街路樹。

yuki.y 作

私が愛した人はとても繊細な人だった。

彼はいつも何かに迷ってふらふらして、何を求めているのか、何がしたいのか、自分と自分で葛藤していた。

彼の立っている後ろには、きちんと生きてきた大きな街路樹が生い茂った、美しい立派な道ができているのに、振り返れば彼の目には街路樹の影になって、ぼんやりとした道に映っていたのかもしれない。目の前には荒野が広がっていて、街路樹を植えながら道を築いてゆき、ちょっと脇道にそれてそこにお花畑があるかもなんてそれてみたりして、それでも一生懸命に進んでいた。

そんな彼をとても愛おしく思った。きっと私は彼の姿に自分の姿を重ねたのかもしれない。だったら一緒に道を築いていきたいと思った。たとえそれが二股に別れたもう一本の細い道だとしても。

二人の道は細くても小さな街路樹を植えながら築いてゆき、振り返ればそれはうっとりするくらい素敵な道に出来上がっていた。そんな小さな道でさえ彼の目には街路樹の影で、ぼんやりとした道に見えたのかな。とても悲しいな。

彼はもう一本の元の道に戻るのかな。ひとりで上手く道を築いてゆけるかな。とても怖いな。そっちの道にはハナミズキを植えながら進んでくといいかもね。春には綺麗な花が咲いて、振り返ったらきっとはっきりと道が見えるはずだから。私も自分の道にハナミズキを植えようかな。そしたらお互いのハナミズキの道が見えるかもしれないね。

細くて美しい道。夢のような道。行き止まりになった道。たまにはそっちの道を散歩してみようかな。お手入れなんてしながらね。もしかしたら彼も散歩にくるかもしれないもんね。もし偶然にでも会うことができたなら、行き止まりになった道を少しでも長く長くできたらいいな。私はそんな日をいつまでも待っている。

街路樹。

街路樹。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2019-06-13

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