ことことことこと

ことことことこと

   







 ことことことこと。

聴こえる電車の音に、うしなうものを見ます。そして電車は光を乗車させて連れてきてくれます。

ながい、ながい、わたしの声でした。どれだけ問いかけたことか。壁に弾かれるのはわたしの声ばかりで、そこにはいません。

それでもわたしは声を置く。忘れられませんでした。

夕闇は正確に映してくれると、ある日の夕闇に知りました。窓を開けて弾かれる声を置いてみると、ことことことこと。電車の音。撫でてくれた気がしました。

電車が乗車させて連れてきてくれる光。明日を見ました。うしなうものには連れてくる光があります。懐かしさが暖かかったのでした。

問いかけることが遠くなるごとに、光の懐かしさは優しさを増します。

 ことことことこと。

声を置くわたしは、いまでも光を連れたひとを憶えています。




  

ことことことこと

作者ツイッター https://twitter.com/2_vich

ことことことこと

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-05-28

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted