ミーム研究家の末路・遺言
研究所の白衣に、かきあげて後ろでひとつたばねた髪たった襟を象徴する人物がいる。前世界ミーム研究所、所長のレヴィ・イヴ氏である。齢78歳、彼は先月原因不明の死をとげた。彼の功績は大きなもので、いい家系にいい大学、そして、独自の研究とミーム研究所のたちあげ。初めこそ世間に違和感のある目で見られていたものの、その功績によってミームの研究は日の眼を浴び、やがて彼を、誰もがテレビやモニター前のお茶の間で、賞賛することになった。しかし先月は、現実も、インターネットも対した反応はしなかった。あの敬愛すべき、ミーム評論家レヴィ氏の悲しい最後だった。
ミーム評論家レヴィ氏の功績をたどると、世間一般で第一に評価のやり玉に掲げられるのは、その大ヒットの著作である。ミームと現実での関係、のみならず、情報の伝達や噂の伝達、すべてを自信の世界中の小さな地域・エリアを自身の足と助手の手助けをえて情報化し、ある一定の法則をみつけだした。
「ミームは、本来ありえはしなかった結末を作る事がある、原因の因果律をたどる事さえできれば、ミームに理想的な形を作り出す事もできる、悪口や、悪い方向での互いに疑いあうような古い情報ではなく、遺伝子のように、進化の痕跡をたどる形に変えられるはずだ」
それは2010年代初頭、全世界的にデやに悪口や、悪いうわさなどがはびこっていた時期である。そこで彼は考えた、意図的にいい影響を、ローカルな地域分析からたどる事はできないか。
彼が亡くなる前まで熱心に研究していた分野がそれだった。そして次の出版の予定もあり、編集者も、出版社もそれを心待ちにしていた、20年ぶりの大ヒットは間違いなしだと思われていた。ただ彼だけが、出版にゴーサインをだしていなかった。
「ミームは、それが生み出されたときから、その人間たちの威光をくむ、だからそれが伝播する時にも、その人間たちのいい影響も悪い影響も、単に初めに生み出された通りのふるまいをするだけだ、これは世間には、強烈で、未だ受け入れられがたい事実なのだ」
それが彼の遺言である、いずれインターネットが落ち着きを取り戻したとき、彼の名がまたこのインターネットの海の中から掘り起こされることを願ってやまない。
ミーム研究家の末路・遺言