ハジメ・ミライ
僕が俯いているあいだに
テレビは大きくて重い箱型から
今にも割れそうに高慢な薄型へ
記憶喪失がちな据置型ゲーム機は
輪を作る子供達が其々持つ携帯型へ
ゲームが犯罪者の脳を染めるのだと
嬉々として報道する像を切り替え
血飛沫と刃物が主役の映画のDVDを
黙ってデッキに喰わせた
数年前に別れた恋人から届いた
真っ白な感情を載せたメッセージ
三和音の着信メロディは
今や無かった物のような扱い
携帯電話の画面は随分大きくなり
其処からの得られる情報に
色が付くと誰が予想しただろう
けれど二十一世紀を豊かに描いた
昔の漫画家の夢は誰も叶えられず
空中を自在に飛ぶものなんて
鳥と飛行機とシャボン玉と
僕が二階から投げた花瓶くらいだ
諸行無常、盛者必衰
其れは家電量販店を見るだけで
明らかなる言葉であり
ハジメからミライへ繋がる路は
地続きで、飛び石で
如何ともしがたい僕の憂鬱は
抱えた今現在を始点と仮定して
ハジメからミライへ
ミライからオワリへ
いつか消え去るのだろうか
いつか死にゆくのだろうか
ハジメ・ミライ