J・G・バラードのバラード
眼も舌も鱗もないのに、なぜわたしたちは夜の嗚咽に蝕まれる血脈しかないのだろう。まだ跳躍する弾力すら知らないのに。
立体的に再現されてぶつ切りの断面で浮腫する虚。唇が始めに降伏する。図面どおりに裂かれていく顔、アーキテクト。8102ジュールの熱量で各部陳列される煉瓦影の少女。
兵士不在のコールドゲーム。液晶がないから切開された脳幹を手に包んで10周の円環を撤収する爆心地II-4591。終わりも始まりもないから眼球だけで笑うエスプリ。
痙攣する敵性語で無人を退場する彼や彼女。
コクピット一つに覆われた魂が伝達される。どんな記憶を? どんなまぬけな哀しみを? 流刑の母体が入ったDNAコマンドが排泄するビンゴゲームになにを希う?
最期になにが生き残る?
眼を、唇を、焦がれた魂だけのわたしが、順調に繰り延べされるカタストロフィに気化した涙を吹く。
J・G・バラードのバラード
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