猫にコタツ

猫にコタツ


あったかい背中が好き。
寝てる彼の背に顔を寄せて頬ずりする。
膝の中も好き
私をすっぽりつつんでくれるから。

走ると転ぶよ、と彼はいう。
わたしは構わず走って彼より先に海をみた。
あとから来た彼は綺麗だねという。

私は海が好き。
おっきくて、ざぶざぶ音がする。

彼はスマートフォンでキラキラと輝く水面を一生懸命写真を撮っていた。

写真を撮ってどうするの?

こーんな広いキラキラの1部だけしかおさまらないんだよ?
わたしは言う。

彼は苦笑いをしたが撮るのをやめない。

帰ろうよと私がいう。
そうだね、潮風はあまり君にはよくないからね。
彼はいう。


帰りは仲良く腕を組む。
彼の腕に私の腕を絡ませる。
お互いの手はポッケに入れる。

ポッケが固まったらずっと組んだ腕が取れなくなるんじゃない?と、口にしようとしてやめた。

彼は最近ナイーブだから、
ずっと組んだままでいれたらいいね、いっそ君と1つの塊になりたいよ。

とか言い出すに決まってる。

残念だけど彼と1つにはなりたくない。
1人になったらさみしいじゃないかと、考えたけどブーメランのように私に刺さるからやめた。


わたしはあと余命半年。

組んだ腕が取れなければいいのに。
私が死んでもずっと彼の腕にぶら下がってられる。
いやまて、これぞまさに重荷ってやつだ。

グルグルと変な考えが頭のなかで回る。


ピコンとスマートフォンが鳴る。
メールを開けば彼からだ。

海を見つめる私の横顔の写真が送られてきた。


盗撮だよ。と私はいう。

一生忘れないと彼はいう。


胸がギューって苦しくなる。



「馬鹿だなあ~わたしなんて、永遠に忘れないんだから」




腕を離し彼より先を歩いてく。

猫にコタツ

猫にコタツ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2019-05-28

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