秘密の庭の番人
豚は御主人様である彼女の秘密の庭の番人だった。
その秘密の庭の茂みの奥には神秘的な泉があった。豚は彼女のその大切な泉を守っていた。侵入者が決して入って来ない様にー
茂みは定期的にカットをして生えっぱなしのジャングルにならない様に、一日に一度は必ず水を与えて潤いを絶やさぬ様に、秘密の庭は常に清潔に美しく保たれていた。
「君の秘密の庭にいつ招待してくれるのかな?」
美しい彼女の秘密の庭に招待して欲しがる男性は沢山いた。けれども聡明な彼女は男性を秘密の庭にむやみやたらに招待する事はしなかった。けれど、秘密の庭に招待しても良いと思える男性が現れる事を願っていたのも事実だった。
「私の秘密の庭には番人がいるの。番人の豚が私の秘密の庭を守ってくれているのよ」
「豚…なんだか臭そうだね」
そんな失礼な事を平気で言う様な男性は、勿論秘密の庭に招待する価値もない男性だ。
「そろそろ秘密の庭を解放しても良いんじゃないかしら?」
「お母様、そんな事を簡単に言わないで。私だってそう思うけれど、招待しても良いと思える男性が現れないんだから仕方ないじゃない」
「庭が枯れない間に現れると良いわね」
彼女の秘密の庭が枯れ果てては大変、と豚の番人は更に手入れに力を入れた。彼女の秘密の庭を美しく保つ様に、いつ解放しても良い様にー
ある時彼女は誠実な男性と巡り合った。優しくて男らしく誠実なその男性に彼女はこの人になら秘密の庭を解放しても良いと思っていた。けれど真面目なその男性は、なかなか彼女の秘密の庭に招待して欲しいと言えずにいて、彼女はついに痺れを切らした。
「私の秘密の庭に…貴方をご招待しても良いですか?」
こんな事を言えば軽い女性だと思われるかもしれないと彼女は不安だったけれど、もうこちらから招待しなければ永遠に彼女の秘密の庭に来ないのでは無いかと思える程にその男性は真面目だった。
「良いんですか?私などが貴女の様な美しい女性の秘密の庭に…」
「もちろん構いません。ただし私の秘密の庭には番人の豚がいるのですが、それでも良ろしければ」
番人の豚、と聞いてその男性は優しそうに微笑んだ。
「貴女はとても真面目な女性ですね。番人が豚だと聞いて驚いたり笑ったりする男性も多かったでしょう。その態度を見て貴女は貴女の秘密の庭に招待する価値のある男性かどうか見極めていたんですね」
「そうです。殆どの男性は番人が豚だと聞いて笑ったり馬鹿にしたりしていました。そんな失礼な男性には決して秘密の庭に招待しないと私は決めていました」
「貴女はとても素晴らしい女性ですね」
彼女とその男性は顔を近づけて優しいキスを交わした。
「僕も貴女に言わなくてはいけない事があります。僕の秘密の庭には番人の蛇がいますし、その蛇は興奮すると手がつけられません。庭は荒れ放題で手入れもしていないからジャングルの様です。それでも構いませんか?」
「もちろん構いません」
彼女とその男性はクスリと笑い合い、今度は情熱的なキスを交わした。彼女の秘密の庭は晴れて解放され、秘密の庭の奥の神秘的な泉に力強い水が注がれた。
番人の豚の役目は終わった。番人は彼女の貞操観念。あなたの秘密の庭に番人はいますかー?
秘密の庭の番人