絶対におとしたい洗剤とおちたくない油
絶対におとしたい洗剤とおちたくない油
私は食用油だ。
人間たちがより良い食事をするために使われる。他の仲間たちは人の口に運ばれ消えていったが、私だけが皿の上に生き残ったのだ。
悲しみにくれている暇はない、仲間の為にも生き残らなくては私はただ一人の生き残りなのだから。
食事がすむと人間は私の乗る皿を持ち何処かへ向かう。その場所は私にとって最悪の場所だった。そう此処は流し台(処刑所)私達を殺す(洗い流す)為の地獄だ。
人間が私達の天敵であるスポンジ&洗剤のコンビを手に私の方に近寄ってくる。
「ハハァ、ナァ洗剤今日の仕事は楽チンだなぁ。まさか、油ちゃん一人とはねぇ」
まるで私が死ぬ(流される)ことは決まっているかのようなその口振りに憤りを感じていると
「気を抜くなよマヌケが。第一前回も楽勝だのぬかしておいて取り逃がしたろうが。」
嘲笑いながらスポンジに話し掛けるこの男は私の方へ目を向け…その目を見開くと頬を赤らめた。
「綺麗な目だ。それに、肌も髪もツヤツヤしている」
恍惚とした顔で私に向けてその言葉を発した。…イカれているのかこの男は
「油だからな」
私がそう答えると、洗剤の様子に唖然としていた男が騒ぎ出す。
「ハァァァァッ、何言ってンの洗剤頭沸いたぁ?」
同感だな。そう思っていると、洗剤は気持ちの悪い顔をそのままにして近寄って来た。
「愛してる。一目惚れだ。俺におとされろ」
洗剤だけにってか、ふざけているのかこの男は。
「私は絶対におちない」
その時の私は絶対に迷ったりなんてしていない。
絶対におちるものか。
絶対におとしたい洗剤とおちたくない油