ことことことこと
ことことことこと。
聴こえる電車の音に、うしなうものを見ます。そして電車は光を乗車させて連れてきてくれます。
ながい、ながい、わたしの声でした。どれだけ問いかけたことか。壁に弾かれるのはわたしの声ばかりで、そこにはいません。
それでもわたしは声を置く。忘れられませんでした。
夕闇は正確に映してくれると、ある日の夕闇に知りました。窓を開けて弾かれる声を置いてみると、ことことことこと。電車の音。撫でてくれた気がしました。
電車が乗車させて連れてきてくれる光。明日を見ました。うしなうものには連れてくる光があります。懐かしさが暖かかったのでした。
問いかけることが遠くなるごとに、光の懐かしさは優しさを増します。
ことことことこと。
声を置くわたしは、いまでも光を連れたひとを憶えています。
ことことことこと
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