ったようですね。いやいや、本気で別れたかったから言ったんですけどね。何度も説明しましたが、頭に血が上って聞く耳持ってくれやしない。
なんかもう途中からめんどくさくなってしまって、とりあえずここは折れとこう。と、許したフリをしました。

Yはかつて、私と二人きりの時にこう言いました。
「Hの彼女超ぶっさいく!Hの趣味疑うわー!慶ちゃんの方が数万倍可愛い!ほんと自慢の彼女だよ!」
そういう、他者をおとしめながらこちらを褒めるというYの発言は非常に不快でしたが、私を褒めてくれているのもたしかなので、その場では苦笑いでスルーしました。

結局、その後Yにはモラハラ的な要素が多々見えてきたため、私は友達の力をかりて強引に彼と別れました。
それくらい、簡単に別れるのが難しい相手で、こじれまくって大変だったのです。

今、心から彼に言いたい。
Yよ。
君の心がいちばんぶっさいくだったよ!と。

ちなみに、Hの彼女はとてもいい子でした。
何度か、その子とH、Yと私の四人で家などで鍋をしたりゲームしたりして遊びました。彼女の自分に自信がなさそうな振る舞いに内心共感を覚えたし、なのに私なんかよりとても優しく家庭的な子で癒される瞬間がいくつかありました。
YとHを通して知り合った子なので、Yと別れて関わることはなくなりましたが、そうでなければ彼女とちゃんと友達になりたかったです。あの子のことが好きでした。向こうはどうか分かりませんが、少なくとも私は……。

待ち受けにする人イコール一途で誠実とは限らない。
と言いたかっただけなのですが、余談が長くなりました。失礼。

たかが待ち受け

たかが待ち受け

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-06-17

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted