逆世界
法廷にはずらりと人がつめかけていた。もう主役たちは各々の座席にわかれて座っている。立ち上がっているのは原告人だけだ。
『えー、それでは次に、人間代表の言い分をどうぞ』
『私たちは、とても不当な、それも他の種族とくらべてあまりにも残酷な仕打ちをうけてきた、インターネットの使用量の制限もまさにそうだ、そもそもあなた方は私たちが……』
宇宙服をきた最高裁判所判事が、静止に入る、法壇の真正面にたっていて、人間代表の宇宙服の中にスーツを着込んだ男性が、おどろいて言葉につまる。男性は左右には検事と弁護士が分かれ、男性は中央の証言台にたっている。
『その話は繰り返す必要はないでしょう、何度も何度も蒸し返されては、裁判が滞ります』
裁判官も、被告側の代理人もアンドロイドだ、ただし人間側の弁護人は緑色の顔をした宇宙人だった。そこでアンドロイドはぽつりという。
『自分たちの暮らしの諍いも自分たちで納められない下等な文明人たちめ』
『……ッ!!』
言い返すこともできない。そもそもがこの裁判、人間に現在与えられているさまざまな権限が妥当かということが持ち出された。人間が悪化させた地球環境を再び正しい形に戻したものもロボットだし、人間のもっていた様々な闘争心や欲望を制御する方法を教えたのはシームという我々の住む銀河系の外から長い旅路をやってきた宇宙人族だった。
結局人間側の訴えは認められなかった。人間は、自分たちが開発したロボットに知能でも技能でも力でも及ばなくなってしまった。裁判所をでた男性は、力なく、自分の支援者団体にかこまれ、法廷をあとにした。ただ裁判所で言い残した言葉を力なくはいて、屋内をあとにした。
『何ものぞんで、こうなったわけではない』
インターネットの扱い方をめぐっては、世論はほとんどが一致していた。人間はインターネットを使いすぎると、デマをつくったり、嘘をついたり、根拠のない情報でパニックを起こしたりする。これがアンドロイドと宇宙人のだした人間への制約の結論だった。
逆世界