黄昏の情景

草片文庫(くさびらぶんこ) 作

黄昏の情景

SF、幻想系小説です。縦書きでお読みください。

コンクリートが敷き詰められ、見渡す限りその上に建てられたコンクリートのビルディングの群である。黒っぽい太陽が弱弱しくそのビルディング群を照らし出す。
ビルディングはかなり煤けており、時代を経ていることが一目で判る。
今、一つの5階建てのビルディングの4階の一室の窓が壊され、コンクリートの紛粒が煙となって噴出している。砕け散ったコンクリートのかけらや室内にあったものが、舗道に転がっている。5階のすべての部屋の窓はすでに取り壊されており、中がむき出しになっている。
半裸に近い人々が遠巻きにして、日に焼けた顔を壊されている一室向け、何が出るか期待に目を輝かせていた。
何かが部屋から放り出されると、人々の目はそれを追い、頭上に両手を挙げて歓喜に身を捩じらせ、言葉にならない声を張り上げた。
人々の目がビルの一点に吸いつけられた。
今新たに壊された4階の部屋の窓から、黒いものが空高く放り出され、紫色の空の中に汚いしみを作り、仰ぎ見る人々の頭上にくるくると回りながら落ちていった。
それは死体だった。
人々の手がその死体の足を、手を、髪の毛をつかみ、細かく引き裂いていく。
真っ赤な太陽の光がその情景を浮かび上がらせる。
人々はその死体の一片の肉にでもありつこうと、互いにぶつかり合い、押し合いへしあい、ののしりあった。
もうもうと、コンクリートの細粉が舞い上がる中で、男が一人、死体の太ももを齧っていた。鉄線のように細く尖った指が獲物を誰にも渡すまいと肉にくいこんでいる。
次の死体が高々と放り上げられ、人々の手にゆだねられた。
象の群れの足音のような地響きが起こり、再び群集の渦が動き始めた。
死体は舗道に落ち、細かな肉片が飛び散った。
群騒ぐ人々に取り残され、離れたところでその様子をぼんやりと見ている年取った女が、熱の渦を感じながら、もういくばくも無い命の捨て場を思案している。
人々の渦の中から、目に留まらないほどの小さなものが弾き飛ばされて、老女の足元に落ちた。
老女の目がのろのろと足元を見た。
ほとんど頭骨だけのようになった顔の、垂れ下がった目の下の肉がぴくぴくと痙攣を起こし、老女の萎びた下唇がわななく。
老女の麻痺した干からびた口からほんの少し涎が流れた。震える手を落ちたものに伸ばした。骨のような指でそれをつまみあげた。目から涙が光った。
老女の手の中には赤い血がこびりついた小指があった。老女は信じられないという表情で小指を見つめ、突然、その小指を握りしめた手を頭上に掲げ、群集の中にのめりこんだ。
老女の足はもつれ、人々に突き当たり、よろめきながら、涙で汚れた顔を会う人ごとに近づけて自分の所有物を見せびらかし、目を吊り上げて奇妙な笑い声をあげた。
誰も老女を相手にしない。
老女は人々の足の間にうずくまった。死体の小指を口に入れた。しばらく舌でその感触を楽しんだ。小指は血を吸い取られ白くなっていく。老女は目の脇に皺を寄せた。嬉しい表情である。
老女は小指の爪を歯のなくなった口で剥がし、もぐもぐと噛み砕こうとした。歯のない歯茎から血が滲み出し、噴出し、老女の唇が若き日の赤い色に染めていく。
人々の関心は老女などに無い。人々の目の輝きが増すときは新しい死体が投げ上げられる時である。その死体の肉に少しでもありつこうと右へ左へと移動する。
老女は人々の走り回る足に蹴られながらも、赤い自分の血を滴らせながら、小指の肉片を噛みしめんものと口を動かした。
小指の最後の肉を剥ぎ取ると、どこを見るとも無く、飛び出した目玉をきょろきょろと人々の足の中に泳がせ、肉の無くなった小指の骨を口の中に押し込んだ。
苦しそうに口を動かすのだが、骨は砕けるわけでも溶けるわけでも無かった。
老女の目はひそかに微笑んだ。この小指の肉は彼女が生れてことのかた、初めて口にするものなのだ。
『美味しい』
老女は目を潤ませて、この言葉を頭の中に響かせる。そして、初めての静かな孤独を楽しんでいた。人々の足元に埋もれることは、石ころの陰にさえ何人もの子どもたちがたむろするこの世界では、唯一の独りになる方法なのだ。
老女は生暖かくなった小さな小指の骨をさも残念そうに口から取り出すと、日に焼けた手のひらに載せた。チョコレートのような茶色の手の上に真っ白の骨が乗った。白い湯気が立つ。それは過去を形作るように老女の顔に向かって立ち上ってくる。この小指が女のものだったのか、男のものだったのか、子供だったのか、老女は知らない。知る意味も無い。
骨が冷えてくると、老女の目の前には突如として空っぽの未来が現れてきた。しかし、一生のうちに一度たりとも肉を口にせずに死していく人々の中で、なんと自分は幸せなのだろうか。このような幸運に恵まれることなどもうありはしないだろう。老女の目はそう言っていた。老女は虚しさよりも、たった一本の小指から過去の人間が想像することも出来ないほどの幸せを感じていたのだ。
老女はコンクリートの表面に指の骨を置いてみた。冷たいコンクリートの上で、その骨はフツフツと熱を放ち、老女の心臓を温かくした。
老女はコンクリートの亀裂が眼にはいった。なぜか無性に懐かしい。コンクリートの下はなんだろう。
コンクリートの下は何だろう。
コンクリートが底深く続いているのだろうか。人々の言うには、人は死してその魂はこの割れ目から奥へ奥へと送り込まれ、魂の世界に達するということだ。
老女はうなだれてその亀裂が自分を呼ぶ声に耳を傾ける。
老女の目の前に置かれた骨をどこからか手が伸びてきてさらっていった。
子どもが一人その骨をぼりぼりと噛み砕いていた。
『土』この言葉を知っている者は地球上にはいない。コンクリートの固まりが地球、人々は生れてからそう教わる。コンクリートの地球の上にはそのコンクリートが見えなくなるほどの多くの人々が歩き回っていた。
老女は目をつむり、まぶたの裏の血管が赤く膨れていくのを感じ、静にうつぶした。
人々はそれでも足元の生命のある一つの年取った塊りに目を止めようともしなかった。老女の血管の中の赤い球の流れは緩やかになり、その場で渦巻くだけになった。
死が訪れた。
その瞬間、人々は死の匂いを敏感に感じ取った。さっきの無関心とうって変わって、老女の周りに、砂糖に集まる蟻のごとくまとわり付いた。
がっしりした手が老女の頭をはたき割った。それを期して数知れぬ手が老女のからだをまさぐった。心臓は男の手によってえぐりだされ、まだ消化しきれない小指のはいった胃袋は小さな少女の手で持ち去られていってしまった。皮膚は細かく引きちぎられた。
老女はコンクリートに染みた黒い血の跡にしかならなかった。
 ちょっとした副産物の宴会が終わると、人々はまたビルディングに向かい両手を高くかかげ、熱い視線を壊されていく部屋に注ぐ。

 ビルディングの中腹が崩された。
 部屋の中かから子供の死体が取り出され、無感動に人々の頭上高く放り上げられた。それもあっという間に群の中に吸い込まれていってしまった。
 子どもの死体の頭が一人の臨月の女にわたった。今にも割れてしまいそうな腹を抱えた女はわめきともうめきともつかない声を上げて、その場に子どもの頭を落として割った。頭の中をほじくり、起用になめとっとる。食べるのにあわててむせてしまっている臨月の女など誰一人振り向こうともしなかった。女の歯が子どもの頭骨に食い込んだ。無我夢中に食べていた女に涙が光った。女の腹が大きく振るえ、苦しそうに胸で息をはずませている。痛みが襲ってきたのだ。
 女は人々の間にしゃがみこむと、上を向いて両足を人々の足に絡ませて開いた。目が苦しそうに白くなり、のけぞったからだが大きく波打つ。
 女の顔に苦痛の波が走った。うめき声が上がった。女は両腕に力を込めた。腰が浮き、低い声が次第に甲高くなる
 強い痛みが女を襲った。
 弱弱しいおぎゃあという声が聞こえた。男の子が生れた。その声に人々は女に気付いて、女から離れた。産後を自分で処理する女の周りに小さな空間ができた。人が二人も入れるだろうか。それでもその小さな空間は今の世では子を産む女だけに許されているものであった。
 女の脇のコンクリートに転がっている赤子は両足を力強く上に持ち上げ、ばたばたと動かし、周りの人々に少しばかりの笑いをもたらした。人々に笑ってもらえるのも子を産む女だけの特権であり、その笑いは人々の儀式だった。
 女は震えるからだを肩で支え、遅くなった後産の痛みに耐えた。女はへその緒と胎盤を手に持って周りの人々に差し出した。
 女の周りの男たちがそれを受け取ると、少しずつ分けて食べた。儀式の食物を口に出来るのは偶然にも出産した女に近い男たちだけであった。
 女はそれが終わると自分の子どもを腕に抱え、乳房を赤子の口のそばに寄せた。それは儀式の終わりを示す行為だった。
 女の特権だった小さな空間はふたたび人々によって埋め尽くされた。子どもを抱いた新しい母親は人々の無関心の中に取り残された。
 
 人々の目がビルディングに注がれた。もう煙が出てこなくなった。部屋の取り壊しが終わったのだ。赤い太陽が西の彼方のビルディングの谷間に沈もうとしている。人々はざわざわとその場にたちつくし、眠ることへそなえその場に立ち尽くしている。
 薄い日を浴びて一部屋づつ取り壊されていくビルディングの残骸が無数に立ち並んでいる。人しかいない町、子供たちがほんのたまに、蟻を一匹見つけ、摘んだ指を高々と上げて群衆の中を走り回り、それに飽きると、口の中にそれを放り込む。いきた人間しかいない。
 夜が訪れた。静だ。
 人々はその場に丸くなる。あくびと共にコンクリートの上で両足を両手で抱え、頭を足の中に埋めて、静かな眠りにつく。互いに寄り添いその時ばかりはお互いに熱をとる。眠れない老人はそんな人々の間を徘徊した。今の地球では三十を越えれば老人である。
 夜は真っ暗な闇になる。月明かりがあれば人々は首をたれて暗闇を作ろうとする。星が光る時、人々は息をこらして温かみを取り合う。太陽は夜の面倒まで見てくれない。コンクリートが凍りつきそうになるほど冷える夜には、眠れない人々が、ため息をつくのも我慢して日が昇るのを待ちわびる。

ビルディングの脇から光が上がりはじめると、人々はもそもそとからだをうごかす。光が強くなってきても、なかなか人々は動こうとしない。太陽がビルの間に顔を出し、関節の氷を溶かし、まぶたと眼球の間の氷を溶かし、血管を少し広げる頃、人々は目を開ける。昔棲んでいたといわれる亀や蜥蜴のように熱を太陽からもらわないと動き回ることが出来ない。その頃、太陽は仰ぎ見るところに登っている。
それでもなかなか人々は立ち上がらない。その中の何人かが太陽を見ながらギクシャクと立ち上がった。おそらく、昨日幸運にも死体の一片に恵まれた人たちであろう。
彼らは朝の排出という儀式を忘れていない。たとえ、一片の肉を齧っただけの男も、髪の毛をつかんだだけの女も、朝は彼らの習慣と名づけられた場所に集まり、形だけも排出を行う。なぜそうするのかも良くわからない。その場でほんの少しの排出物が堆積し、干からびているその上に、茶色の小さな茸が生えていることがある。儀式を執りいった限られた人々は、地球上で唯一人間以外の生物となった茸である。地球には酸素を作る植物はいない。人々が使っている酸素は次第に消えていく運命にある。
人々はこの茸を食べたりはしない。太陽で萎びていく茸をみて、じぶんたちにその魂をもらうのだ。彼らはしおれていく茸の生気が自分たちに移ると信じているのである。
そこに、かろうじて信仰というものが残っていた。
一人の男が習慣の場でベージュ色の小さな茸を見つけた。彼はその場に座り、顔を茸に近づけ、少しでも生気を吸い取ろうと、口を開けた。ベージュ色の茸は太陽の暑さに身を震わせ、首を傾け、見る間に首をだらんと下げた。白い胞子が散った。そこを見計らって、男は思う存分息を吸い、立ち上がると踊るように人々の中へ戻っていった。習慣の場では乾いた排出物がかさかさと音を立てる。ハエがとんでくるわけでもない。

そのビルディングは一つの部屋をのぞいてすべて破壊された。瓦礫が回りに散乱し、容易に建物に近づけない。しかし、人々はコンクリートの塊を乗り越えてもビルディングに近づいた。
一つ残った一階のその部屋の窓は厚い硝子で覆われ石でたたいても容易に割れるようなものではない。余りにも長い時間が経ち、硝子の表面は煤けていて中を覗くことも難しい。しかも、遮光のため硝子は茶色であった。それでもたどり着いた男や女は、硝子に目を寄せて中を覗こうとする。ビルのどこかに部屋を破壊する道具をそろえた片付け人がいるに違いない。それは人ではなかった。ビルの中に眠る人々に死が訪れたとわかると、どこからか現れるロボットであった。ビルディングそれぞれに配置され、普段はビル内の衛生を保つ役割を持っていた。部屋に生き物の死体があると、その部屋を破壊し、その死体を外に放り出すようにプログラムされているのである。そのビルディングが作られた時に用意されたビルディングの傭兵である。
中を覗いていた人々も何も起こらないとわかるとそこから離れ、後の者たちが窓ガラスに目をつけて中を覗こうとする。硝子の具合により中が見えることがある。そこを見つけた人間はなかなかそこを動こうとしない。
もし中を見ることができたら、驚くに違いない。部屋は考えられないほど広い空間である。この人々がひしめいているコンクリートの上にはこのような空間はない。
その広い部屋の真ん中に、たった一人の女が台の上に寝ている。その不思議な光景は彼らにとって理解できない。部屋の真ん中にある特別な寝台、その上で何の夢を見るのか女は氷に包まれて静に横たわっている。
ただのぞいている男の目にその女が凍っていることなどわかる由も無く、ただ静かに寝ていると思うしかなかった。
今、窓ガラスに三人の人間が目をくっ付け、見つめている。
かち、部屋の中で半永久のタイマーの解ける音がした。その音も外のものに聞こえることはない。その音で、部屋の中の空気がガラッと変わる。時間が来たのだ。この女がもうすぐ目を覚ますのである。
女をくるむ氷は静に水滴となり、寝台に吸い取られ、寝台の床から暖かな空気が噴出し女を包み込む。
室内の温度計はマイナス300度から徐々に上昇し今4度まで上がってきた。温度の上昇はゆっくりである。女の白い乳房が少し揺れた。しかし、唇はまだ紫色のままである。痩せた腹がふっと膨らむ。心臓が緩やかに動き出したのに違いない。
女のからだの色に赤みが差すには相当の時間がかかった。唇が紫色から茶色に変わり、今、少し赤くなって来た。胸の大きな動きが外からのぞく男と女にもわかったようである。
ぴっくと手の指先が動いた。
びくびくっと、女の全身が痙攣をした。目が開いたようである。まだフォーカスが合わないが、それでも光を感じているように、眼球が動く。それをどこかで監視してたかのように、室内に明かりが灯った。強い明かりが部屋を満たす。外にいる人々にぼんやりとではあるが中の様子が見えるようになった。
寝台の上の女は首を左右に動かし、腕を少し上に持ち上げた。なかなかからだはいうことをきこうとしない。長い足を持ち上げ、たち膝の状態になった。やっと動かした足と手を自分の目で確かめている。
女は上半身を持ち上げようとしている。首をゆっくりと窓に向けた。窓から外はあまり見えない。弱弱しい光が入ってくるだけである。
まだ太陽が橙色のコロナを発して元気に輝き、熱い光を放っていた頃の女が、その時の大氣を押し包んだビルディングの一室で蘇った。
外から目を押し付けて中を覗いていた何人かの人たちは、裸の女がゆっくりと寝台の上から立ち上がるのを見た。女は音もなく起き上がり、昨日の目覚めと同じように、腰まである長く伸びた髪をかき上げた。女は寝たときには丸坊主にされていたと思い出した。長く寝ていても髪の毛だけは伸びていくようである。
女は白い乳房を揺らして床に足を突き、寝台にしがみついたかっこうで立ち上がった。一歩を踏み出そうとしているのだが、筋肉がほぐれておらず、寝台を頼りに、片足を横にずらした。
女はちょっと手を離して、背筋を伸ばした。
両足でたったことを嬉しく思ったのであろう。女の目元が綻んだ。
一歩を歩んだ。できたと思った女はほっとした様子で次の一歩を試みた。今度はスムーズに足が出た。女は壁に埋め込まれた大きな鏡の前に歩みを進めた。痩せても胸だけは大きく張った自分の白いからだを見て、少し驚いた様子で顔を触った。ほほはこけ、当時有名だった画家のムンクの書いた叫ぶ少女のように、悲惨な顔をしていた。
自動に動いてきた年号カレンダーが鏡の脇に埋め込まれている。赤い光で13000をさしている。西暦3000年に眠りに付いた女は、一万年の月日が経っていることが信じられない様子で辺りを見回した。女は寝台の脇に戻り、用意されていたローブを身にまとった。
一歩一歩ゆっくりと歩き、その動きはだんだんと自然になっていった。
 女は窓のところに来た。なにやら影のようなものが動くだけで、何も見えない。遮光のための電気を切れば透明になり、外が見える。女は窓の脇にある「遮光」と書かれているボタンを押した。
 硝子が透明になった。
 そのとたん、女はまだ赤い目を大きく裂けんばかりに見開き、すぐさま白眼になって卒倒した。女は床の上に崩れピクリとも動かなかった。
 窓ガラスに連なるいくつもの顔、血走った目が窓ガラスに張り付いていた。一万年を過ごした後に待っていたものであった。女が倒れるのを見た顔は、喜びの皺を寄せた。太陽が元気の頃に生を受けた女は、一万年後の空気を吸うことも無く、また新しい目覚めに一言も発することも無く、死んでいった。
 どこからともなく、ロボットが部屋に入ってきた。その人型をしたロボットは、右手で窓ガラスをぶち割った。余りにも近づいてみていた人々の顔が血に染まった。叫び声と共に窓から離れた人々は血を滴らせながらそこから逃げた。
 ロボットが死んだ女の片足をつかんだ。ローブが脱げ裸になった女の死体は窓から遠くに放り出された。
 人々の歓声が上がった。
 人工冬眠解除の際の注意書きが壁に張られていた。それにはこう書いてあった。解除の際は肉体的には問題が無いが、極度の精神不安定にあるため、ショック死の危険多大なり。その点よく注意すること。
 女を放り出した介護ロボットの顔はにっこり笑った女性の母の顔であった。

 目覚めの、いや、取り壊される年号を黒々と記されたビルディングの列は、寒そうにまだまだ続く。それは、人々の食糧倉庫となったのである。

黄昏の情景

黄昏の情景

ビルの一室から死体が外に放り出された。そのビルは一万年も前の人間が未来に目覚めることを夢見て眠っているところであった。

  • 小説
  • 短編
  • ホラー
  • SF
  • 青年向け
更新日
登録日 2019-06-07

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